適切なレンズの選択はカメラの選択と同じくらい重要だ。現在多くのすぐれたレンズが発売されているが、どのようなレンズを選べばよいのかを検証してみよう。
注:ここにセレクトしたレンズは、cinema5Dで以前取り上げたり、自分の経験から抽出したもので、全ての場合に当てはまるとは限らないので、注意願いたい。
マイクロフォーサーズ(MFT)やAPS-Cで撮る場合
MFTやAPS-Cのカメラにレンズをマウントする場合の焦点距離は、フルサイズと異なるので、分かり難いかもしれない。例えば17-50mmというのは、実際には17-50mmではない。焦点距離は“クロップファクター”の掛け算で、キヤノンのAPS-Cカメラでは1.6倍だし、GH4などパナソニックのMFTカメラでは2倍となっている。従って、17-50mmのレンズというのは、35mm換算すると実際には27-80mm(APS-C)ということになる。
ワイドレンズでは、歪曲が少なく、明るく、しかも価格が安価なものというとなかなか難しいが、トキナの11-16mm F2.8はお勧めできるレンズだ。僅かにワイド端で歪曲が認められるが、ズーミングすると気にならない。F2.8というのも特筆でき、暗い場面でも優位だが、エッジで多少ソフトな印象ではある。35mm換算値は17-25mm(APS-C)、22-38mm(MFT)。
自分のキヤノン60Dで数年前から使っているのはタムロンの17-50mm F2.8だ。このレンズは全域F2.8で、60Dに同梱される18-55mm F3.5-5.6よりも高性能といえる。このレンズにはまた、バイブレーションコントロール(VC)という機能があり、ビデオ撮影時に手振れ補正ができる。35mm換算値は27-80mm(APS-C)、34-100mm(MFT)。
被写界深度の浅いレンズを探すなら、シグマの18-35mm F1.8と同50-100mm F1.8が良いだろう。明るく、広い画角はセンサーサイズが小さなカメラでも撮影の自由度を高めてくれる。これらのレンズは安くないが、同社のARTブランドレンズでもあるし、他のレンズより広角で、その価値は十分にあるだろう。この2本を持っていれば完璧で、ほとんどの状況に対応できると思う。焦点距離はそれぞれ35mm換算で28-56mm(APS-C)、36-70mm (MFT)、および80-160mm (APS-C)、100-200mm (MFT)である。
ソニーのα7SIIや他のEマウントカメラで撮るなら、ソニーの16-50mm F3.5-5.6がスタビライザーと広角の点からお勧めだ。自分もα7SIIと組み合わせて良く使うが、軽く、明るいので重宝している。
またGH4で撮るなら、パナソニックから様々なレンズが発売されており、マイクロフォーザーズの利点を生かしたコンパクトで軽い組み合わせとして使える。なかでも特にお勧めできるのが12-35mm F2.8と35-100mm F2.8の2本だ。(35mm換算値はそれぞれ24-70mm、70-200mm)どちらも光学手振れ補正(O.I.S)搭載で、MFTの小さいセンサーでも被写界深度の浅い、十分なボケ味を出してくれる。
これらのレンズは、α7SIIやFS5、あるいはLS300のように、カメラにセンサークロップ機能が付いていればAPS-Cやフルサイズカメラにも使用できるので、カメラを買い替える場合、以前使っていたレンズも使いたいなら、センサークロップ機能が付いているかチェックすると良いだろう。
Super35mmやフルサイズで撮る場合
センサーサイズが大きくなると、カメラもレンズも性能はアップするが高額になってくる。もしこれらのセンサーサイズのカメラを購入するなら、フルフレーム対応のレンズを購入することをお勧めする。価格は高価になるが、性能や使い勝手は満足できるものだ。
広角レンズでは、価格は明るさによって大きく異なってくる。例えばキヤノンのEF16-35mm F4は999ドルだが、16-35mm F2.8L IS無しでは1499ドルもする。
1000ドル以下の広角レンズを探してみると、トキナの16-28mm F2.8が手頃だろう。ただし、このレンズには手振れ補正機能は搭載されていない。しかし、価格は689ドルで、他のレンズのほぼ半額というのは魅力だ。もし手振れ補正付きが良ければ、タムロンの15-30mm F2.8もお勧めのひとつ。価格は1000ドル。
フルフレームになると、明るく、被写界深度の浅い映像が撮れる。
キヤノンの24-105mm F4は今でも多くが映像制作に使われているが、DSLRやミラーレスだけでなく、C300 Mark IIやFS5で使っている人もいる。1000ドルクラスのレンズでは、他にはシグマ24-105mm F4 Artがある。やはり同社のARTブランドのレンズで、これも魅力的だ。
広角系で撮ることが多いなら、24-70mm F2.8あたりが良いだろう。キヤノンの赤リングレンズも良いが、シグマやタムロンなどもっと安価な選択肢も多くある。自分でもタムロンの28-70mm F2.8を使っているが、気に入っており、常にカメラバッグに入っている。画質はキヤノンのレンズに勝るとも劣らないし、価格は安価だ。またMetaboneのEF-EアダプターでEマウントカメラでも使える。
レンズの選択は、何を撮るかによって異なる。イベントや野生動物、あるいは(特にアウトドアの)スポーツなどを撮る場合は、例えばキヤノンのEF70-300mm F4.5-5.6が良いだろう。ズーム域でF値が変化するが、F5.6でも映像のキレは良い。300mmというのも、ズームに余裕があって理想的と言える。このレンズには2モード手振れ補正が搭載されており、テレ端で威力を発揮する。
F値一定のズームレンズが良ければ、キヤノン、シグマ、タムロン、ソニーから様々なレンズが発売されている。テレ端付近で使用する場合が多いなら、手振れ補正機能は必須だろう。タムロンとシグマのレンズはキヤノン、ソニーよりも多少安価だが、24-70mmレンズ同様、画質は満足できるものだ。個人的にはシグマ70-200 F2.8をお勧めしたい。
ソニーα7SのようなEマウントのカメラで撮るなら、ソニーのFE PZ 28-135mm F4 G OSSがお勧めで、価格も安価になっている。ご存じの通り、価格はここで取り上げた他のレンズに比べて約2倍だが、ENG用途としては理想的なオールラウンドレンズと言える。マニュアルズームはもちろんだが、レンズ自体でサーボズームも可能で、マニュアル/オートフォーカスの切り替えが可能。Eマウントなので、アダプター無しにマウントできる。
レンタルという手もある
撮影対象が多岐にわたる場合は、レンタルするというのも一つの手だ。今やレンタル機材はどこでも豊富に用意されており、簡単に利用することができる。例えば、キヤノン24-105mm F4 IS IIなら41ドルで4日レンタルすることができる。
予算さえ許せばアンジェニューをレンタルすることも可能だ。しかし、今回は安価なレンズというテーマで書いているので、ツァイスの軽量ズーム21-100mm T2.9-3.9を紹介しておこう。これは332ドルで4日間レンタルできる。このレンズについては、当サイトでもIBC2016 の記事や実使用記事で紹介しているので参考にして欲しい。
これらはPLとEマウントだが、EFを使いたい場合は、キヤノンCN-Eコンパクトサーボ 18-80mm T4.4 L IS EFが上げられる。このレンズは映画製作にも使用できるレベルのもので、168ドルで4日間レンタルできる。もちろん、ここまで必要なければ、Lシリーズのレンズが豊富に用意されており、例えば70-200mm F2.8 IS IIなら63ドルで4日間レンタルできる。
最後に
この記事がレンズの選択にお役に立てれば幸いだ。多くのレンズから最適のものを選ぶのは大変だが、もちろんそれは何を撮るかによっても大きく異なる。もしレンズを購入する予定があるなら、まず試してみることを是非お勧めしたい。近くのカメラ店に行くのも良いし、レンタルしてしっかり試用してみるのも良いだろう。レンズのカタログを見ていると、ついついどれも良く見えてしまうが、実際に撮ってみると全く違った性格を見せるものである。最後には、自分の気に入ったレンズがベストチョイスなのである。