映画監督は観客を引き付けたり、同業者にインパクトのある印象を植え付けるため、映画撮影で、ある“トリック”を使うことがある。“ワンテイク”と呼ばれるのがその手法。しかし、それを使うのは、チャレンジングでもある。ここでは、どのようにこの“ワンテイク”を使うのか、解説してみたい。
“ワンテイク”とは、幾つかのカットをつなぐのではなく、長いワンカットで撮影する手法だ。ワンテイクが効果的に使われると、カットが切り替わらないので、聴衆はストーリーに引き込まれる。
我々の最新の映画“The Get Together”(Michael B. Allenと私が脚本、監督、製作を担当)では、ハウスパーティーのシーンで8.5分のワンテイクを使った。下の映像を参照してほしい。
短編映画は撮影技術的にもいろいろ学ぶことが多い。しかし、ワンテイクショットを撮ることは、最も価値ある試みの一つと言える。今までの経験から考えると、効果的なワンテイクを撮るためには、リハーサル段階で3つの重要なステップがあることが分かる。
Step1:主な登場人物だけでのリハーサル
今回の映画でワンテイクを使ったハウスパーティーのシーンでは、複数の部屋に多くのエキストラや共演俳優がいる状況だ。そのまま撮影に入ると、それぞれが無統制に動いてしまうので、まず、主な登場人物からリハーサルを始めることにした。
最初のリハーサルの前に、最終的にこのようにしたいというビデオを作り、これを主な登場人物に見せた。この“ビデオ脚本”は、彼らが理解する上で大変役に立った。その後、夜を徹して、ミス無しに通しでできるまでリハーサルを行った。(実際は、まだ多少粗削りだったが)
このリハーサルの様子を下に貼り付けておく。
Step2:撮影部隊に加わってもらう
登場人物が脚本を覚えたところで、撮影陣に加わってもらった。なにしろ狭い場所での撮影なので、俳優たちとカメラマンの動きがうまく折り合うまで、しばらく時間を要した。やがてそれぞれの動きが固まってくると、我々は今まで気が付かなかったフレーミングの撮り方に気が付いた。そこでアイデアが出るごとに変更し、前に進めていった。その中には窓越しのものや鏡に映った姿を撮ったものも含まれている。
キャラクターの感情をうまく表現するためには、そのキャラクターを追い続けるとよい。一人のキャラクターをクローズアップしたい場合、共演者やその他のことにシーンを振るのは適切ではない。
Step3:常に動きのある画面を作る
最後にエキストラを加えてリハーサルを行う。エキストラはシーンのつなぎとして効果的だ。ワンテイクをどこで使うかを考えるとき難しいのは、シーンの移行中に興味が途切れないようにすることだろう。シーンの動きのペースが保たれないと、観客は即座について来なくなってしまうしまうものだ。
今回の映画はパーティーで女の子を追いかける若者が主人公なので、彼とパーティーに参加している人々やその他の人々との間にいろいろな出来事が起こらないと観客が飽きてしまうと思われた。そこで我々は家の見取り図を用意して、エキストラをゾーンに分けて配置した。そして、各ブロックで前面から、あるいは後面からカメラを回した。これにより、観客の関心を常に引き付けておくことができたのだ。
ワンテイクで撮るのは簡単なことではない。全ての動きを頭に入れて撮らなければならないからだ。しかし、段階に分けてリハーサルを行い、上記のようにそれを実行すれば、素晴らしいワンテイクショットが撮れるだろう。
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