2016年が終わろうとしているが、今年のベストガジェットを特集してみたい。今年、自分のワークフローを劇的に改善してくれた5つのガジェットを紹介しよう。
ワークフローは効率化のキーだ
今日、大局からモノを見るということが難しくなりつつある。新しいカメラは毎月発表されるし、新しいソフトウエアは毎週のように出てくる。新しいものを購入しようと思ったときには、既に時代遅れになっているかのようだ。しかし、惑わされてはいけない。重要なことは常にスキルを磨くことだし、創造力を高めるためのハードウエアやソフトウエアの本質を見ることだ。
自分にとって今年は、ワークフローを改善したり、あるいは新しいワークフローを提供してくれた製品にたくさん巡り合えた年だった。自分の制作費は残念ながら限りがあるので、ここに紹介する5つのガジェットはそれほど高価なものではない。価格はこの記事の最後に表示しているので参考にして欲しい。
ブラックマジックデザイン ビデオアシスト4K ファームウエア2.3
しばらく前からモニター/レコーダーの導入を考えていた。今までは、SmallHDのDP.6モニター(SDIバージョン)を持っており、これは当時$1,300程度だったと思う。ブラックマジックデザインンから同社のビデオアシストシリーズにファームウエア2.3がリリースされた数週間後、4Kバージョンを手に入れた。自分にとってはモニターの映像にLUTをあてることができることがキーだったので、ファームウエアのアップデートが無ければ、購入の対象ではなかったのだ。しかし、これにより、自分のワークフローの状況は一変した。
確かに、ビデオアシストはモニター/レコーダーマーケットではメジャーな製品とは言えない。ご存知の通り、AtomosやConvergent Designの方がほとんどの仕様で上回っている。しかし、これらの価格はやはり高価になってしまう。自分はフリーランスとして雇われる立場が多いので、ビデオアシスト4Kは、例えば自分用の映像を収録しておくのに便利だ。また、それなりの画質で記録できるので、監督用のビューファインダーとしても使用できる。
ブラックマジックデザインのWebページはこちら。
Hedge for Mac – Fast Lane
Hedge for Macは映像素材をバックアップするためのアプリケーションだ。バージョン1.3が6月にリリースされたが、FastLaneという機能を有償($99)でリリースした。Cinema5Dの読者はこちらから10%引きで購入できる。https://www.hedgeformac.com/?ref=cinema5D
このアプリにより、転送速度は劇的に早くなり、通常の(チェックサム無しの)ファインダーでのコピー/ペーストオペレーションと同程度になった。
これはかなり大きなワークフローの改善だった。忙しいので、専用のチェックサム付きのアプリよりもファインダーでコピーすることが多かったが、Fast Lane導入で、この問題は一気に解消されたのだ。
Hedge for MacのWebサイトはこちら。
DaVinci Resolve 12.5用Tangent Rippleコントローラー
再びブラックマジックデザインの製品になるが、DaVinci Resolve のバージョン12.5だ。(無償でダウンロードできる!) 編集機能が追加されており、まだ完全ではないが、かなり使えるようになってきた。無償なので、是非試してみてはいかがだろうか。ワークフロー面から見ても、かなり使える。他のアプリに行ったり来たりする必要が無いので、最初から最後までこのアプリだけで完結する。
カラーグレーディングのワークフローで改善されたのはTangent Rippleコントローラーだ。コントローラーというにはあまりに小さいものだが、効率的にはかなり向上する。同時に数種類のコントロールが可能で、ガンマやゲインのコントロールを同時に、正確にコントトールすることができる。毎日ポイント&クリックでやっていたオペレーションが、これにより確実に早くなる。
更に、Tomasz Huczek 氏によるfalse color ver. 2.1 というOpenFXプラグインも追加したいと思っている。これについては、初期バージョンを既に紹介している。バージョン2.1はプラグインで多くの機能を追加するものだ。無償のベーシックバージョンもあるが、機能は限られている。プロバージョンは無償ではないが、たった$4.99なので、導入する価値は十分ある。かなり多くのプリセットができ、自分独自のプリセットも可能だ。このプラグインは異なったショットのマッチングやハイライトやシャドーの調整ができる。Thomas Huczek氏のサイト、timeinpixels.com.で詳細をチェックして欲しい。
ブラックマジックデザインのWebサイトはこちら。
TangentのWebサイトはこちら。
DJI OSMO X3ジンバル
これは2016年のモデルではなく、2015年10月にリリースされたものだ。しかし、この製品は、2015年の自分のワークフローに多大な影響を及ぼした。これはベストジンバルと言えるものではないのだが、最も便利なジンバルということができる。バッグに入れておけば、ジンバルで撮りたくなった時、すぐに使用できる。MōVIやDJI Roninでは、このような使い方はできないが、OSMOならいつでも取り出してすぐに撮影に移れるのだ。セットアップに時間はかからないし、操作も簡単、データレートも扱いやすい。もちろん画質は上級機には劣るので、撮影は条件の良いときにするのがコツだ。風が強かったり、低照度の環境では、使わない方が良いだろう。
最新のモデルはX5カメラが搭載されているので、当初のX3からは画質的にはずいぶん改良されている。しかし、X3で多くのカメラマンがジンバル撮影に目覚めた功績は大きい。
DJIのWebサイトはこちら。
qDSLR Dashboard、 LRTimelapse、 Adobe Lightroom CC
これはタイムラプスの撮影では究極の組み合わせと言える。これら全ては2016年に発売されたものではないが、幾つかアップデートされている。LRTimelapseのクリエーターであるGunther Wegner氏によると、qDSLR Dashboardのアップデートされたバージョンはもうすぐリリースされるようだ。(2017年初めを予定)
自分でも以前多くのタイムラプスを撮影したが、このパッケージには大いにお世話になった。
- まず、キヤノン5D Mark IIで、iPadにインストールしたqDSLR Dashboardを使って撮影する。(Wi-Fiでリモートするが、5D MK IIはWi-Fi機能を持っていないので外付けWi-Fiが必要)
- シーケンス全体をLRTimelapseにインポートしキーフレームをセットする
- Lightroom CCでキーフレームを変更する
- LRTimelapseで出来上がったシーケンスをレンダリングする
これだけだ。いわゆる“holy grail”と呼ばれる映像、即ち、昼から夜への移行やその逆の以降のタイムラプス映像は、実に簡単に作れてしまう。qDSLR Dashboardはカメラのコントロールを全て行うことができ、必要であればいつでも設定を変更することができる。LRTimelapseはワークフローに沿って、自動的にキーフレームの不自然な点をマークしてくれる。そして、Lightroom CCを使って自分好みに最後の仕上げを行う。
全体のワークフローを自分のものにするには多少慣れが必要だが、慣れれば実に素晴らしい映像が出来上がるし、タイムラプス撮影は、まるでスナップを撮るように簡単なことになる。qDSLR Dashboardは現在入手可能で価格はiOS、Android版とも$9.99。またLRTimelapseは、無償、home($100)、pro($260)の3つのバージョンがあるが、こちらに比較チャートがある。Lightroom CCはアドビPhotoshop CCにバンドルされており、毎月$10で使用できる。
各Webサイトは以下の通り。
dslrdashboard.info / lrtimelapse.com / adobe.com
おまけ:Bongo Ties
この製品も2016年発売ではないが、ワークフローの改善に貢献してくれている。小さな木の切れ端とゴムバンドなのだが、楽器のボンゴのような形をしたものが付いている。使い方は無限だ。カメラリグのケーブルをまとめたり、Vマウントバッテリーにタイムコードジェネレーターのような軽い機器を取り付けたり、いろいろ使える。使い方はあなた次第だ。
私はこのようなものをいろいろバッグに入れているが、結構使う機会はあるものだ。
Bongo TiesのWebサイトはこちら。