PanavisionのSVPであるMichael Cioni氏によるNAB 2018のLumaForge “Faster Together”でのプレゼンテーションは興味あるものだった。8Kでの撮影、編集、配信などの話と思われたが、実際は8Kは既に標準であり、まもなく11Kが準備段階だと言う内容だった。「ムーアの法則」に基いて考えると、理にかなったことではある。
第1に、プレゼンテーションのメインスライドは少し誤解を招いていたようだ。プレゼンテーションは現実的というよりは哲学的なものだったが、しかし興味深い話だった。私は iMac Proで8Kを編集するといった内容を期待していたが、そうではなく、多くは8Kに関するマーケティング的な内容だった。第2に、Michael Cioni氏は頭がよく、面白い人だが、彼はPanavisionとその8K DXLカメラを代表している立場ゆえ、どうしてもそちらに話が行ってしまう傾向にあった。いずれにしても8Kへの流れを支持している内容だった。
現在は8K、将来は11K
Cioni氏は、より高い解像度の追求は、決して止められるものではないと言っている。
「我々がこの技術を望んだのではなく、それは進化の一部に過ぎないのです。」
彼の仮説は、情報技術における指数関数的な成長を意味するムーアの法則に基づいている。SDからHD、フルHD(1080p)、そして4Kへと移行してきたが、これらの移行は、ニーズによって開発されたものではなく、決して止めることのできない、決して止まらない技術の自然進化によって開発されてきたもので、初めは半信半疑であったのに、今ではすっかりそれに慣れてしまっているうえ、より高い解像度に期待するようになっている。
別の例で言えば、SDの時代では、1GBのメモリは20ドル近くしたのに、2018年にはわずか0.04ドルになってしまっている。記録メディアの容量も、処理技術や機能と同じだ。Cioni氏によれば、8Kは出発点に過ぎないとのこと。彼は数年後には8Kが、以前のSDのようになっていると考えている。
さらに、Cioni氏によれば、8Kのインフラを構築するためには11Kのカメラが必要であり、それが今後の方向性とのことだ。
人間の目が基準ではない
Coini氏は、人間の目は適切な距離でテレビを見る場合、解像度的にはフルHDが上限だとする論理は真実ではなく、関連性がないと主張している。彼は、8Kはより鮮明な画像というよりは、下のスクリーンショットで示されているように、他の利点について言及している。 Cioni氏は、人間の目が基準ではないと考えており、高解像度への移行は技術の自然な流れと考えている。
今日の8Kは既存の技術
Coini氏は、2015年の技術を2018年のそれと比較している。現在、8Kでの撮影は、Panavisionの8Kデジタルシネマカメラシステム「DXL」やRED Monstrosカメラで実現されている。 シャープのAquosなどの8Kテレビで観たり、3年前には存在しなかったThunderbolt 3で配信したり、 iMac Pro 上のResolveやFCPXなどのNLEで編集したりできる。これらはすべて、今日、誰もが購入し使用できる既存の技術だ。それらはまだまだ高価だが、現実に入手できるのだ。しかし、ムーアの法則では、これらの技術は急速に価格下落するとも定義している。
プレゼンテーションはこちらで観ることができる。
彼の理論に納得できるか?
一見すると、Cioni氏は正しい。私も状況は8Kに向かっていると信じている。しかし、今後2~3年間は、解像度は映画用カメラに関して最も重要なものではないだろう。確かにREDやPanavisionはその方向に向かっているが、ARRIはどうだろうか?
従来のARRI ALEXAカメラでは、16:9のARRI RAW(2.8K)で撮影し、ポストプロダクションで4Kにアップサンプリングしている。この方法は、IMAXを含め、多くの長編映画で成功している。これは、センサーから得られた画像が非常に優れているため、後処理で積極的に加工できるからだ。解像度がすべてではない。2018年にアカデミー賞にノミネートされたカメラのリストを見ると、そのことが理解できるだろう。 なお、ARRIのカメラは現在4.5Kに移行中だが、それらは主にプロダクションで使用されている。
このことは、2.8K のALEXAカメラが8K のREDカメラに等しいということかというと、恐らくそうではないだろう。しかし、何が最も重要なのかを、しっかり理解しておく必要がある。新技術が常に映画をより良くするということではないのだ。
ただし、このプレゼンテーションで語られた、新しい iMac Proと組み合わせたFinal Cut Pro Xで8Kを編集する件に関しては興味深いものがあった。