Blackmagic Pocket Cinema Camera(BMPCC)は、素晴らしいコストパフォーマンスを備えている。しかし、本格的に使用するにはリグが必要だ。この記事は筆者の使用をもとにレポートした。
この記事は2部構成となっている。まず、BMPCC6Kのリグについて、関連するパーツを紹介する。続いて、以前の大きなカメラから、この小さなカメラに移行する背景を説明している。
PART 1 -小型軽量
ブラックマジックデザインがBMPCC4Kと6Kの開発にあたり、スチルカメラのようなボディデザインにした理由はわからない。DSRLやミラーレスカメラのユーザーはそのような形状に慣れていると思ったのかもしれない。あるいは、コスト的なものかもしれない。
しかし理由はどうあれ、この形状はすぐにカメラを撮影に使うことは難しい。モニターが非常に暗く、固定されているため、非常に使いづらい。また消費電力が大きく、多くのバッテリーが必要になる。内蔵のNDフィルターも無いので、ねじ式のフィルターの必要になる。
ただし筆者の使用法では、ストリーミング以外の目的でBMPCC6Kを使用しなかったので、これらの懸念はあまり関係なかった。三脚に取り付け、モニターとして smallHD FOCUS 5を使用し、SIGMA18-35を使用した。
筆者は、ATEM Mini Proと組み合わせて、どのようなことができるかを確認した。
控えめに言っても、画質には感動しなかった。 Blackmagic RAWはある意味で真のRAW形式ではないが、非常にハードなグレーディングが可能で、ProResやXAVCよりもはるかに堅牢なコーデックであることは誰もが知っている。肌のトーンが美しくレンダリングされ、ダイナミックレンジも広い。
使えるようにする
筆者は、C300MkIIIを購入する予定だったので、それまでのつなぎとしてBMPCC6Kをきるだけ安価に使うことを考えていた。
BMPCCのリグを考えていると、以前キヤノン7Dをビデオカメラとして使うためベースプレート、ハンドル、ロッドなどを追加したときのことを思い出した。当時、手頃なリグを販売しているメーカーがなかったため、多額な費用がかかった。
今日では、Shape、Tilta、Wooden Camera、SmallRigなどの高品質のアクセサリーを製造しているサードパーティメーカーが多く存在する。
筆者はSmallRigのアクセサリーを持っていたので、これを流用することにした。コストパフォーマンスの優れた製品だ。
いくつかのアイテムを注文し、それらを試してみて、期待どおりに機能しない場合は別のものを注文した。 3か月ほどを要したが、BMPCC6Kのリグアップは満足いく結果となった。
カメラについて
BMPCC6Kの詳細については多くの記事があるので、ここでは説明しない。なお、カメラを購入すると、DaVinci Resolve Studioライセンスも付いてくるため、これは結構お得な買い物だ。
Blackmagic RAWコーデック(BRAW)を使用するには、少なくともResolveを使用する必要がある。
ケージを付ける
BMPCC6Kにアクセサリーを取り付けるには、ケージが最適だ。 ジンバルで使用することを考え、軽量なSmallRigのハーフケージをを考えたが、最終的には安定性の理由からフルケージにした。
BMPCC6KのHDMIやUSB-Cポートを保護するため、SmallRigケーブルクランプを入手した。 ケージにネジで固定し、ケーブルを横方向に留める。これは特にカメラをバッグに入れた場合、ソケットでプラグが曲がるのを防ぐことができる。
ハンドルを取り付ける
ハンドルは、SmallRigのトップハンドルを使用した。またSmallRig(№1993)ユニバーサルショットガンマイクマウントを取り付けるため、15mmロッド(№1049)を横方向に取り付けるための15mmロッドクランプを使用した。マウントはコンパクトで、ゴム製の基本的な遮音のみを備えているが、他のカメラに組み込まれているマイクマウントよりもうまく機能する。
短いロッドは、ロッドキャップのセット(№1617)の両端にスレッドを備えている。これらのロッドキャップにより、マイクマウントがカメラから落ちることはない。
ロッドサポート
BMPCC6Kリグの下に15mmロッドを追加する方法はいろいろある。筆者はスピードブースターを持っていないので、シンプルながら用途の広いSmallRig(№1798)キットを入手した。これは基本的に2つのチーズプレートを2つの15mmロッドクランプで固定したものだ。
素早いロック
Kessler KWIKマウントシステムを使用して、リグを三脚にマウントする。 Arca Swissと互換性があり、様々なもの(Slider、PXW-FS7、 FUJIFILM X-T4、Ronin-S…)を三脚やKWIK搭載サポートに簡単に取り付けることができる。
これは、KWIKレシーバーを大量に購入して、サポート機器に1つずつ搭載する場合にのみ意味がある。もちろん、クイックマウントシステムは使用せず、ベースプレートの真下に三脚プレートを固定することもできる。
多少軽量化できると思い、45cmのカーボンファイバー15mmロッドを1組入手した。レンズに応じて、短いロッドを選ぶことができる。なお、かなり長いズームレンズも考慮する必要があったが、これについては後述する。
記録メディア
BMPCC6K(および4K)は、安価なUSB-CSSDに直接記録できる。筆者はすでにSamsungT3とT5SSDを多数所有していたので、当面は高価なCFastカードに投資しないことにした。 T3とT5を取り付けるために、SmallRigは専用のマウントを用意している。 (なお、新しいT7 SSDはこのマウントを使用できないので注意)。
これまでのところ、これらのSSDは問題なく動作している。
Viewfinder
おそらく、BMPCC6Kと4Kの最大の欠点は、内蔵モニターが固定されていることだろう。バリアングルにするためのサードパーティのソリューションがあるが、筆者は外部モニターを使用する予定だ。幸い、使用しなくなったsmallHD FOCUS5インチモニターがあるのでこれを使用する。
ケージの左側にnatoレールがあり、スライドするEVFマウントブラケットが用意されている。最初にSmallHD5”をEVFマウントに直接マウントしようとしたが、下部に1/4”のネジ穴が1つしかないため、モニターが簡単に回転してしまう。そのため、SmallHD Focus用のSmallRigケージ(№2249)を入手した。これでモニターが保護され、EVFマウントがねじれることはなくなった。
Kinotehnikファインダー
太陽光下で見やすくするために、BMPCC6K / 4K用のKinotehnikファインダーを注文した。これは基本的に、磁気で固定されるフレームでBMPCC6Kリグに取り付けるルーペだ。このソリューションの優れている点は、2つのスティッキーフレームが付属しており、サイズがBMPCC6K / 4KとSmallHDフォーカスモニターの両方に適合すること。したがって、Kinothehnikビューファインダーをカメラに直接取り付けることもできる。
ただし、これには2つの欠点がある。1つは、磁石アタッチメントの磁力が十分でないこと。 撮影時は問題ないが、移動時にカメラをぶつけると、EVFルーペが脱落する場合がある。 2つ目の欠点は、EVFルーペに視度調整がないこと。 幸いなことに、Kinotehnikにはジオプター(+ 1、+ 2、+ 4)がある。
レンズ
筆者はすでにEFプライムレンズのセットを所有している。これはC300で何年も使用し、後にMetabonesアダプターを介してFS7で使用したものだ。これらは素晴らしいレンズだが、プライムは常に実用的であるとは限らない。 FS7で使用したソニーの18-105mmレンズもあるが、これはEFに適合できないため、手頃な価格で機能的なEFズームを購入することを考えた。普段使いには16mmから100mmくらいの範囲が使いやすい。
そこで浮上したのが、シグマ18-35mmf1.8と50-100mm f1.8Artレンズだった。どちらも優れた画質で、必要なすべての焦点距離をカバーする。 35mmと50mmの間のギャップは筆者にとって問題なく、どちらもf1.8固定で、どのような状況でも浅い被写界深度が得られる。どちらのレンズもシャープで、f1.8の開放で使用できる。ただしこれらのレンズにはいくつかの問題がある。最悪なのは50-100mmのフォーカスブリーズだが、まずは使ってみることにした。
NDフィルター
更に、レンズごとにGobeネジ式NDフィルターのセットを購入した。 シグマのレンズは、フィルター径が共通ではない(18-35は77mm、50-100は82mm)。ただしそれは必ずしも悪いことではない。レンズ交換する場合、NDをレンズに付けたままにできるからだ。また、可変NDを使用することもできるが、これは実際には偏光フィルターで、肌や空に望まない効果を付けてしまう可能性があるため、可変NDは普段使わない。
EFレンズマウントは非常に堅牢というわけではない。 50-100mmのような長くて重いレンズをマウントしフォローフォーカスを使用すると、マウント内のレンズがわずかに曲がる。わずかだが、目立つ画像シフトが発生する。これを回避するため、SmallRig(No。2152)ユニバーサルレンズサポートを使用した。 SmallRig は50-100mmの三脚サポートに直接ねじ込んで使える別のレンズサポートを出しているが、18-35mmでは使用できない。 しかし2152は両方のレンズで正常に使え、画像シフトを減衰できる。
フォローフォーカス
手持ちのShoot35Follow Focusを使用できるようにするため、シグマ18-35mmと50-100mmのゴムリング上に取り付ける2つのシームレスな.8ピッチフォーカスギアを注文した。これはまだ届いていないので、写真では代用のシンプルなラバーフォーカスギアを使っている。
電源
BMPCC6KとSmallHDフォーカスモニターに電力を供給するために、新しいSmallRig(№3059)Vマウントバッテリープレートを購入した。ワイヤレスオーディオレシーバー、オンカメラライト、ワイヤレスビデオトランスミッターにも電力を供給するための出力(2x 12Vバレル、1x 8Vバレル、1x D-Tap、1x USB-A)もある。
筆者はすでにVロックバッテリーを所有しているが、このリグ用にSWITPB-S98Sを追加購入した。このバッテリーは、消費電力に基づいて残りの実行時間を表示するLCDディスプレイを備えている。BMPCC6K / 4KはRemoポートから電力を供給された場合バッテリーの残り時間を表示しないため、非常に便利だ。
1個のSWITPB-S98Sで、満充電すると6時間以上稼働できる。
VマウントバッテリーからSmallHDモニターにも電源を供給するため、Amazonからダミーバッテリーを入手した。
オーディオ
BMPCC6KはミニXLR入力を備えており、コンデンサーマイクにファンタム電源を供給することができるため、ミニXLRオスプラグ、ケーブル、XLRメスプラグを入手し、独自のケーブルを自作した。これでオンボードスクラッチマイクとして機能するOktava MK-12を接続する。小規模なインタビューの撮影では、ブームマイクにはXLR入力を使用し、ラジオマイクにはBMPCC6KのTRS入力を使用する。
3つ以上のマイクからの音声を収録する必要がある場合は、通常、サウンド担当者がミックス音声をスクラッチトラックとしてBMPCC6Kにフィードし、別々に録音されたオーディオトラックをポストで同期する。
BMPCC6Kのリミッターとローカットフィルターが欲しいが、それ以外では音質は十分良好だ。
ケーブルの管理
実際に使用する場合は、バッテリープレートからカメラとビューファインダーへの給電、HDMIからビューファインダーへの給電、カメラからマイクへのオーディオケーブル、USB-CからSSDへのケーブルなど、多くのケーブルが飛び交う。
ケーブルをできるだけきれいにするため、Sprigケーブルオーガナイザーのセットを使用した。
Sprigは小さなループクランプで、1/4インチのネジでどこにでも取り付けることができる。安価で小さなプラスチック製のものだ。もちろんケーブルタイやベルクロタイでも同じことができるが、小Sprig見栄えがよく、ベルクロタイよりも速くケーブルを交換できることを考えると、少し高価だがこちらの方が良い。
持ち運び
持ち運びにカメラリグを分解するのは面倒なので、カメラシステムを1つのバッグに入れることにした。これには、大きなTenba Cineluxビデオショルダーバッグ24を入手した。
このバッグはシグマ50-100mmレンズを取り付けた状態でカメラを入れるのに十分な大きさだ。フォローフォーカスとハンドグリップを取り外すだけで、すべてのアクセサリーや予備のバッテリー、18-35mmレンズ、デュアルVマウントチャージャーも収納できる。なお、このバッグにはホイールがないが背面にストラップが付いており、折りたたみキャリーカートに乗せて運ぶことができる。
まとめ
この記事を書くため、リグに要した費用を書き出した。ただしすでに持っている機材もあったので、これは推測で記入している。
なお、すでにレンズやバッテリーを持っている場合は、5,000ユーロ未満で済むだろう。6KRAWをかなりプロフェッショナルに撮影できることを考えると、これは凄いことだ。
筆者はいくつかの仕事でこのシステムを使用したが、これまでのところ信頼できる。
コネクタが壊れたときのために、予備のケーブルを2本バッグに入れている。万一の場合の予防は必要だ。
最近のカメラのシステムアップは、10年前よりもはるかに優れたものになっているが、筆者のBMPCC6Kシステムはまだ問題が残っている。
幾つかの問題点
NDフィルターが内蔵されていないため、NDフィルターの着脱が面倒だ。アシスタントが付くプロジェクトでは、4×4のマットボックスを使用できるが、一人で撮影する場合はやはり面倒だ。
このようにシステム化すると、BMPCC6Kはもはやポケットカメラではない。特にシグマ50-100mmレンズをマウントしている場合、これは大きなカメラシステムだ。筆者は重いカメラリグに慣れているが、このカメラシステムを持って山に登るつもりはないので、問題は無い。
なお最大の不満点は、BMPCC6Kに2番目のビデオ出力がないことだ。 SmallHDモニターはHDMI出力のみを使用する。
BMPCC6K Pro
これは印象的なアップデートで、従来のBMPCC6Kの欠点を改善している。しかし現在のリグがそのまま使えそうにはない。
近い将来BMPCC6KPROに買い替える場合、交換する必要があるのはカメラケージだけだ。他のアクセサリーは引き続き使用できるだろう。
今後の計画
写真に写っているハンドグリップは、10年ほど前の古いVocasグリップだ。役に立ったが、今後は折りたたみができるものが欲しい。ショルダーパッドはSmallRigだが、これもすでに販売されていない。ハンドヘルドでの操作性を最適化するには、もう少し考える必要がありそうだ。
近い将来、シネレンズをレンタルできるように、PLマウントアダプターを入手することも考えている。
ほとんどの仕事では、カメラの画像をクライアントモニターに送る必要がある。 カメラに複数のビデオ出力が無い問題を解決するため、HDMIループスルーを持つHollyland MARS 300PROワイヤレスビデオシステムを購入することを考えている。
最後に
記事が長くなり、また広告のようになったところもあるが、この記事は依頼されて書いたものではなく、すべて自分で購入した機材に基づいて書いている。
多くの時間を費やしたが、読者の皆さんの参考になれば幸いだ。
PART 2 – その昔
This is part 2 of this article and we’ve made it through my entire BMPCC6K パート2では、BMPCC6Kの購入を決定した経緯を説明したい。
1990年代後半に仕事を始めたときは、35mmフィルムで撮影していた。そ予算がない場合は、2/3インチCCDやCMOSカメラで撮影した。
通常の2/3インチカムコーダーで特別なアダプターを使用すると、デジタルベータカムやHDCAMで「フィルムルック」な映像にすることができた。ただし控えめに言っても、カメラシステムは大きくなり、面倒だった。
DSLR革命
その後、キヤノン5Dが登場し、すべてが変わった。CineD(以前のcinema5D)もこのころに始まった。
そして筆者もこのカメラでしばらく撮影した。
当時、DSLRでの撮影が増え、オーストリアの大手電気通信会社のコマーシャルを35mmフィルムではなく5Dで撮影した。
スタジオでDSLRを使用して撮影することは、特に機動性を求められる撮影では、従来とは比べ物にならないくらい簡単だった。ドキュメンタリーの撮影では、レンズ交換、NDの設定、ディレクターモニターへのフィード、デュアルシステムオーディオなどは簡単になった。
更に、5Dのセンサーのルックは2/3インチセンサーカメラと比較して「映画的」だった。ただし操作性は問題が多かった。
筆者は、DSLRやミラーレスカメラでビデオを撮影することにあまり乗り気ではない。サブカメラとしてジンバルなどで使うのは問題ないが、これをメインカメラにするのは面倒だ。ただし、小さく、用途が広く、軽いので旅行やビデオブログなどには最適だろう。筆者も仕事では、いつでもミラーレスを持っていく。
Super 35mmセンサーカムコーダー
その後、Super35mmカメラが発売されたが、筆者は即座にDSLRから「本物のカメラ」、つまりキヤノンC300にアップグレードした。これは感激できる移行になった。
C300は、コマーシャル、プロモーション、イメージフィルム、さらには長編映画にも使用した。
ところが2015年に発売された、C300 Mark IIのコストパフォーマンスがいまひとつだったため、ソニーのPXW-FS7を購入。約5000ユーロの価格差ではあったが、決め手はC300 MarkIIが4K/50pっで撮影できないことだった。当時、クライアントはスローモーションと4Kを求め始めていたのだ。
ソニーPXW-FS7は素晴らしいカメラだった。世界中で撮影したが、がっかりしたことは一度もない。筆者はまだ様々な仕事で使っている。
アップグレードの時期
FS7のSuper35mm Exmorセンサーは、同社のPMW-F5およびPMW-F55用に開発されたものだ。これらは2012年に導入されたもので、画質は最新のカメラに比べると、多少甘いと言わざるを得ない。
FS7のコーデックも最新のものではない。 XAVCで記録するFS7が発売された2014年では素晴らしいコーデックだった。ただし、ProRes RAW、Blackmagic RAW、Canon RAWが出てきた現在では、そうではなくなっている。
PXW-FS7でハイエンドの撮影やクロマキーでの撮影を行う場合はいつも、XDCA-FS7ユニットをレンタルしてFS7からRAWを出力し、外部記録した。しかし、XAVCのかなり強い圧縮とセンサーの柔らかさで、ディテールのキーイングは満足できるものではなかった。ただしほとんどがHD配信だったため、ダウンスケーリングするとこれらの問題は見えなくなった。しかしその後、4Kの仕事が増えているため、そろそろ更新時期と考えている。
新しいカメラの選択
2019年半ば、PXW-FS7の買い替えを検討し始めた。
ソニーPXW-FX9は筆者にとってはがっかりするものだった。新しいセンサーは素晴らしく、オートフォーカスも素晴らしいのだが、内部コーデックはFS7と同じで比較的弱いXAVC-Iで、拡張ユニット(XDCA-FX9)が必要になる。FX9からRAWを出力し、ProResで外部記録する。
筆者はC300Mark IIで感じたのと同じ感覚を覚えた。FX9は、上位のカメラを保護するために故意に機能を落としたのではないかという疑念だ。
FX9発表の直後、キヤノンはFX9よりもはるかに興味深いC500Mark IIを発表したが、高価で予算に合わなかった。
良いカメラを手に入れたいが、経済的な側面も考慮に入れる必要がある。2〜3年でカメラの投資を回収し、その後1〜2年で利益になる。それ以上かかる場合は、そのカメラを購入することにあまり意味はない。
C500 Mark IIでは、損益分岐点までさらに1、2年かかる。その時までに、カメラはほとんど時代遅れになっているだろう。
なお、C500 MkIIの本体は「たった」約15,000ユーロだが、撮影できる状態にするには、ファインダー、ベースプレート、ケージ、バッテリー、その他のアクセサリーに25Kユーロが必要だ。キヤノンのビューファインダーだけでも約3500ユーロもする。
カメラのコスト応じて撮影費用を上げる必要があるが、ほとんどのクライアントは、カメラが高価になってもそのメリットがないため、多く支払ってくれることは無い。撮影する側にとっては、15,000ユーロから18,000ユーロ程度のカメラパッケージが、過去10年ほどの経験でスイートスポットであることが分かっている。そのためより高品質のカメラが必要な場合は、レンタルを使用する。
フルフレームの考察
C500 Mark IIとFX9はどちらも、いわゆる「フルフレーム」カメラだ。筆者が所有しているレンズの中には、カメラのクロップを使用しないとケラレが出てしまう。従って、「フルサイズ」はあまり魅力的ではない。
歴史上のほとんどの映画は、垂直に走る35mmフィルムで撮影された。 35mmは筆者が技術を学んだ方法であり、今でもそれが基本になっている。映画におけるスーパー35mmは「フルフレーム」より35mmフィルムに近い映像が撮れる。
カメラメーカーが「フルフレーム」カメラについて話すとき、35mmフィルムが水平方向に走る写真用35mmカメラのフィルムサイズについて話す。 なおVista Visionは知っているが、その技術はせいぜいニッチなものだ。
5D Mark IIでビデオを撮影し始めたとき、「フルフレームルック」についての神話が語られたが、正直なところ、Super35mmセンサーに勝る利点は分からなかった。
フルフレームについての意見
この章では「フルフレーム」について少し説明するが、「フルフレーム」に詳しい方は読み飛ばしていただきたい。
「クロップファクター」の問題全体は、Super35を写真の「フルフレーム」と比較する人々から始まった。
撮影監督は、16mmレンズや35mmレンズがどのように「見える」かを知っており、それを比較するために頭の中でクロップファクターを計算する。
スティーブ・イェドリンは「最後のジェダイ」や「ナイブズアウト」などの映画のDPだが、この問題について同様の見解を持っている。(彼のブログはこちら)
その要点は次のとおり。「フルフレーム」デジタルシネマカメラを使用すると、Super35よりも広い視野(FoV)が得られる(約1.5倍)。逆に、「フルフレーム」で少し長いレンズを使用すると、スーパー35mmカメラと比較して同じFoVを得ることができる。これにより、被写界深度が少し浅くなるが、それだけだ。
魔法は無い
ここで覚えておくべき重要なことは、24mmレンズは、MFT、Super35、または「フルフレーム」カメラに付けても、同じ24mmレンズのままであるということだ。センサーに投影される範囲は少なくなるが、その光学特性(歪み、光学圧縮など)は同じままだ。
言い換えれば、スーパー35mmカメラで16mmレンズを使用した場合、「フルフレーム」センサーで「同等の」24mmを使用した場合と同じFoVが得られるが、同じ「感触」は得られない。
従ってSuper35から「フルフレーム」への移行は、2/3インチセンサーからSuper35に移行したときの成功をもう一度と狙うカメラメーカーのマーケティングツールと思う。レンズをもう1ストップ開けられるだけだ。
65mmの映画フィルムのような真の「大判」シネマトグラフィは、まったく別物であり、画像のルックと感触はまったく異なる。
補足:現在「フルフレーム」として販売されているネガサイズは、ドイツ語で「クラインビルド」と呼ばれ、「小さな絵」とという意味だ。
2020年のカメラ
2020年初めには、FS7から乗り換えるのに最適だと感じたカメラはまだ無かった。何度か使ったブラックマジックデザインのUrsa MiniProは気に入ったカメラではある。ルックも画質も気に入ったが、重すぎた。同社には今後に期待したい。
そしてコロナ禍で、NABをはじめすべてが止まってしまった。
この混乱の中で、キヤノンはC300MkIIIを発表した。それは筆者にとって完璧なカメラのように見えた。ただし、経済が再び回復するまで購入を延期することに決めた。
2020年は映像業界が大きく変化した。筆者はライブストリーミングを始め、ブラックマジックデザインのAtem Mini ProISOライブストリーミングミキサーを購入した。そしてBMPCCをレンタルし、最終的にBMPCC6Kを購入して、仕事用に少なくとも1台のカメラを手元に用意した。非常に多くのストリーミング需要があり、いつものレンタルハウスでは、ほぼ常にBMPCCが出払っていたからだ。