NDフィルターは昔から存在しているが、次世代カメラの未来を担うツールになるかもしれない。
先日、強烈な真夏の太陽の下で、自分の住む地域にある何十もの美しい壁画をパンニング撮影した。それはとても楽しいことだったが、同時に2つの不便さを思い知らされた。1つは、私のLUMIX S1Hはフルフレームモードでは深刻なローリングシャッター特性を持っているということ、もう1つは、直射日光の下ではNDフィルターを使わずにクリッピングを避けるのは本当に難しいということだ。
私が180度ルールを頑なに守っていたこともあるが、少し速めのシャッターを切り、レンズをF22に設定し、ISO感度を下げると、反射率が高く、太陽の光が強く当たっている壁では、クリッピングをかろうじて避けることができた。可変NDフィルターを使用することもできるが、広角ズームにはフィルターのねじが刻まれていない。
センサーの性能が飛躍的に向上している現在、カメラの差別化は、使いやすさや汎用性の高い機能に集約されていくと思う。そう考えると、ミラーレスカメラ、特に動画に特化したミラーレスカメラの次のトレンドは、一体型NDではないだろうか。
次世代カメラの機能
カメラ業界は、次の進化に迷っているようだ。解像度、ビット深度、フレームレート、読み出し速度、圧縮レベルなど、すべての要素が限界に近づいている。特に映画では、いまだに24p撮影が主流であることから、ダイナミックレンジという数字だけが注目を集めているが、半段分のラチチュードが増えたところで、果たして何台のカメラが売れるのだろうか？
一方で、カメラはその技術力に関わらず、厄介で扱いにくいものでもある。S1Hは、比較的小型のミラーレスボディに6K撮影機能を搭載しているが、NDフィルターを搭載していないため、高価で大型のシネマカメラに搭載されている基本的な機能の一部が欠けている。それは、NDフィルターが内蔵されていると、どうしても高価なボディになってしまうからだ。願わくば、数値を上げることが難しくなることで、NDのような数値化されない機能に光が当たってほしいと思う。
ソニーはFX9およびFX6ですでにこの分野に参入しており、高度な連続可変NDシステムと、複雑な屋内外のトラッキング撮影を容易にする露出自動化システムを提供している。キヤノンはC70で物理的なNDフィルターホイールを導入したが、これらのカメラは、市場で最も手頃なND内蔵カメラを代表するものだ。Kinefinety社はEdge 8KカメラでeNDを市場に投入しているが、価格は高くなる。しかし、最も低価格のBMPCC6K Proは、物理的なNDフィルターホイールを備えており、連続したオートフォーカス機能がなくても構わない人にとっては非常に魅力的な選択肢となっている。
NDは 表現の幅を広げる
NDは、明るい環境でも絞りを開放にしてボケを生かすのに役立つのはもちろんだが、より表現の幅を広げてくれる。
また、NDはデュアルゲインセンサーにも適している。低照度センサーでベースISOを高めに設定している場合、ノイズ低減のためにISOを第2ゲイン回路の範囲まで上げることが望ましいことが多いが、NDを使えば明るさを再び下げることで、クリッピングの危険性を少なくすることができる。
ただでさえ明るい環境でさらにゲインアップするのは大変なので、NDを使えばこれを回避できる。これは内蔵型でも非内蔵型でも同じだが、最近の撮影では外付けのNDを使えないことが多いので内蔵NDがあれば安心だ。
ND内蔵カメラの低価格化
NDフィルターは、ミラーレス一眼のわずかなスペースに収めるのが難しいことを除けば、実は非常にローテクな部品だ。ガラス片にフィルターをコーティングするだけなら、カメラメーカーが普段取り組んでいる課題に比べれば、それほど難しいことではない。連続的な電子NDはより困難だが、今後開発が進むことを期待したい。
問題は、ND内蔵カメラの低価格化だ。「NDなしのカメラボディでも良いから安価な方が良い」という要求が出る可能性もある。
