映像制作には音が欠かせない。しかし、本格的なミキサーやレコーダーを持ち歩くのは避けたい場合は、オールインワンのポータブル機器が便利だ。Tascamの新製品「Portacapture X8」は、そのような機器のひとつだ。
録音する機器は無数にあるが、すべての作業と同様に、1)目的を達成するためには、2)機材が邪魔にならないように、適切なツールを持つことが重要だ。時には、フル機能のフラッグシップ機よりも、小さな機材の方が良い場合もある。
Tascam Portacapture X8は、フル装備のスタジオ用ミキサー・レコーダーではないが、非常にパワフルなポータブルオーディオレコーダーだ。4つのXLR/TRS入力、内蔵ステレオマイク、3.5ミニジャックを備え、合計8トラック(シングルトラック6+ステレオミックス)を録音することができる。更に、32ビット浮動小数点録音も可能だ。
Tascam Portacapture X8
ただしPortacapture X8には、各チャンネルの入力レベルを調整するためのロータリーコントロールがない。1)前面のほとんどを3.5インチのタッチスクリーンが占めており、これが中心的なインターフェースとなっている。Tascam Portacapture X8は192kHz/32ビットの浮動小数点録音に対応しているため、フェーダーを多用しても十分なヘッドルームが確保されている。また、24ビットと16ビットのモードも用意されている。
しかし、Portacapture X8のUI/UXはとても整然としているので、昔ながらのボタンやノブを使うのと同じように使えるだろう。もちろん、スマートフォンでの操作も可能だ。なお「Portacapture Control App」(iOS / Android)との接続には、別売のBluetoothアダプター「AK-BT1」が必要。
主な仕様
Portacapture X8は、特にポケットに入るサイズではないが、その機能セットを考えるとかなりの小型化が図られている。重さは472g(電池含む)、サイズは77mm×40mm×206mm(幅×高さ×奥行き)。電源には、4本の単三電池(アルカリ、ニッケル水素、リチウムイオン)またはUSB-Cケーブルが必要となる。これにより、Portacapture X8は、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション、または単なるラップトップ)に接続する外部オーディオ・インターフェースとしても機能する。また、オプションでACアダプターも用意されている。
バッテリー駆動時の駆動時間は、48Vファンタム電源を切った状態で10~18時間、ファンタム電源を入れた状態で5.5時間~10時間となっている(使用する電池の種類により異なる)。
本体には着脱式の大口径(14.6mm)コンデンサーマイクを2本内蔵している(A-BまたはX-Yの設定が可能)。
オーディオ用アプリ
本機の大きなタッチスクリーンは、単なる装飾ではなく、いわゆるアプリをPortacapture X8にプリインストールするためのもの。今のところ、6つある。
MANUAL | 最大6つのオーディオソースとステレオミックス(2ミックス)のマルチトラック録音を行うメインアプリ。 | |
VOICE | インタビューやディクテーション、会議などの録音に最適な録音アプリ | |
PODCAST | 最大4人でのポッドキャスト作成に使用 | |
MUSIC | インストゥルメンタルやボーカルの演奏を録音するのに適したアプリ | |
FIELD | 屋外での自然音の録音に最適 | |
ASMR | 入力された音に反応して画面の視覚効果が変化する |
仕様
Tascam Portacapture X8の仕様は以下の通りだが、小型ながらかなり充実している。
- 入力8系統、出力2系統のUSBオーディオインターフェースを内蔵
- 付属のマイクロフォンをUSBオーディオソースとして使用可能
- USBで受信した入力信号をSDカードに記録可能
- 4系統のマイク/ライン入力(XLR/TRSロック式コンボジャック
- マイク入力ごとにファンタム電源(24V/48V)を設定可能
- 最大8トラック(6トラック+ステレオミックス)のマルチトラックレコーディングが可能
- WAV(BWF)またはMP3フォーマットでの録音が可能
- MSデコーダー、リバーブ効果(6ルーム)を搭載
- 録音キーを押す前に録音を開始できるプリ・レコーディング機能
- 入力レベルに応じて自動的に録音を開始するオートレコーデイング機能
- 各トラックを異なるファイル形式で録音できるデュアルレコーディング機能
- スレートトーンを自動または手動で付加し、編集時のビデオファイルの同期を容易にすることが可能
- マークを自動的に設定可能(ピーク、レベル、タイム)
- 録音設定の情報をBWFファイルに保存できるXRI機能
- ミキサー内蔵で、EQ、ローカットフィルター、コンプレッサー、リミッター、オートゲインコントロール、ノイズゲートなどの音声処理が可能
- カメラなどから送られてくる音声をモニター・録音できるカメラ/ライン入力(3.5mmステレオジャック)
- カメラなどの外部機器に音声を送るための減衰量を選択できるカメラ/ライン出力(3.5mmステレオジャック)
- ヘッドホン出力または内蔵スピーカーによる音声モニター
- 別売のBluetoothドングル(Tascam AK-BT1)と専用リモコンアプリ(無料ダウンロード)を使って、スマートフォン/タブレットからワイヤレスでリモートコントロールが可能
- 記録メディアには512GBまでのマイクロSDカードが使用可能
- 単三電池4本(アルカリ、ニッケル水素、リチウム)、USBバスパワー、または別売のACアダプター(Tascam PS-P520U)による電源供給
- 停電時などに電池での撮影を継続するための自動電源選択機能を搭載
価格と発売時期
Tascam Portacapture X8は65,780円で販売されており、現在プレオーダーを受け付けている。ズーム社のH8は100ドル安価だが、32ビットフロートに対応していない。
Link: Tascam