オリンパスOM-D EM1 Mark IIレビュー - ファーストインプレッション
我々映像制作に携わっている者にとって、今は実に良い時代だ。しかし、最良の機材を選ぶのは、いつも簡単なことではない。ちょっと考えるだけでも、パナソニックのGH5が数か月後には世間を騒がせるだろうし、キヤノン、パナソニック、ソニー、ニコンと言ったメーカーもフォトベースでビデオが撮れるカメラを発売している。また、富士フイルムやオリンパスといった新規参入メーカーも健闘している。
さて、どうして最近各メーカーはこぞってフォトカメラに高画質ビデオ機能を搭載しているのだろうか?答えは恐らく日本のマーケットの変化にある。フォトグラファーがビデオ機能の搭載を要求しているのだ。そして、もう一つ気になるのは、多くのモデルが中途半端なこと。(例えばLog機能が搭載されていない) この理由は明確だ。プロの写真家はこのような機能は必要ないからだと思われる。ビデオのログカーブが何かという知識も必要ない。メーカーに要求が届かない理由は、このような状況もあるのだろう。
オリンパスの新製品OM-D E-M1 Mark IIもその一つだ。このカメラはマイクロフォーサーズセンサー搭載、4Kビデオ撮影が可能で、多くの可能性を秘めたカメラと言える。しかし、残念ながらログ記録ができないのだ。下は、この質問に対するオリンパスの返答である。
Log機能を持っていない理由は、フォト撮影に主眼を置いたからです。ビデオ機能は、フォトグラファーが動画も撮りたい場合のアドオンです。しかし、技術的な理由はありませんので、マーケットの要求が強ければ、ログ機能も考慮したいと思います。
実は、自分はオリンパスのカメラを使ったことが無い。理由は簡単で、今までテストに値するほどのビデオ機能を持っていなかったからだ。ボディとレンズの手振れ補正が優秀なオリンパスだが、ビデオ機能とその画質には、今一つ触手が動かなかった。今までは。しかし、今回は違う。では、その実力を試してみよう。
オリンパス OM-D E-M1 Mark IIの概要
日本のオリンパスからカメラとED12-40 mm F2.8レンズを借り、またラボテスト用にオリンパスヨーロッパからカメラとED12-100mmをお借りした。ラボテストは、後日お知らせしたい。
今回はミラさんにインタビューをお願いした。ミラさんはカナダ生まれの東京で活動している人気ユーチューバー。世界に向けて日本を紹介する、観光地の案内動画を作っている。登録者はなんと24万人もいるとのこと。
インタビューの前日にはしっかりカメラのメニューを勉強した。一通り目を通しが、複雑な印象ではない。ビデオメニューを見るとモードがセレックトできるが、解像度やフレームレート、あるいは手振れ補正の設定は別のところにある。
メニューに入るにはInfoボタンを押す。メニューはハイライトとシャドーの調整ができ、ピクチャーモードの設定も可能。(いくつかのピクチャーモードは“フラットモード”では調整できない)
カメラのテストを楽しみにしていたが、EVFが暗く、緑がかっている。自分のカメラのLCDスクリーンとはかなり異なっているが、始めることにした。
翌日ミラさんに会い、カメラをバッグから出して撮影を始めようとした。そしてシャッターを押すとカメラは記録を始めた。しかし、EVFを除くと記録はストップし、目を離すとまた記録が再開するのだ。更にまた問題が起きた、ミラさんにフォーカスが合ってない。オートフォーカスを使って、関心の手振れ補正をテストしたかったのだが。
メニューを変更してミラさんを見てみると、やはりオートフォーカスになってない。オートフォーカスのメニューが無いのだ。オリンパスのユーザーは、初心者だからと言うだろう。原因は、オリンパスED 12-40mm F2.8は、ソニーの28-135mm同様、レバーでマニュアルとオートフォーカスを変えられることにあった。
多分、移動中に動いてしまったのだろう。典型的な初心者の失敗、ということだ。
言うまでもなく、ミラさんの動きをフォローしながらフォーカスがずれないようにする必要があった。しかし、このカメラの要点である手振れ補正機能の素晴らしさを確認することはできた。しかも、手振れ補正機能が付いていないED12-40mmF2.8との組み合せで、だ。
日没まで2時間程度、RECボタンの不手際はあったが、おおむねカメラは順調に動作した。良い点と問題点を以下に挙げてみた。
オリンパスOM-D E-M1 Mark IIを使って気付いた点
良かった点(順不同)
- 様々な解像度で撮影可能(最大60p)
- DCI 4K 24p、237Mbpsで記録する高画質映像(上のビデオは平均86Mbps)
- 5軸手振れ補正。IS機能付きのレンズとの組み合わせでは、手振れ補正はさらに強力になる
- HDMI出力
- 良く抑え込まれたローリングシャッター現象(10ms)。なんと、 ブラックマジックデザインUrsa Mini、ソニーFS7 (14ms) 、また ソニー α7SII (25ms)よりも優秀だ。
- 高機能のカメラボディとヘッドフォン出力も装備
- 記録中にオーディオレベルの調整が可能
- フィーリングの良いタッチスクリーンオートフォーカス(ただし連写でのオートフォーカスは一定ではない)
- 適切なフォーカスアシスト機能。フォーカスリングを操作時、ピーキングと画面拡大が可能
- タイムコード機能搭載
- 角度調整可能なLCDスクリーン
- ピクチャーモード設定可能。不要なプロファイルはメニューからOFFできる
- 高音質のオーディオ
- ISO3200まで良好な低照度特性。ISO6400も使えるが、暗部ノイズが目立ってくる。
- ヒストグラム表示可能
改善して欲しい点(順不同)
- フラットモードは完全なフラットではない
- 25fpsではDCI4Kを選択できない
- フラットモードでも輝度が高すぎる。ピクチャーメニューで調整する必要がある。
- LCDとEVFはルックが異なる。EVFはサチュレーション気味でグリーンになる傾向がある
- アイピースは固く取り外しできないので屋外では使い難い。
- パターン調の被写体でモアレが出る
- デジタルコンバーターの画質。ビデオ収録時のデジタルズームの画質が、ソニーのクリアズームに及んでいない。
- 2つの手振れ補正モード(M-IS 1/2)を切り替えると、M-IS1のクロップファクターが変わり、ビデオの画質が落ちる。これはカメラ本体の手振れ補正をデジタル補正と両用しているため。
- 時々フリーズしてしまう。
- アスペクトマーカー機能が無い。(4:3から35:1は可変)
- オートホワイトバランスを変更すると、急に変化する。徐々に変化するモードが無い
- バッテリーの持ちは標準的なもの
まとめ
OM-D E-M1 Mark IIはビデオの画質と言う点においては、かなり進化したと言える。実際、自分がテストした中では、最も良いレベルだ。高ビットレートの映像と強力な手振れ補正機能はメインカメラとして十分使える。一方、オリンパス(日本のカメラメーカー全般に言えることだが)カメラの位置付けが、明確すぎる。以下はメールでのやり取りの一部。
このカメラは動画機能の付いたスティルカメラです。従ってユーザーは映像撮影の経験が乏しいと思われますので、できるだけサポートしたいと思います。例えばLogモードの要求があれば、将来のファームウエアのアップグレードで追加するといったことも検討したいと思います。
Log機能を搭載しなかったのは正しい判断ではなかったと思う。しかし、これは必要となれば、ファームウエアでのアップグレードは可能だ。
今後パナソニックのGH5の詳細がアナウンスされれば、競合はさらに激しくなるだろう。OM-D E-M1 Mark IIはオリンパスのフラグシップとして2~3年戦うことになるだろうが、健闘を祈りたい。またファームウエアのアップデートによる機能の追加や操作性の改善も期待したい。上のビデオのフラットバージョンは、下からダウンロード可能。
ビデオのカメラ設定 : DCI4K、24p、Adobe Premiereで編集、多少カラーグレーディング追加。音声レベルは多少上げている。
HDビデオ画質、長時間連続記録での発熱は確認していない。
Music: Art-list, 1 – 24 by Tomer Ben Ari – Going South
ミラさん、ありがとうございました。