フジノン MK18-55mm T2.9 Eマウントシネマズームレンズを発表
フジフイルムは、フジノン MK18-55mm T2.9とフジノンMK50-135mm T2.9の2本の新しいE-Mount シネマレンズを発表した。どちらのレンズもSuper 35mm / APS-C対応で、Eマウント仕様。また、今年後半には同社デジタルカメラに採用されているXマウントバージョンも予定されている。
幸運にも早い段階のサンプルを手に入れることができたので、実際のビデオ映像とともに、MK18-55 T2.9レンズのレビューをお届けしよう。
FUJINON MK18-55mm シネマズームレンズ
多くの優れたラージセンサーカメラが発売されているが、真に映画を撮るのに耐えうるシネマレンズは意外に少ない。私のように、写真用レンズを使ってビデオを撮影している人間にとっては、業界のトレンド、つまり「廉価で高品質のシネマズームレンズ」の発売は実に喜ばしいことだ。“シネマ用“と書いたが、今や各レンズメーカーのキーワードだろう。ドキュメンタリースタイルの撮影でも、このようなレンズが台頭し始めている。2016年は、ZEISS軽量ズーム LWZ.3 21-100mm T2.9-3.9、Canon CN-E 18-80mm T4.4、シグマCine 18-35mm T2.0と50-100mm T2.0、ソニー E PZ 18-110mm f / 4など手頃な価格のズームレンズが多く発売された年として記憶されるだろう。そして今回はフジフイルムのプロ用レンズ部門であるフジノンから、MK18-55 T2.9(2017年3月発売予定)とMK50-135 T2.9(2017年夏発売予定)が発表された。
これらのレンズに共通するものは、その価格だ。アンジェニュー(Angenieux)からも新製品が発売されたが、10,000ドルクラスの価格を付けるこのレンズでも高価に見えてしまう。
MK18-55mmの主な特徴
マニュアルコントロールとズーム域で変化しないフォーカス
2本の新レンズによりズーム域が連続し、広角から望遠域までカバーする。どちらのレンズにもフォーカス、ズーム、アイリスの独立した3つのリングがあり、標準的な0.8Mギアピッチを持つ。フォト用レンズとは異なり、これらの2つの新しいシネマレンズは、ズームを移動してもフォーカスが動くことはない。即ち、ズームインしてフォーカシングし、その後ズームアウトしてフレーミングするような、普通のビデオレンズの使い方ができるのだ。
ブリージングや光軸シフトなし
フジノンはフォト用レンズを動画で使用する場合、もう一つの問題点に着目している。それはズーミング中の光軸のシフトだ。ズームイン後、フレームの中心が常に正しいとは限らないことに気付いているユーザーもおられるだろう。今回発表された新しいシネマレンズでは、このような心配はない。更に、フォーカシングのブリージングを無くしている。つまり、フォトレンズではフォーカスを動かすと画角も変動するという現象があったが、これも無くしている。
バックフォーカスとマクロ
更にビデオユーザーに嬉しい2つの機能は、バックフォーカス調整とマクロ機能だ。バックフォーカス調整により、さまざまなEマウントカメラでレンズを調整し、焦点距離全域での完璧なフォーカスを可能としている。マクロ機能は、MK18-55mm T2.9では最至近撮影距離は0.38m(ノーマルでは0.85m)、MK50-135mm T2.9では0.85m(同1.2m )になる。
なお、どちらのレンズもフィルター径は82mm、外径は85mmでマットボックスを簡単に取り付けることができる。
MK18-55mmをフィールドテスト
金曜日、寒い朝早、プロデューサーのDoris Pillerと私はウィーンの郊外、ドナウ川沿いにある “無名者墓地“に向かった。カメラはソニーFS5。まだリリースされていないフジノン18-55mmをマウントして、美しい朝を撮る準備ができた。
まず気付いたのは、手袋を着けていてもレンズを操作し易いということだ。これは、暖かい地域で撮影するカメラマンには重要でないかもしれないが、寒い時期には大変重要なポイントだ。フォーカスリングは非常に応答が高く、200度の回転角は一人で撮影するカメラマンには最適だ。
もう一つ良かった点は軽量なことだ。 このレンズはコンパクトでかつ1kg以下と軽量だ。ただ、これを実現するにあたり、最大焦点距離、T値、Super 35 mm/ APS-C対応と言ったところで妥協点はあるようだ。もちろん様々なところでトレードオフがあり、どこに落とし所を置くかが重要な点だが、多くの大型センサーカメラマンにとってこのレンズはバランスのとれた仕様と思う。
光学性能に関しては、全体的に高品質の映像を撮ることができ、ブリージングが無いのは気持ちが良い。ただ、特に18mmから33mmに焦点距離を変えると、フォト用レンズで直線的なものを撮った時に見られるようなレンズ歪が認められた。しかしMK18-55mmレンズは、中央から端まで非常にシャープな画質を提供してくれる。色収差も非常によくコントロールされている。今後、ラボテストで詳しく見たい。
長所と短所
長所(順不同)
- 4000ドル以下の低価格
- ブリージングなし
- 良好な光学品質
- 美しいボケ味
- 小型軽量(980g)
- 3つの独立した使いやすいリング(フォーカス/ズーム/アイリス)
- マクロ機能
- バックフォーカス調整機能
- a7S / a7SII / a7RIIのクリアイメージズーム機能を使うと、これらのフルサイズセンサーカメラで使用できる。
短所(順不同)
- 18mmから33mm間の目に見える歪み
- 55mmの最大焦点距離は、ドキュメンタリー作品では足りない場合があるかも
その他
- スーパー35mm / APS-C/ Eマウントレンズで、Xマウント版は、今年後半に予定。
- T2.9(F2.75)。
- サーボズームやIS機能は搭載されていないマニュアルレンズ。
まとめ
新しいフジノンMK18-55mm T2.9レンズは、Eマウントカメラを使用するプロカメラマンに最適と言える。実際、他社からも多くのレンズがリリースされているが、品質、携帯性、価格に関して、フジノンのこれら新製品は好評を得るだろう。個人的には、55mmが少し短すぎる以外、文句はない。また、2本のレンズをセットにして手頃な価格で提供してくれることを期待したいものだ。 いずれにせよ、高品質で素晴らしいレンズであり、限界まで使ってみたいレンズであることは間違いない。
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上記のビデオ撮影データ:
使用機器:ソニーFS5 / フジノンMK18-55mm T2.9 / Adobe Premiere CCで編集/S-log2で撮影 / 色補正:FilmConvert / FJ Velv 100プロファイル。
Many thanks to Doris Piller and Josef Fuchs
Music: By Art-list. Track: “Floating By” by Brandy & Wine