SLR Magic Anamorphot 65レビュー - フジノンMKレンズ用アナモフィックアダプター
前回SLR MagicのアナモフィックレンズアダプターAnamorphot 65について、同社のマイクロシネマプライムやフジノンのMKレンズのような82mmのフィルター径レンズに装着できることをレポートした。現在、このアダプターは予約販売を開始している。
今年のCineGearでSLR Magicにインタビューしたが、今回テストする機会があったので報告しよう。
アナモフィックレンズとは
まず、なぜ「アナモフィックな」撮影が行われるのか考えてみよう。その答えは簡単で、映画的なルックの美しさが、アナモフィックレンズで撮影することによって出せるからだ。
しかしそれにもかかわらず、アナモフィック撮影が広く普及していないのはなぜだろうか?それは恐らくコストとテクニックが必要なためだ。 本当に高品質なアナモフィックレンズは、インディー映画制作者ではとても手が出るものではない。ビンテージのアナモフィックレンズを購入するという方法もあるが、これはそれなりに技術がいる。アナモフィックに関しては、私の友人でありコンテンツの投稿者であるTito Fernandez氏がYouTubeで、レンズやアダプターの貴重な情報を紹介しているので、是非参考にしていただきたい。
アナモフィックレンズが高価で手が出ないなら、アダプターを使用するという手がある。アナモフィックレンズアダプターをレンズの前に装着するというアイデアは新しいものではなく、以前から利用されてきた手法だ。これなら手持ちのレンズをそのまま使ってアナモフィック撮影ができる。過去にSLR MagicのエントリーレベルのアナモフィックアダプターAnamorphot 40をテストしたが、アナモフィックでの撮影を楽しめるだけではなく、高品質の映像が撮影できるという点からも高評価できるものだった。
SLR magic Anamorphot 65の概要
以下はAnamorphot 65の主な仕様。
- 1.33xアダプターで、16×9センサーを持つ最新のカメラで使用できる
- フィルター径82mmで、SLR Magicマイクロプライム、一部のシグマレンズ、フジノンMK 18-55mm、50-135mmに取り付け可能
- フィルター径112mmの他のフィルターを装着できる
- マットボックスが装着できる外径114mmの外径
- 重量: 0.78 kg
フジノンMK 18-55mm とMK 50-135mmに対応
これら2本のフジノンMKレンズは約2年前に発売され、その後多くの映画制作に愛用されている。価格と品質は素晴らしく、サイズと重量も手頃で使いやすい。私はアダプターをEマウントのレンズでテストしたが、その後フジノンはXマウントバージョンの出荷を開始し、富士フイルムのほとんどのカメラと通信することができる。 マイクロフォーサーズマウントにも対応しているので、オリンパスやパナソニックのカメラでも使用できる。
SLR magicのAnamorphot 65は、これのレンズを念頭に置いて作られており、完璧にフィットする。
MKレンズにアナモフィックアダプターを取り付ける
最高の光学性能を得るため、アダプターをMKレンズに装着する前に、レンズのバックフォーカスをチェックする必要がある。アダプターをレンズに装着するのは簡単だが、何故かMK 18-55よりもMK 50-135に取り付けるほうが簡単だった。取り付け後は、アダプターとレンズが正しく位置合わせされるように、カメラを平らな場所に置く。
カメラ側に関しては、ソニーα7シリーズのようなフルフレームカメラで使用する場合は、メニュー設定でAPS-CやSuper 35mmモードに変更することを忘れてはならない。残念ながら、a7シリーズカメラには「デスクイーズ」機能がないので、LCDやVFで引き伸ばされた映像を確認することができない。なお、アダプターは軽量なので、レンズサポートなしでも、ハンドヘルドでも撮影することができる。
アダプターの性能
数日間、私はソニーα7 IIIにMKレンズとアダプターを装着して撮影した。ルックは大変気に入った。レンズに関しては、フジノンMK 50-135はアダプターが装着されていても焦点距離全域で使用できる。ただ広角端の50mmは、もう少し広角側が欲しいところだ。またシャープなフォーカシングも多少扱いが難しいところがある。その結果、このレンズを使用して撮った映像の多くで少しフォーカスが甘いところがあった。 18-55mmでは全く問題なく、アダプターとのマッチングも完璧だった。フォーカシングは必ずしも簡単ではなかったが、全般的に映像は素晴らしいものだった。アダプターを装着しても切れが良いのは非常に気持が良い。ただ、予想通りズーム全域を使うことはできなく、30mm以降しか使用できない。しかしアナモフィック撮影ではほぼ問題ないだろう。逆に55mmは少し短かすぎる気もするが、被写体の自由が効く撮影では少し寄ればよいだけの話だ。
SLR magic Anamorphot 65で注意すべきこと
レンズアダプターを使用する場合、他の多くの製品と同様に問題がある。それはレンズとアダプター両方でフォーカスを合わせる必要があることだ。ただAnamorphot 65で良いのは、アナモフィックアダプターがMKレンズを念頭に置いて作られているので、レンズとアダプターのマーキングが似ていることと、アライメントが完璧なので、例えばレンズのフォーカスマークを10フィートに合わせた場合、アダプターのフォーカスリングを同じ数値にすると完璧なフォーカシングができることだ。
ただ両方でフォーカシングしなければならないので、面倒には違いない。フォーカスミスをする危険性は多分に残されている。フォーカシングを簡単にするため、レンズのフォーカスリングとアダプターのフォーカスリングに取り付ける「ハンドル」のような物があればよいのだが。 残念ながら、これを解決する手段は今のところ無い。
まとめ
価格、使い勝手、光学性能の3つの点で評価してみたい。価格は主観的なものだが、このアナモフィックレンズアダプターのパフォーマンスから言えば高価なものではないだろう。ユーザビリティに関しては、先程のフォーカシングの問題があり、あまり高い評価ではない。光学性能については、このルックは実に好ましいものだ。特に、MKレンズの性能を考え、あえてフレアを抑えたことに対しSLR Magicに敬意を表したいくらいだ。 SLR MagicのAnamorphot 65とフジノンMK 18-55mmの組み合わせは、低予算でのアナモフィック撮影に最適といえる。両方のフォーカシングを合わせなければならないことに対してソリューションがあれば完璧なのだが。
上記のビデオはAdobe Premiere CCの最新版で編集されている。 ソニーα7 III、PP7(S-Log 2)で撮影したもので、主に800 ISOで撮影し、Film Convertで処理した。
音楽:Art-list Music theme: Me and You by Oliver Michael
フジヤエービックのショップサイト