Aputureは、600d ProおよびAmaranシリーズ(記事はこちら)に続き、フォーカス可能なLS60dおよび60xをリリースした。2020年5月にバーチャルトレードショーで、Aputureの社長Ted Sim氏にこれらのライトについてインタビューした。今回これらのライトをフィールドレビューしたのでレポートする。
Aputure 60xと60dについて語るには、昔のタングステンデュアルレンズDedolightを語る必要がある。 Dedolightは80年代半ばに開発され、2000年代初頭に改良されが、LED技術の進化によって再び脚光を浴びている。
映画やテレビ業界にいると、現場に少なくとも1台のDedolightが用意されているのを目にする。これらの器具も非常に信頼性が高く、電球を時々交換する必要があるものの永久に使える。
多くのDPや照明技術者は、Dedolightを卓上の製品の撮影からステージでの使用、またはフレームの端に小さなターゲットハイライトとして使用している 。端的に言えば、Dedolightsはさまざまな状況で使用され、さまざまなユースケースに対応するライトと言える。
Dedolightの洗練された光学系は、何年にもわたって多くの課題に取り組むことができた競合他社がほとんどないことを意味している。そしてこれは、照明技術者や撮影監督の間で、タングステンライトからLED技術へと移行しても変わらない。Aputure 60dと60xはそのような背景から開発されたものだ。従来のAputureMini 20を使ったことがあれば、60dと60xが改善されていることが分かる。
ファーストインプレッション
Aputure 60d(d = 5500Kのデイライト)と60x(x = 2700Kから6500K可変のバイカラー)はどちらもソフトケースに入れて出荷される。これは、Aputure 300d MK IIのケースの3分の1のサイズだが、クオリティは変わらない。これらのライトはコンパクトで、気軽に使うことができる。
各キットには次のものが同梱されている。
- ランプヘッド:デイライトかバイカラーを選択できる
- Bowensマウントアダプター: Aputureアクセサリーを使用可能
- デュアルソニーNP-Fバッテリープレートアダプター
- 小さな4方向バーンドア(アダプターは不要)
- 電源コード付きACアダプター
- Dタップケーブル
外観はマットブラックメタルのIP54規格の筐体に、リアの真っ赤なフリンジと透明なプラスチック製のコントロールインターフェイスを組み合わせ、見栄えがする。もちろん最も重要なことはライトの機能性だが、見た目もやはり重要な要素の一つだ。
ランプヘッドは予想よりも頑丈で、60dと60xどちらもレンタルでも問題なく対応できると感じる。また、安全に取り付けるために必ずしもCスタンドに頼る必要はない。標準のライトスタンドは、ランプヘッドの重量にも問題なく対応する。Dedolightを使用したことがあれば、ランプヘッドの形状は馴染み深いものだろう。これは決して単なるコピーではなく、意味のある形状だ。
操作は、3つのノブと背面LCDディスプレイで行う。 1つのノブはビーム角度を変更し、他の2つはメニューをナビゲートする。これは、独立したスタンドマウントコントロールボックスを使用する他のAputureライトとは異なる。いくつかの点で、新しいAmaranシリーズに似ているように感じるところもある。なお、ビーム角度を制御するノブは多少固い。
筆者は、NP-FバッテリーアダプターやACアダプターブロックを取り付けるVロックを使用している。ライトが小型なので、バッテリーアダプターやACアダプターを取り付けることはできるが、同時にはできない。
用途
60xと60dでは、スポット/フラッドビーム角度を15〜45度の範囲で調整できる。
筆者は普段LightBridge CRLSシステムを使っているが、今回は特に25cmおよび15cmサイズのCRLSパネルを使用するいくつかのNDAプロジェクトで60xおよび60dを使用した。選択したCRLSパネルサイズ(50cmはおそらく大きすぎる)を用意するだけですぐに使うことができる。
残念ながら、今回は製品撮影で使う機会が無かったが、60xと60dはそのような用途にも最適だろう。製品の撮影では、その製品のさまざまな部分を強調表現したり目立たなくしたりするが、これらのライトはそのような作業にも適している。ただし高出力ではないので、ハイフレームレートのスローモーション撮影では、Aputure 300d MK II とスポットライトの組み合わせを使用する必要がある。
今回はSpotlight Mini Zoomアクセサリーのテストをする機会は無かったが、製品やロゴや、さまざまなアートオブジェクトを強調表示するために役立つことも分かった。
ソニーNP-Fバッテリーに対応しており、2つのNP-Fバッテリーを取り付けることができる。またDタップも付属している。
コントロール
後部に操作部があり、インターフェースのデザインは際立っている。上部の2つのノブを使用することで、メニューを簡単に操作できる。 0〜100%範囲で1%ずつ暗くしたり、色温度を2700K〜6500K(Xバージョン)で変更することもできる。メニューには特殊効果も含まれており、壊れかけの電球、稲妻、テレビなどのさまざまなエフェクトを選択できる。線形やS曲線などの調光曲線を選択することもできる。
AndroidやiOSデバイスでSidusLinkアプリを介して制御することもできる。ただしどちらのライトにもワイヤレスあるいは有線のDMX機能は用意されていない。
出力と色温度
まず、バイカラーの「x」バージョンでは、他の器具と比較して、ビーム角度が出力に大きく影響する可能性があることに注意が必要だ。 Sekonic C-700U分光計(現在はC-800Uで更新)を使用し、Aputure 60xが3フィートの距離で色温度(ケルビン)と出力(lx)の数値を測定した。以下が測定値だ。ターゲットは5600Kで、ビーム角は45度、出力は100%に設定されている。アクセサリーは取り付けていない。
5600Kのターゲットで5492Kの読み取り値は優れており、通常のマージン内に十分収まっている。比較のために、3200KをターゲットにしたAputure 60xの測定値を示す。これも、出力を100%に設定して45度でスポットしている。
ここでは、3135Kとなったが、3200Kに非常に近く、10100lxから8010lxへのわずかな出力差がみられる。それでは、4700Kをターゲットにしてもう一度試してみよう。
ここでも、目標の4700Kに対し4602Kの読み取り値で、100ケルビン以内に収まっている。
なおこれは、Aputure60dのSekonicC-700Uでの測定値で、ターゲットは3フィート、5500Kで、出力は100%に設定され、アクセサリーは使用していない。
結果は5773Kで、5500Kから数百ケルビン離れている。筆者がテストした過去の照明器具と比較するとまだ優れているが、60xと比較すると差がある。この読み取り値は、デイライトに設定した60xと比較した場合、60dで2倍の出力が得られることも示している。バイカラーのライトでは、通常、単色のライトの出力より小さくなる。
また、15度でフルフラッドに設定した60dをテストし、3フィートの同じ距離で100%出力することにした。このデイライトのターゲットは5500Kのままとなっている。
15度のビーム角では、最終的に5500Kに近づく。フルスポットとフルフラッドの色温度で違いが見られる。
しかしいずれにしても、これらの結果から60dと60xは優れた照明器具であることが分かる。
まとめ
60dと60xは、どちらも最新世代のAputureライトと言える。ニーズに応じて、様々な用途に使用できる。ただし、DMXでのコントロールが必要ない場合に限られる。 デイライトとバイカラーの選択に関しては、用途に応じて考える必要がある。 いずれにせよ、Sidus Appも含めた60dと60xの機能は十分に評価できるものだ。
Link: Aputure Website