照明はバルブの時代から確実にLEDの時代に変わりつつある。LEDライトも高出力、高品質の製品が一般的になってきた。AputureのLightStorm LS C120tも例外ではない。
LEDライトの時代になった
LEDライトへの移行は何も今に始まったわけではないが、映画製作の面から見ると、LEDライトが真に使えるものとなったのは最近のことだ。照明技術全体から見ると、それは100年単位で技術が磨かれてきたのだが、今やっとLEDライトへの変遷が始まったという状況だ。LEDライトは、初期のものは均一性がなく、一つ一つがバラバラで、品質もまちまちという状況だったが、その期間は結構長く続いた。
これらのLEDパネルには、致命的な欠点があった。LEDパネルには無数のLED素子が並んでいるが、それぞれの素子が影を作り、全体で見ると、不自然なパターンとなって現れたのである。これを消すのに用いられたのがディフーザーだが、結構厚いディフーザーが必要で、そのため光量が減少してしまった。更に、これら初期のLEDライトのCRI(Color Rendering Index:炎色評価数)は大変低く、マゼンタやグリーンがかった色になってしまい、使い物にならなかったのだ。
アプチャー LightStorm LS C120t
しかし、LightStorm LS C120tは違っている。まず、CRIはかなり高く、97以上を達成している。この値は次世代LEDライトとしてはさほど飛び抜けた数値ではないが、プロの照明としては絶対に必要なレベルである。LS120tは1mの距離で2500LUXの照度を出力することができるが、これはインタビュー用の照明として必要な明るさである。
二つ目に、LS C120tは小さなLEDを並べたものではなく、小さなLEDをひとまとめにした大きなライトで、これをCOB(Chip On Board)と呼んでいる。その結果、LS C120tは一つの大出力照明の形となっている。
将来、アプチャーはフレネルレンズもラインアップに加えるのかもしれない。フレネルレンズは明るくすることができる上、様々な使い方ができるので、是非期待したいところである。
三つめは、LS C120tは、特に写真の世界では一般的なマウントであるボーウェンSマウントを採用していることだ。最初に見たときは銀色の反射板が付いた本体を見て少しがっかりしたのだが、これに好みのアクセサリーを取り付けることができることが分かって納得した。
LightStorm LS C120tを使って気付いたこと
まず、このライトはデジタルシネマ向きのものではなく、写真撮影用のライトのように思える。LS C120tにはボーウェンSマウントが採用されており、バーンドアなどのアクセサリーを取り付けることができる。ソフトボックスや反射板、あるいはグリッドなども同様に取り付けられる。自分は対応するアクセサリーを持っていなかったので、試すことはできなかったのだが、すっきりと取り付けられる感じである。ボーウェン形式のソフトボックスは、通常のものより価格が多少安価で、スピードリングも不要である。付属の反射板は60°のビームアングルを持ち、反射板が無い場合は120°のアングルになる。
LightStorm LS C120tはタングステン、正確には3000Kだ。バイカラーLEDライトが一般的になっているのだから、少し残念だ。多分CRIを高くしたのでバイカラーが使えなかったのかもしれないが、しかし、やはり残念である。将来のデイライトバージョンの登場を待ちたい。
LS C120tにはファンが内蔵されているが、極めて静かだ。強制排気モードにすると、かろうじて聞こえる程度だ。もっともLEDはバルブライトと違って発熱が小さいのでこれは当たり前と思うかもしれないが、周辺の部品が熱を発するのである。他のLEDライトはもっとノイジーなものもあり、静かなインタビューを考えていたのに、照明のノイズに悩まされたこともあった。LS C120tのファンは“オート”と”強制排気”の切り替えがあり、強制排気でもわずか18dBと静かだ。
コントローラーは専用のコントローラーが付属する。明るさを10%~100%の範囲でコントロールでき、その他ファンモードの切り替え、別のチャンネルへのセットが行える。総合的に3チャンネル12ライトをコントロールできる。ワイヤレスでも可能で、リモコンを手近において置けば、照明器具をいちいち引き下げたりしなくても良いので便利だ。
筐体はしっかり作られている。コネクタも高品質だし、金属製の外筐も申し分ない。ハンドルと、幾つかのパーツはプラスティックだが、問題ないだろう。その他、三脚取り付け用のノブと角度調整用のノブはプラスティックだが、傘をマウントするノブは何故かアルミ製だ。リモコンとケーブルを除いたライト本体と付属する反射板で、重さは1585グラムとなっている。
装備されているアンブレラホルダーはなかなか良い。これを使うと、簡単にソフトなライティングができる。理想を言えば、正式なソフトボックスが一番良いが、これでも十分使用に耐えるだろう。
主な仕様
- 色温度:3000K
- 2500Lux/1m
- 消費電力:135W、9A
- 電源:15V DC
- 重さ:1585g
- CRI:97+
- ノイズ:最大18dB
- ボーウェンSマウント
- アンブレラホルダー装備
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