ARRI ALEXAClassicとALEXAMini LFを入手し、ラボテストを行ったのでレポートする。
まず、SIGMA CineプライムをマウントしたARRI MiniLFを貸してくれたウィーンのレンタルハウスAVProに心から感謝したい。次に、Konstantin “Costa” Konstantinou も彼のARRI Alexa Classicを貸してくれた。
第三に、カメラテスト用にRTX3090グラフィックスカードを提供してくれたNVIDIAについても感謝する。
さてそのRTX3090は、4480×2520 DaVinci Resolve17.1のタイムライン上でMiniLFの4480×2520 ARRIRAWファイルを、サクサクと再生できた。約6.6GBのメモリを使用して、約33%の負荷で動作した。
今回の記事では2台のカメラをテストした。その理由は、かなり以前にALEXA Classicをテストしていたので、ALEXA Mini LFの前に、このALEXA Classicを簡単に再テストし、すべての結果を並べて比較するのが良いと判断したためだ。
この記事は次のように構成されている。最初に両方のARRIカメラのローリングシャッターとダイナミックレンジをテストし、ALEXA MiniLFのラティチュードをテストしている。
XYLA21ステップチャートとIMATESTを使用してダイナミックレンジをテストする方法の詳細はこちらを参照いただきたい。
ALEXA Classicのローリングシャッター
ALEXA ClassicはSuper35mmイメージセンサーを搭載し、ProRes 4444で2048×1152(16:9)を撮影できる(ARRIRAWはこのカメラでは使用できなかった)。
ローリングシャッターは7.2ミリ秒という良好な値を示している。
ALEXA Mini LFのローリングシャッター
フルフレームセンサーを搭載するALEX AMini LFは、ALEXA Classicよりもわずかに高いローリングシャッター値7.4msを示した。しかしこれは、フルフレームセンサーでこれまでに測定した中で最高の結果だ。これまでのところ最高の結果は、8.7ms(1.0xクロップフルフレーム)を示したソニーα7SIIIだった。
ALEXA Classicのダイナミックレンジ(ProRes 4444 / ISO800)
Xyla 21ステップチャートを撮影した波形プロットを見ると、ノイズフロアの上で14ストップが識別できる。
Xyla21ステップチャートファイルをIMATESTに取り込むと、次の結果が得られる。ALEXA Classicは、信号対雑音比2でダイナミックレンジ13.8ストップを示し、SNR = 1で14.8ストップを示した。また、18ゾーンがIMATESTによって識別されている。これらは、ラボテストでこれまでに測定した最高値だ。
中央のグラフを見ると、14.8ストップ(SNR = 1、青い曲線)を超えても、ノイズフロア内のIMATESTによってさらに約2ストップが識別されていることが分かる。加えて後処理でノイズリダクションを使用することもできる。
SNR = 2での13.8ストップは、7年以上前に測定された14ストップの0.2ストップ以内の違いだ。以前のテストも正しく行われていたことが分かる。では次にALEXA MiniLFに移ろう。
ISO800でのALEXA Mini LFのダイナミックレンジ
まず、ISO800でオープンゲートモード(4480×2520)のLog Cを使用して、ProRes4444XQで撮影された波形プロットを見てみる。
ALEXA Classicと非常によく似た傾向で、ノイズフロアの上に14のストップがある。 15番目と16番目のストップも辛うじて見える。
以下のIMATESTの結果を見ると、ProRes 4444XQ(オープンゲート4480×2520)の場合、SNR = 2で13.5ストップ、SNR = 1で14.7ストップが得られる。18.8ゾーンが識別され、さらに約3つのストップがIMATESTによって識別されている。ノイズフロア–左側の青い線の上にある中央のグラフを見ていただきたい。SNR = 1、14.7となっている。
実に素晴らしいことに、これらはフルフレームセンサーのラボテストでこれまで測定した中で最高の結果だ。非常に興味深いことに、ALEXA Classicよりもわずかに少なくなっている(SNR = 2)。内部信号処理が少し改善され、ノイズフィルタリングが少ない「生の」映像に近くなっているようだ。ただし、より多くのゾーンが識別され、さらに3つのストップがノイズフロアに埋もれている。したがって、ミニLFは、波形プロットにも見られるように、Classicよりも優れているとは言えない。
ARRI RAWオープンゲート(4480×2520)を使用してXyla21チャートを撮影しても、IMATESTとほぼ同じ結果が得られる。
ALEXA ClassicとMiniLFに関する上記の結果は、ARRIが10年以上にわたってデジタルシネマカメラのリファレンスとなっている理由が分かる。これまでテストしたカメラで、ダイナミックレンジがこの領域に達したものは無い。
ISO800 ARRI RAWでのALEXA Mini LFラティチュードテスト
ラティチュードテストは、露出オーバーや露出アンダーで撮った映像を基本露出に戻した場合、どの程度再現できるかのテストだ。まず標準のスタジオシーンで、被写体の顔に60%の輝度値(波形内)を設定する。この基本露出は、LOGモードなどに関係なく、テストされたすべてのカメラの参照ポイントとしている。
LOG曲線とコード値の分布により、60%の輝度で非常に明るいカメラもあり、また暗いカメラもある。追加情報として、18%の参照グレー値も示す。
ALEXA MiniLFのLogCの場合、18%グレーはコード値400(10ビット色空間)になる。これは、基本露出の3ストップ下になる。
このテストでは、SIGMA Cine Prime、85mmT1.5を使用した。 356°のシャッター角度(360°の設定は不可能)、ISO800でT1.5の絞り時、被写体の顔はクリップ直前になる。カメラのRAWコントロールと3DLUT(ARRI Log CからRec709)を使用して、DaVinci Resolve 17.1で基本露出に戻すと、次の画像が得られる。
上の画像で見られるように、クリップはなく、カラーチェッカーの左側も完全に表現されている。
そこから、シャッター角度を180°、90°、45°、22.5°、11.25°に調整し、アイリスをT1.5からT2、T2.8とT8まで閉じることで、シーンを連続的に露出アンダーにする。そしてこれらをベース露出に戻す。
それでは、3ストップの露出アンダーのシーンから始めよう。被写体の顔は18%のグレー値(10ビットで400コード値)で最大になる。したがって、18%グレーから、顔がクリップするまで、露出ラチチュードはほぼ8ストップ(-3から+5)になる(実際には、シャッター角度が356°から180°に、T1.5からT2に移行すると、少し少なくなる。したがって、より正確には約7.8ストップとなる)。
これは印象的だ。そしてそれだけではなく、ショットの下の3つのストップを見ると、少しノイズがあるが、非常に細かく、心地よいノイズだ。
では次に4ストップアンダーの場合を見る。
ノイズは4ストップアンダーでより顕著になる。画像はまだそのままでもよさそうだが、必要に応じてノイズリダクションを使っても良いだろう。
次の5ストップアンダーでは、ノイズがかなり発生し始める。
この時点ではノイズリダクションが必要だ。しかし、ノイズは細かく分散されたもののため、下の画像に示すように、ノイズリダクションは非常にうまく機能する。ただし、シャドウはベース露出より5ストップアンダーでクリップし始める。これは、前に示した波形によく表れている(シャドウは、顔からさらに5ストップ下にあり、クリッピング位置より15ストップ下にある)。
この場合はもはやかなり重いノイズリダクションを使用する必要があった。参考までに、DaVinci Resolve17.1のノイズリダクション設定を次に示しておく。
ベース露出より6ストップアンダーでシャドウがフェードし始め、ノイズによって画像が大幅に劣化する。それにもかかわらず、他の多くのカメラで見られるように、水平や垂直の不要な線は現れない。驚くべき性能だ。
大幅なノイズリダクションを使用すると、ある程度使用可能な画像が得られるが、元にはもどらない。
控えめに言っても、非常に印象的な結果だ。標準的なスタジオシーンの場合、ALEXA Mini LFは約10ストップ(5オーバー、5アンダー)のラチチュードを示す。今までのラボテストで最高のカメラは、たとえばパナソニックS5やキヤノンC300 MK III で、これらは8ストップのラチチュードを示している。水平や垂直の不要な線や、大幅な色の変化もない。
まとめ
当然のことながら、ALEXA ClassicとMiniLFは、ローリングシャッター、ダイナミックレンジ、露光ラチチュードなど、すべての分野でこれまでに測定された中で最高のテスト結果となった。もちろんそれは予想されたことだが、ALEXA Classicのセンサーの設計はすでに10年以上前のものであることを考えると、ARRIのカメラがデジタルシネマカメラのベンチマークとなっているのも頷ける。