ブラックマジックデザインのBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K(BMPCC6K)に関してPart1とPart2の記事をリリースしたが、今回はPart3としてcinema5D ラボテストを行った。今回のラボテストでは、BMPCC4Kとの違いもテストしている。
Cinema5Dでは6年前にBMPCC 4Kをラボテストしているので、これも参考いただきたい。(記事はこちら)
ブラックマジックデザインのウェブサイトに公表されている仕様を見る限り、ダイナミックレンジに関してBMPCC4Kとの違いはない。どちらも13stopのダイナミックレンジを持つとされている。
そこで、本当に違いが無いかを確認するため、ダイナミックレンジとローリングシャッターテストに加え、BMPCC6KとBMPCC4Kで新たにラティチュードテストを行うことにした。結果は、大きな違いがあった。
ローリングシャッターテスト
cinema5Dでは、300Hzのストロボライトに基づいた高周波、クォーツおよびマイクロコントローラーを使用した新しいテスト方法を採用している。センサーの読み出しは上から下に向かって行われるため、ストロボから一連の黒と白のバーが取得される。
ストロボテストにより、19.8 msのローリングシャッターが検出された。フレームレートが毎秒50フレーム(1:2.4アスペクト比で60fps)以上で6Kの完全なセンサー読み出しができない理由が分かった。フルセンサーモードでは、これ以上のフレームレートでは読み出しが間に合わないのだ。
このローリングシャッター値は、16msのBMPCC4Kよりも大幅に大きい。
ダイナミックレンジ
いつものように、DSC Labs Xyla 21 StepchartとIMATESTソフトウェアを使用する。(テスト方法の詳細はこちら)。
BMPCC6Kは、ベース値としてISO400とISO3200のデュアルISOセンサーを搭載しているため、両方でテストした。
フルセンサー読み出し、ISO400、6K BRAW 25p時のダイナミックレンジ
BRAW 3:1の固定ビットレート設定で最大解像度6K(6144×3456)のフルセンサー読み出しを使用すると、ステップチャートの波形プロットは約12stopのダイナミックレンジとなる。
DaVinci Resolveで、RAWファイルから高品質のTIFFをIMATESTにエクスポートすると、信号対雑音比2で11.8stopのダイナミックレンジとなった。(SNR = 1では12.9stop)。
これはBMPCC4Kよりも0.2stop優れている。
フルセンサー読み出し、UHD ProRes HQ ISO400時のダイナミックレンジ
興味深いことに、Ultra HDでProRes HQフルセンサーリードアウトを使用すると、ダイナミックレンジはS / N比2で11.8stopから11.9stopにわずかに増加する(SNR = 1で13stop)。
ブラックマジックデザインが述べているように、フルセンサーの6K解像度はUltra HDにダウンスケーリングされ、それによりノイズが減少し、ダイナミックレンジがわずかに改善するのだ。
フルセンサー読み出し、ISO3200、6K BRAW 25p時のダイナミックレンジ
ISO3200ではIMATESTの計算によると、ダイナミックレンジは10.0stopと大幅に低下する。(SNR = 2、下の右上の表の中間値)(下の結果を参照)
これはデュアルISO設定がBMPCC4Kよりも高いため、BMPCC4Kの10.5stopよりも低い値になっている。
しかし前に何度も述べたように、ステップチャートを使用した透過テストはダイナミックレンジの最も単純で正確なテストではあるが、カメラの色やディテールについては判断できない。そのため、cinema5Dではラティチュードテストを導入している。
ラティチュードテスト
このテストについては、パナソニックS1 VLOGの記事で既に説明されているが、もう一度簡単に触れておこう。
ラティチュードは基本的に、露出オーバー、あるいは露出アンダーで撮ってしまった場合、その後補正する際に色とディテールをどの程度回復できるかを示す数値だ。
ラティチュードテストは、カラーチェッカーの隣に人物が座っている画像でテストする。
顔の部分の露出は60%の輝度値、白い紙は65%としている。テストでは、シーンごとにシャッター値を2倍にする。そして露出が5stopアンダーになるまで、前のシーンから1stopずつ露出を下げていく。
過度に露出不足にした後、0stopまで戻して色、ディテール、ノイズを調べる。このようなことは実際の撮影ではあまりないが、低い性能のコーデックを採用しているカメラでは、露出が2〜3stop外れると映像は補正できない。
BMPCC4K(3840×2160解像度を使用)とBMPCC6K(6144×3456解像度を使用)どちらもBRAW 3:1固定ビットレート、ISO400 25pに設定した。両方のカメラの映像は、ブラックマジックのfilm to Video LUTを使用してDaVinci Resolveでグレーディングし、その後若干の微調整を行って、できるだけ同じような映像になるようにした。
上の画像を見ると、BMPCC6Kは非常に良好な結果となっている。横縞が出始め(ノイズリダクションで削除不可)、ノイズが多くなるが、色情報は非常によく保持されている。
下はBMPCC4Kで撮影した同条件の映像だ。
BMPCC4Kでは明らかに色情報は劣化し、画像はピンクになっている。下は適正露出で撮影した両方のカメラの映像。
下は5stop露出アンダーにした後、0stopに戻した結果を並べたもの。
このテストでは、BMPCC6Kが驚くほど良好に色を保持しているのに対し、BMPCC4Kは3stopアンダーで既にピンク色になり始め、ノイズがかなり目立っている。下は3stopアンダーで撮影して0stopに戻した場合の比較。
面白いことに、露出不足が無い場合の波形は両方とも同じに見えるが(グレーディング後)、ResolveのCamera Rawで露出を戻すと、BMPCC4Kの画像は明るく表示される。 BMPCC6Kの画像の明るさは変化しない。
さて、BRAWで撮影したときの大きな問題は、DaVinci Resolveでノイズリダクションを使用すると、露出不足のショットが救えるか、だ。
結論から言えばBMPCC4Kでも可能だが、特定のポイントで画像に横縞が現れ始めると、ノイズリダクションではこれらを取り除くことができず、ピンク色のクロマノイズは4stopアンダー露出で、もはや除去されないことが分かった。
BMPCC6Kではノイズリダクションにより、4stop以下になるまで、ほとんどストライプやノイズのない画像が得られる。 BMPCC6Kの高解像度とノイズリダクションが貢献しているようだ。
BMPCC6KはBMPCC4Kに比べ、はるかに許容度が高いことが分かる。
(注:ビデオをキャプチャーした静止画で見ると、ビデオの再生時はるかに良く見える傾向がある。即ち、動画ではもっと悲惨な結果となる。)
まとめ
BMPCC6Kの結果は、控えめに言っても優秀だ。非常に優れたダイナミックレンジと優れたコーデック(Blackmagic RAW)の組み合わせにより、優れた画像が得られる。
より高価な新しい「シネマ」カメラがH.265 / H.264を採用しているのに対し、ブラックマジックデザインはこの価格帯で別の可能性があることを我々に示している。
ただしラボテストで確認したBMPCC6Kのひとつの欠点は、ローリングシャッターだ。このカメラではボディ内手振れ補正が搭載されていないため、手持ち撮影は避けた方が良いだろう。
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