ブラックマジックデザインのURSA Mini 4.6Kは実にお買い得のシネマカメラだ。同社の最新のセンサーを搭載し、高い機能を持つ。昨年発表された時、大きな注目を浴びたことは記憶に新しい。さて、出荷が始まり、実際に使用されるようになって、多くの称賛の声があるが、同時に落胆の声も聞こえてくる。実際のところ、どの程度の実力なのか URSA Mini 4Kと4.6Kをラボに持ち込んでテストしてみた。
URSA Mini 4Kと4.6Kの比較
これら二つのカメラの外観は同じだ。実際多くのパーツを共有しているし、内部も大きく変わらないだろう。はっきり異なっているのはセンサーだ。URAS Mini 4Kに使われているセンサーは、同社の他のカメラに使われているものと同じものである。一方、新規に開発された4.6Kのセンサーは15%大きく、ARRI AlexaやキヤノンC300 Mark IIのセンサーに近い大きさである。
今回はセンサーの違いに注目し、その違いによる画質の比較を行った。比較を分かりやすくするため、ソニーのFS7も同条件で比較対象に加えている。
仕様の比較
仕様面の比較をしてみると、これら二つのカメラはほぼ同じと言ってよい。どちらも4K/60fpsの記録ができる。主な違いは、最大解像度とセンサーサイズだ。どちらもアップルのProResでの記録ができるし、cinemaDNG RAWでの記録も可能。これらの点は、他の同価格帯のカメラに対して、URSA Miniカメラの大きな優位点と言える。
URSA Mini 4K
- 最大解像度: 4K (4000 x 2160)
- 最大フレームレート 4K: 60fps
- 最大フレームレート HD: 60fps
- Log Gamma: Film Log
- 撮像素子: Aps-C (21.12 x 11.88 mm)
- マウント: Canon EF か PL
- 記録ビットレート 4K: ProRes 444 XQ – 312.5 MB/s
- 価格: 約 $3000
URSA Mini 4.6K
- 最大解像度: 4.6K (4608 x 2592)
- 最大フレームレート 4K: 60fps
- 最大フレームレート HD: 120fps
- Log Gamma: Film Log
- 撮像素子: Super35mm (25.34 x 14.25 mm)
- マウント: Canon EF か PL
- 記録ビットレート 4K: ProRes 444 XQ – 312.5 MB/s
- 価格: 約 $5000
ダイナミックレンジ
ダイナミックレンジは URSA Mini 4Kと4.6Kで大きく異なっている。
テストには、いつものようにDSC labs XYLA-21のチャートを使用している。また、レンズはZeiss 50mm Cp2 macroを使用した。(テストの更なる詳細はこちら)
その結果、URSA Mini 4.6Kでは、実用ダイナミックレンジは12stopと計測された。この数値はα7SIIやC300 mark IIと同様の値である。一方 URSA Mini 4Kの方は、そこに達していない。
以下は、各カメラのテスト結果の写真。
URSA Mini 4Kの実用ダイナミックレンジは8.5stopに留まっている。FS7は実に12.5stopに達している。
ただし、このようにダイナミックレンジの差が出る理由を補記しておく必要があるだろう。FS7では映像処理の関係で、低いstopでノイズが増加する。ノイズリダクションをONにするとノイズは減少するが、暗部での解像感は失われる。 URSA Mini 4Kは実力的にダイナミックレンジでは劣っているようだ。URSA Mini 4.6Kは広いダイナミックレンジを持つが、やはり暗部でノイズが目立ってくる。特にパターンノイズが多く現れるが、これは URSA Mini 4Kよりも目立ち、暗部ではむしろ使いにくいかもしれない。
以下は暗部での状態である。(11、12、13、14)step13と14ではノイズが多すぎて計測できなかった。下は、見やすいようにガンマを上げた映像である。
ISO?
URSA Miniは4K、4.6Kどちらも、暗部の再現性はあまり得意としていないようだ。 URSA Mini 4KはISO200、400、800の3ポジションしか持っていない。URSA Mini 4.6KでもこれにISO1600を加えた程度だ。例えばソニーのFS7のほうが、ISOに関しては良い結果を見せる。
テストでは、各ISOで撮影したが、画質的にはどれも変わりはなかった。これは同じ映像をISOによって変化させているだけなので、予想できることではある。 URSA Mini 4KはISO800で、URSA Mini 4.6KはISO1600で使うのが良いだろう。撮影時の露出は、アンダーで撮るのは適切ではない。高いISOでできるだけ明るく撮るべきである。
即ち、撮影時はハイライトクリップが起こらない範囲で、明るめに撮影するとカラーグレーディングし易いということだ。
画質
URSA Mini両機の画質は、コーデックの良さもあり高く評価される。以下の映像はURSA Mini 2台と、ソニーのFS7、そして富士フイルムのX-T2の出力を外部レコーダーで記録したものを比べたものである。URSA MiniはRAWファイルで記録している。
さて、見て分かる通り、FS7とX-T2はかなり良い結果を示している。一方、URSA Miniの2台はエリアシングが目立ち、モアレが多少出ている。FS7のUHDの映像は、URSA Mini 4.6K RAWの映像を4Kにダウコンバートしたものと、解像感の面で似ている。
URSA Minbi 4Kと4.6Kを比べてみると、4.6Kの方がより解像感があるようだ。URSA Mini4.6Kの4Kモードで撮影したものと比べても、同様の結果となる。
ただ、カメラの画質は色々要素があり簡単に決められるものではない。チャートの結果と実際の画では状況が違ってくることが、下の映像で分かる。
しかし、上の映像を見てみると、面白いことにFS7の映像の方が解像感は低いように見える。シャープネスを上げるとURSA Miniのルックに近くなるようだ。FS7のコーデックは多少弱点なのかもしれない。ただ、FS7の映像はURSA Miniの両機に比べてノイズが少ないということも言える。 URSA Mini 4Kと4.6Kでは、同じようなルックを示すが、あえて言えば4Kはグリーンに、4.6Kはマゼンタ寄りの発色となる。また、どちらのカメラも、シャープネスを高めると、暗部にはそれなりにノイズが乗るが、総じて映像は自然な感じで、発色もまた自然だ。
ローリングシャッター現象
ローリングシャッター現象はCMOSセンサーの構造上起こり得る現象で、例えばα7SIIなどでも、カメラを振ると映像がユラユラと歪む。URSA Miniの両機も、あるいはFS7でも、この現象は発生する。
URSA Mini 4.6Kのローリングシャッター現象は、11ms でFS7と同程度である。この範囲なら、特に大きな問題はないだろう。多くのミラーレスカメラでは、これよりもっと発生する。これらに比べ、 URSA Mini 4Kは、グローバスシャッターのセンサーを搭載しているため、ローリングシャッター現象は原理的に発生しない。
まとめ
URSA Mini 4Kと4.6Kを比べてみて、改めてその違いがはっきりした。URSA Mini 4.6 KはFS7と近いダイナミックレンジを持ち、この点において URSA Mini 4Kに対し大きなアドバンテージがある。一方、 URSA Mini 4Kはグローバルシャッターのセンサーを搭載するため、ローリングシャッター現象が無く、この点においては URSA Mini 4Kの大きなアドバンテージである。
画質においては、URSA Mini 4.6 Kは発色のバランスが良く、自然な画質だ。 URSA Mini 4Kも同系のセンサーであることが分かるが、多少グリーンに寄る傾向がある。URSA Miniの両機は、エリアシングがFS7に比べて目立つのが気になるし、注意していないと暗部にノイズが乗る傾向がある。また、URSA Mini両機は低照度特性の面でも、多少不安があったが、4.6Kでは改善されている。
URSA Mini 4.6Kで特筆すべき点はダイナミックレンジだ。 URSA Mini 4Kのセンサーに比べ多少大きく、0.6K解像度が高い。これはあまり大きな違いではないように見えるが、ダイナミックレンジではその違いが出ている。
もしダイナミックレンジを重視するなら、URSA Mini 4.6Kを選択すべきだ。しかし、
それ以外の点では、両機はあまり大きな違いはない。スタジオなど撮影条件の良好な環境では、URSA Mini 4.6Kを選ばなければならない理由はあまり無い。
さて、 URSA Mini 4Kと4.6K、どちらを選ぶべきか?もちろん撮影条件によるが、一般論で言えば、やはり4.6Kだろう。よりハイクオリティーの4K映像を収録することができる。同じ価格帯で性能の良いカメラは他にもあるが、“フィルム的“という面では、URSA Mini 4.6Kは魅力的なカメラだ。この価格で、この映像が手に入るということを考えると、お買い得なカメラということができる。