キヤノン18-80mm T4.4レビュー
このレビューではキヤノン18-80mmコンパクトサーボビデオレンズを取り上げる。大型センサーカメラ用レンズでオートフォーカス機能を備え、非常に有用なレンズになる可能性がある。
キヤノン18-80mmレビュー
2016年にキヤノンCN-E 18-80mm T4.4コンパクトサーボレンズが発表された。これはフォトレンズの軽量設計を流用し、シネマライクな特性を持ち、ズームロッカーを持つ比較的手頃な価格のレンズだ。シネマズームレンズとして販売されているが、ハードストップがなく、実際にシネマレンズとして使用するのは多少難しいところがある。しかし、このレンズは大型センサーカメラでの撮影に興味深いところもあり、今回テストしてみることにした(上のテストショットのビデオを参照)。
主な特徴
- 18-80mmのズーム範囲(4.4倍)
- T4.4通し、F / 4.0相当
- 最小焦点距離:0.5m
- 光学手振れ補正
- 手動で滑らかなアイリス
- オートフォーカス/マニュアルフォーカス(ハードストップなし)
- レンズマウントまたはコネクターを介して電源供給(ソニーカメラで動作)
- FS7 / FS5との互換性。 18〜80mmのキヤノンレンズ+メタボーンズアダプターを介して、FS7ズームロッカーで動作し、アイリスコントロールもサポート。
- フィルター:フロントフィルタ用の77mmネジ(テストではVari NDフィルターを使用)
- 重量:1.2 kg
- 長さ:182.3 mm
- サーボハンドグリップ:付属(簡単に取り外し可能)
- バックフォーカス調整
- スーパー35mmセンサー対応
ハンズオン
コンパクトなシネレンズは素晴らしい。キヤノン18-80 mmは、とても小さく軽量というだけで、まず高評価だ。サイズは、フジノンMK Cine Lensesとほぼ同じだ。フジノン MK 18-55mmとMK 50-135mmのレビューはこちら。
コンパクトで手頃な価格のシネマ/ビデオレンズはほぼ全部テストしたと思っているが、この分野はまだこれからだ。メーカーは、写真用レンズが多くの大型センサー動画カメラマンにフィットしていないこと、そしてビデオ専用品が必要であることを徐々に認識し始めている。 キヤノン18-80mmの場合、Super 35mmとAPS-Cセンサーに対応するが、これをソニーα6300でテストした。今回は時間的な制約があったため、厳密なテストはできなかったが、以前別のプロジェクトで使用したことがあるので、ある程度の予想はできた。
18〜80mmの焦点範囲は、このレンズを検討する際には、まず頭に入れておくべきことだ。ソニーは18-110mmのレンズを商品化しているが、これは間違いなくこの分野で最も広いズーム範囲だ。しかし、視界の変化は指数関数的であるため、キヤノンレンズがカバーしていない81〜110mmの範囲は、それほど大きくない。それは、撮影中に、予想以上にズームインできることでも分かる。実際には、18〜80mmの範囲だが、たとえばFUJINON MK 18-55mmのようなレンズと比べると、テレが伸びるように感じる。このレンズを広角やミッドレンジズームとして使用すると非常に便利だ。
サーボ
私にとって、サーボはこのレンズの最大の長所であり、快適に使用できる。ソニーのα6300は小さいカメラなので、レンズのグリップが使いやすいだけでなく、滑らかなモーターにより、このサイズと価格のどのレンズよりも正確に、そして迅速に焦点距離をコントロールできる。ソニー18-110mmシネマレンズと比較して、キヤノンのサーボ機能はまったく別次元だ。ソニーのレンズは小型のズームレバーしか備えておらず、精度を保ちにくい。
キヤノンCN-E 18-80mm T4.4のサーボはスピード面でも優れている。シネマレンズやビデオレンズのようにどの焦点距離でもフォーカスを保持するので、すばやくズームインし、フォーカシングし、ズームアウトすることができる。滑らかさの面では、もう一歩の感がある。キャノン18〜80mmのサーボは、ビデオ専用の高価なビデオズームよりも速度ステップが少ないと感じられる。ビデオの最後のテストショットでは、木をズームイン/ズームアウトしているが、これからわかるように、完全に滑らかなズームを行うのは難しい。このレンズは、スムーズなズームが重要な場合には使えない。
サーボについて改善を求めたいもう一つのことは、レンズに接続するケーブルだ。これが突き出ていて、自分の手首に触れる。このレンズを使って数時間撮影した後、手に傷ができてしまった。このレンズのデザインのもう一つの欠点は、レンズを平らな面に置いたとき、コネクタが斜め下を向いているので、ケーブルに負荷がかかってしまうことだ。これは、ソニーα6300のような小型カメラでこのレンズを使用する場合、特に問題となる。 Zacutoはこの問題に対処するため、Zacuto Right Angle Extension Cableを販売しているが、かなり高価だ。もっと簡単に解決するには、直角コネクタをレンズ側に付ければよいだろう。グリップが必要ない場合は、簡単にグリップを取り外すことができるが、ツールが必要だ。
サーボに関して特筆できるのは、ソニーのカメラに装着したMetabonesアダプターでも動作し、レンズマウントを通して電力を供給することができる点だ。それだけでもこのレンズを手に入れる価値があるだろう。
オートフォーカス&シネレンズギア
キヤノン18-80mm T4.4には、フォローフォーカスやリモートフォーカス用のギアリングがあるが、他の同社のフォトレンズのようにハードストップ仕様ではない。これは、特にフォーカスツールを使用する場合、フォーカスをコントロールするのが難しくなる。率直に言えば、この点からも、このレンズは映画用途向けとは言えない。むしろ、フォローフォーカスを使用しないシングルシューティングに適した選択肢だろう。しかし、このレンズは「シネレンズ」のカテゴリーにあり、これは顧客に誤解を招く恐れがある。
キヤノンによれば、同社のデュアルオートフォーカス機能を実現するため、ソフトストップを採用する必要があったとのこと。Dual Autofocusシステムが大型センサーカメラでの撮影で有用であることは疑いない。従って、レンズ設計の限界を考えると、ハードストップとのトレードオフはやむを得ないのかもしれない。
光学特性
今回のキヤノン18-80mmのレビューでは、テストチャートを使用し、ソニー18-110mm F / 4と比較して、いくつかのショットを撮ったが、キヤノンのレンズは短いテストビデオだけでなく、これらのテストショットでも良好な光学特性を持っていることが分かった。色収差はほぼ確認できなかったし、ソニー18-110mm(デジタル最適化なし)と比較してコーナーでのシャープネスが多少劣っているとはいえ、特に問題と言うほどではない。なお、ソニーはカメラ内で最適化を行っており、これによりレンズの光学特性を補完している。これは素晴らしい機能だが、ソニーのレンズはキヤノンのカメラでは使用できない。
テストショットではソニーのデジタル最適化機能を無効にしたが、歪みはキヤノンのほうがソニーよりも目立った。キヤノンはまた、周辺光量落ちも確認できた。 フジノンレンズの問題は、ズームインしてすぐに逆方向に大きく歪むことだが、ワイド端の歪みはフジノンMK 18-55mmと同等だ。(下記スクリーンショット参照)。
キヤノン18-80mmの光学性能に関する自分の評価としては、これが4K撮影には適したレンズだということだ。特に目立った欠点は無く、ブリージングも確認できなかった。テストビデオを見て確認いただきたい。
キヤノンについてのもう一つの大きな利点は、最短合焦距離だ。マクロはないが、80mmで0.5mの距離は、クローズアップショットを撮ることができる。テストビデオでミツバチに近づいて撮ってみたが、驚くほどのクローズアップが撮れた。それに比べ、ソニーの18-110mm F / 4.0レンズは、0.95mの最短合焦距離なので、それほどの接写はできない。
光学手振れ補正
私はこのキヤノン18-80mm T4.4を気に入っているが、光学手振れ補正機能は私には不十分だ。同社の他のレンズでも見られるが、動きが自然に見えない。ハンドヘルドで撮影したワイドショットが0:40にあるが、このような感じになってしまう。最大の問題は、回転軸が安定していないことだ。その結果、ほとんどすべてのショットで小さなローリングが気になってしまう。 5,000ドル以上のレンズにしては、これはちょっといただけない。
A、B、C 3種類の手振れ補正モードが用意されているが、モードBとCは緩い補正だ。テストビデオではモードAを使用したが、将来このレンズを使用するにしても、手振れ補正はオフで使うだろう。
まとめ
キヤノンCN-E 18-80mm T4.4コンパクトシネマサーボズームレンズは、非常に興味深いレンズだ。サーボグリップを備えた軽量でコンパクトなソリューションを実現するために、シネマプロパティとフォトレンズの強みを組み合わせるというアイデアは素晴らしいアプローチと言える。また、今のところ、このタイプと価格では唯一の「シネ」ズームだ。
18-80mmのレビューを始めたとき、期待を持ちすぎたようだ。私の意見だが、このレンズは、特にハードストップの欠如のために、シネマレンズとしての要素が薄れており、シネタッチなレンズと呼ぶのが適当と思う。むしろ、よくできたサーボグリップのおかげで、放送ズームの機能を継承したビデオレンズだろう。
しかし、グリップは非常に使いやすい。自分が使用しているすべてのレンズにそのようなものを付けたいくらいだ。レンズを手に入れる理由の1つは、はるかに利便性が増し、使いやすさが大幅に向上するからだ。カメラのグリップが使い難い場合やDSLRやミラーレスカメラを使いやすくしたい場合は、このレンズは最適なチョイスだろう。モーターの滑らかさは特筆できるものではないが、正確なズームロッカーコントロールの利点は、ドキュメンタリースタイルの作品に大きな違いを作ることができるだろう。
光学手ブレ補正は私のプロジェクトで使用する種類ではないことを除けば、全体的に性能とサイズのバランスに優れている。写真用レンズに満足していないなら、是非キヤノン18-80mm T4.4を試して、違いを体験して欲しい。5,000ドル以上の価格は誰にとっても魅力的な価格とは言えないが、もし手に入れることができるなら、大型センサーカメラ用小型ビデオレンズとして十分価値がある買い物だ。
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