キヤノンC200レビュー - RAW記録できる安価でコンパクトなシネマカメラ
このスペックを見る限り、C200はキヤノンがシネマ市場に参入して以来、最も興味深いカメラだ。この4K RAWカメラが発表されてから1週間後にテストを行い、RAWとMP4でいろいろ撮影してみた。その結果をこのレビューにまとめる。導入の指標になれば幸いだ。
C200レビュー
C200のプレスイベントに参加し、その後、実際に使ってみて映像を録画し、チェックすることができた。多くの映像を収録し、評価してみて、これはかなり良いカメラだという印象を持った。しかし気になる点もいくつか見つかったので、それも含めてレポートしたい。
テストにあたって:cinema5Dでは、市販されているほぼすべてのシネマカメラをテストしている。これにより、カメラの長所と短所を調べ、読者の機材選択の一助になればと考えている。できるだけ客観的な評価をするつもりだが、どうしても自分の経験と撮影スタイルから主観的に見ている場合もある。是非、ご自分のスタイルに当てはめて、参考にしていただきたい。
主な特徴
以下は、同社の紙面での情報。
RAW
- 12ビット4K RAW内部記録
- 「Cinema RAW Light」で小さなファイルサイズ
- RAWはCFast 2.0に記録
- 最大59.94 fps、4K 10ビット
MP4
- UHD MP4記録 – 150 Mbps 内部記録
- MP4はSDカードに記録(> U3)
- UHD 8ビット(4:2:0)で最大59.94fps
- 最大120fpsのHDフルセンサ読み出し
その他の機能
- Super35mm CMOSセンサー&アクティブEFマウント
- タッチスクリーンと顔検出を備えた高度なデュアルピクセルCMOSオートフォーカス
- 5段階内部NDフィルター(ND 10まで)
- 良好な低照度特性と低ノイズ
- HDMIおよびSDI出力
- XLR入力
- SDカードへのプロキシ録画
6,000ドルの価格を付けた4K RAWカメラだ。60pのRAWと120fpsのHDを撮影することができ、非常に有用だ。機能、人間工学に基づいた操作性、サービス、品質の面でキヤノンは定評があり、多くの映像制作者にとって非常に説得力のあるカメラと言える。
一方、全てのユーザーがいつもRAWで撮影するとは限らない。そこまでの画質が必要でないユーザーも多いからだ。最高のクオリティを提供し、シネマティックで最高レベルの映像を撮影することができるが、トランスコーディングの手間が必要だし、多くのストレージスペースが必要となる。そのため、ドキュメンタリーやイベントシューティングのような撮影では、RAWは必ずしも最善のフォーマットではない可能性もある。
C200はまた、150Mbps のH.264のmp4フォーマットでも記録可能だ。エントリーレベルのカメラマンにとっては問題ないかもしれないが、多くのプロフェッショナルにとって、これは十分なスペックとは言えない。 即ち、このカメラはハイエンドにもローエンドにも対応しているように見えるが、中間のフォーマットが欠けていると思われる。C300Mark IIが持つ、適切なフォーマットがサポートされていないのだ。
しかし、これはスペックシートを見て想像しているだけのことだ。それでは、スペックシートだけを見て議論するのはこれくらいにして、実際に、RAWとMP4がどのような映像になるのか試してみよう。
RAWフッテージ
まず、C200のRAWを試してみよう。今回のC200のレビューでは、強い日差しや強風、ひいては雨に見舞われ、撮影は数時間かかった。しかし、このような天気のほうがむしろ変化のある映像が撮れるので、結構楽しめた。下はその映像だ。
Vimeoからソースファイルをダウンロードできるので、是非4Kモニターでチェックしてみて欲しい。
ワークフロー
RAWフッテージの実力を確認するため、色とコントラストを強調したグレーディングをしてみた。まず、C200のCRMファイル(動画のRAWファイル)をApple ProRes 4444に変換し、簡単に使えるフォーマットとする。現在、CRMを扱えるアプリケーションは限られているため、DaVinci Resolve 14 Betaで変換し、Adobe Premiere Proで編集した。キヤノンは独自の変換ツールを使用することをレコメンドしており、これにより、ログガンマプロファイルの1つを選択することができる。キヤノンによれば、Adobeのアプリケーションも近い将来、ネイティブにCRMをサポートする予定とのこと。
変換に要した時間は、DaVinci Resolve 14 BetaとキヤノンのCinema RAWデベロップメントツールのどちらも、8コアのMac Proで16分のフッテージで30分弱かかった。
RAWの画質
最初は、本格的なRAWの画質は期待していなかった。RAWでの記録は今まで簡単ではなかったのに、このカメラの使い勝手があまりに簡単だったからだ。従来のRAW記録では、カメラが大きかったり、高価であったり、使い難かったり、NDフィルターが内蔵されていなかったりと、簡単ではなかったのだ。しかしC200は驚くほど簡単にRAW記録ができてしまう。 C200は12ビットでRAWファイルを記録するが、画質は有機的で、しっとりとしており、美しい映像だが、特筆できるのはシャドー部分に情報が多いことだ。
上のショットは大きな木の下から撮ったもので、撮影時は太陽光が大変明るい状況だった。このような状況では、下の方の葉は非常に暗くなり、太陽光が濡れた葉に当たった部分は非常に明るくなるはずだ。そこで多少露出を上げて、影のある葉を明るくしたが、問題はないようだった。露出オーバーと露出不足の状況を見るため、露出を変えて複数のショットを撮った。グレーディングでは、どちらのショットも、特にノイズが気になることはなかった。
これには感動した。露出に苦労すること無く、文字通り、思い通り撮影することができたのだ。映像(ネイティブISO 800で撮影)はとても美しく、ノイズは極めて少ない。また、グレーディングはとても快適に行うことができた。もちろん、有機的な表現を残しながら、色を簡単にコントロールできた。センサーはほとんど以前のCanon Cカメラセンサーと同じで、同社のシネマカメラのユーザーは、従来のカメラ同等の、低ノイズで有機的な映像を期待できる。 Arri ALEXAのダイナミックレンジには及ばないかもしれないが、C200のRAW画質は優秀で、プロフェッショナルなハイエンドの映画制作にも十分耐えられるだろう。
RAWファイルの大きさ
これは興味のあるところだろう。新しいCinema RAW Lightフォーマットは従来のRAWフォーマットの1/3~1/5のファイル容量を実現している。その結果、記録メディアは独自のものではなく、安価なCFastカードを採用することができた。
今回のテストでは、トランセンドの128GB CFast 2.0カードを使用し、4K/24pで撮影している。これで16分の記録が可能だ。
今回は、この16分の映像ファイルを、AppleのProRes 4444にトランスコードしたが、Adobe PremiereがCRMをネイティブでサポートすれば、トランスコードの必要は無い。ちなみに、トランスコード後のProRes4444ファイルは134GBになった。Premiereでサポートされれば、トランスコードによる無駄なディスク容量を節約することもできる。
これと比較して、ソニーのα7S IIはUHDを100 Mbpsで記録するため、同じ16分の録画時間だと12 GBのストレージ容量で済んでしまう。
またパナソニックEVA1では、最大400 Mbpsで4Kを記録するので、16分間の映像ファイルは、48GBとなる。
即ち、キヤノンC200で10ビットのRAW記録をする場合、ソニーのα7S IIで8ビット記録する場合の、約10倍のストレージ容量が必要となる。同様に、パナソニックEVA1の約2〜3倍だ。これは、多くのユーザーにとって、ストレージコストが嵩む他、ポストプロダクションでの処理に労力と時間が必要で、必ずしも理想的とはいえない。
150MbpsのMP4の実力
これについては、低スペックの8ビットコーデックということから、あまり期待はしていなかった。 150 Mbpsという圧縮レベルは、今日ではミラーレスカメラでもその程度の性能を持っている。しかし、理論的にはそうなのだが、C200のmp4は悪くない。他の同等のカメラの8ビット画質と比べても、遜色ないのだ。
以下はC200のRAWとmp4を比較したJPEG画像だ。
C200は、8ビット空間からより正確なカラー情報を得るため、他のCカメラと同様に2つのグリーンチャネルを使用している。Mp4の画質には、驚かされることになった。確かに12ビットRAWの画質には及ばないが、放送やドキュメンタリーでは使えるだろう。画質はRAWに比べ、ややキレに欠ける。
120fpsでのスローモーションも非常に良い。HDでしか収録時できないが、センサー全画面読み出しからダウンサンプリングされており、その画質はかなり良い。ただ、一見すると非常に良いのだが、スローモーション映像ではエイリアスやモアレが多少気になる。細い線やコントラストのある領域で目立つ。
なお、キヤノンは2018年第1四半期に無料のファームウェアアップグレードでXF-AVCビデオフォーマットを提供すると発表している。
C200レビュー
ここまではRAWをはじめとする画質について説明してきた。しかし、多くのカメラマンにとって、使い勝手と信頼性は、カメラを評価する上でのもう一つの重要な側面だ。C200に関して言うと、キヤノンの経験が生かされているように見受けられる。結果としては、カメラマンの体の一部となり、信頼して使用できるカメラとなっている。
オートフォーカス
C200のオートフォーカスは納得できる仕上がりになっている。キヤノンのデュアルピクセルオートフォーカスは他のシネマカメラに対する優位点で、実に使える機能だ。今回のレビューにはキヤノンの100mm F/2.8 Lマクロレンズを使ったが、タッチスクリーンをタップすると、その場所にフォーカスすることができる。
フォーカスアシスト
これはC300MarkIIで導入された機能だ。フォーカスアシスタントは、被写体にピントが合っていることを表示するが、合っていない場合は、フォーカスが被写体の前か後ろにあるかを示す3つの矢印が表示される。これは非常に便利で、フォーカシングのために画面の拡大が必要になることはほとんど無い。
組み立て品質
C200はコンパクトかつ軽量で、頑丈にできている。C300Mark IIの重量は約1.8kg、C100Mark IIの重量は1.1kgに対して、C200の重量は1.4kgとなっている。このカメラがRAWを撮影できることを考えると、1.4kgの重さは妥当だろう。トップハンドルは以前のCカメラよりも改良され、着脱機構が追加されており、また、非常に堅牢に感じられる。
操作しやすいメニュー
キヤノンのカメラのメニュー構造は使いやすいが、C200も例外ではない。直感的で簡単に使用できる。
10stopのNDフィルター
C200には、2つの別々の回転フィルターが装備されている。これにより、最大10stopのNDフィルタリングが可能になる。これは非常に便利で、外部のフィルター無しに明るい日光下でも浅い被写界深度で撮影することができる。またバランスのとれた内蔵NDフィルターなので、色ずれの心配はない。
ビルトインコネクター
従来のCカメラと異なり、C200にはXLRコネクタが内蔵されている。これは大きな改善点で、HDMIとSDIコネクタがあり、適切な位置に用意されている。巷で噂されていたが、どちらもCanon Logを出力していることが確認できた。それぞれの出力にLUTを適用することもできる。 なお、C200にはCanon Log 2はサポートされていない。
Proxy記録
RAWでのワークフロー用に、2K/35Mbpsのプロキシ録画が用意されている。プロキシはSDカードに記録される。なお、SDカードスロットは2つ用意されている。
バッテリー持続時間
カメラの電源を切らないで撮影したが、バッテリーは2時間以上持続した。
C200で気になったポイント
C200は総じて良いカメラと言えるが、幾つかの不満点も残っている。
タッチスクリーン
モニター部全体の作りは以前のCカメラよりもはるかに向上している。従来のモデルでは、頼りなく、収納にも適さないものもあった。C200のスクリーンアタッチメントは強固にできており、かつ、画面を必要な場所に移動したり、取り外すことも簡単にできる。しかし、使っているうちに、正面のネジが緩んでモニターが横向きに傾き始めた。以前のCカメラでも同様のことがあったが、改善してほしい点だ。
また、画面があまり明るくないということも指摘しておきたい。直射日光が当たると画面が見えなくなり、EVFを追加する必要があった。後にわかったことだが、明るさはメニューでコントロールできたようだ。どの程度明るくなるのか確認しなかったので、別の機会にテストしたい。しかし、恐らくsmallHDのFOCUSのように、使い勝手のよい最新の高輝度スクリーンのような明るさまでは無理だろう。なお、サードパーティー製の外部モニターを使用すると、C200のタッチスクリーン機能は失われる。 同社の EVF-V70はおそらく理想的な解決策になるだろうが、ちょっと高価だ。
ProResはサポートされていない
Apple ProResコーデックは、できれば欲しいところだ。これはC700でサポートされているが、別の価格帯のカメラだ。 Apple ProRes HQ 10-bitがサポートされるなら、C200は理想のカメラになるだろう。価格については、多くのユーザーにとって納得できるものではないだろうか。
スローモーションでのエリアシング
前述したように、120pのスローモーション映像でエイリアシングやモアレが確認できた。解像度とルックは素晴らしいのだが、エイリアシングは残念なところだ。ただ、殆どの場合、注意しなければ分からないレベルではある。
まとめ
キヤノンC200を気に入らないというユーザーは少ないだろう。 $ 6,000で、シネマカメラのユーザーが望む殆どのことが実現されている。 12ビット4K RAWの画質は、「RAW」という言葉の期待を裏切らないものだ。しかも、非圧縮RAWの1/3のファイルサイズで、CFast 2.0カードに記録することができる。これはRAWでの撮影を身近にする。 Adobe Premiereは数ヶ月後にこのCinema RAW Lightフォーマットをネイティブサポートする予定で、他の主要なアプリケーションも追ってサポートするだろう。パソコンが十分強力であれば、トランスコードする必要は無い。
また、強力なオートフォーカスに加え、顔検出、便利なフォーカスアシスト機能、良好な低照度特性、最大10stopのNDフィルター、人間工学に基づいたボディ形状など、多くの優位性を持っている。正直なところ、このカメラの価格は安すぎるのではないかと思うほどだ。ソニーのα7S IIは、およそ3,000ドルだが、100Mbps/8ビットの小型ミラーレスカメラであり、C200とは異なるカテゴリーだ。 ただ、URSA Mini Proは6,000ドルだ。C200と比較してCinemaDNG RAWの他にProResのフォーマットも持っていることは、C200に対して優位点と言える。
今まで、キヤノンのカメラの価格は、競合機種に比べ多少高価であったように思う。しかし、C200は価格に関しては従来と方針が違うようだ。 今後のソニー、パナソニック、ブラックマジックデザインなど競合メーカーの出方が興味深い。
C200は今予約販売中で、2017年8月初めに出荷を開始する予定。
C200とC200B
ボディのみのバージョン(C200B)の日本での価格はフジヤエービックで721,440 円。 LCD、トップハンドル、マイクアタッチメント、サイドハンドル、EVFが必要な場合は、”C200”が用意されており、価格は894,240 円となっている。 メディアに関しては、RAW記録には SanDisk 128GB Cfast 2.0または SanDisk 256GB Cfast 2.0カードが推奨されており、MP4記録には SanDisk 64GB U3 SDカードが推奨されている。
フジヤエービックのショップサイト