先週はキヤノンC500MarkIIのラボテストを行ったが、キヤノンC300MarkIIIのプリプロモデルが来たので、早速ラボテストを行った。
今回ラボテストを行ったC300 MarkIIIは試作ユニットであることに注意いただきたい。使用されたファームウェアは1.8.1.1。正規品では数値が多少変わる可能性がある。しかしこのカメラには相当興味が湧くので、テストすることにした。
先日C500MarkIIをラボテストしたが、C300MarkIIIは本体、メニュー構造、およびコーデックを含む多くの機能はC500MarkIIと共有していることが分かる。テストでは、内部RAW記録モードも動作しているが、10ビットXF-AVC、4K DCIで行うことを決定した。
C300 Mark IIIの新開発Super 35mmセンサーは、Dual Gain Output (DGO)技術を使用することにより、非常に優れたダイナミックレンジを持つとされている。
ISO800でダイナミックレンジテスト
ネイティブISOに関する情報がなかったため、テストではISO800を選択した。上記のように、4096×2160の解像度、25fpsで、Canon Log2 / C.Gamut(カラーマトリックス「ニュートラル」、ノイズリダクション「オフ」)の10ビット内部All-I XF-AVCコーデックを使用している。
キヤノンは、デュアルゲインアーキテクチャが24〜60fpsで動作すると発表しているため、25、60、75、120fpsでテストした。
下が25 -60 fpsの結果。下の図1を参照いただきたい。S/N比2で12.8stopが計測された。これは、毎秒60fps時でも同じで、Super 35mmセンサーとしては非常に優れた数値だ。ちなみに、BMPCC6Kは11.9stop、FUJIFILM X-T3 は11.2stopだった。
Xyla 21チャートの波形プロットは、この結果を裏付けている。下の図2を参照いただきたい。
75fpsではDGOが機能しないため、数値は異なってくる。画像はノイズが多くなり、ノイズフロアの上に約12stopが識別される。(図3)
IMATESTで確認し、11.6stopとなった(S/N比2、下のグラフの中間値)。それでも、非常に良い数値と言える。
ローリングシャッター特性
いつものように、ローリングシャッターのテストには300 Hzのストロボライトを使用する。
25 fpsおよび60 fpsで15.6 msのローリングシャッターが測定された。(図5)
これは優れてはいるが、傑出した値ではない。X-T3など他のSuper35mmカメラでも同じレベルで、BMPCC6Kは19.8msだ。
C300 Mark IIIは4096×2160で120fpsも可能だ。しかし60 fpsより高いフレームレートでは15.6msの数値は出ない。
75fps以上ではDGOが動作していないので、ローリングシャッターも7.7msに低下してしまう。(図6)
ラティチュードテスト
ラティチュードテストとは、露出オーバーまたは露出アンダーで撮影し、基準露出に戻した場合の、ディテールと色をどの程度保持するかのテストだ。
テストでは、基準露出レベルは、ISO800でF4の基本露出、25fps DCI 4Kのシャッター角度360°としている。露出レベルは、人の顔の波形でチェックし、最大60%の輝度値としている。この時の白い紙は65%。
次に、露出を180°、90°、45°、22.5°に下げ、最後に11.25°のシャッター角度にする。露出が5stop低下する。画像は、DaVinci Resolve Studioを使用してゼロ露出レベルに戻す。
ダイナミックレンジの結果が良好だったので、このテストも良い結果が出ることが期待できる。
まず、下は基準露出レベルの画像。
下が3stop露出アンダーの画像(図8)。
図8で見るべきことはそれほど多くないだろう。 C300 Mark IIIはこの程度の露出不足は問題ではない。画像が多少グレーになり、ノイズの赤い点が現れ始めている。(頬の下の影のところ)。この程度なら、ポストでノイズリダクションを多少かけるだけで簡単に取り除くことができる。
4stop露出アンダーでも状況はあまり変わらない。(図9)影のノイズは増加するが、ノイズリダクションによって非常に効果的に削除できる。フィルムの粒子のように、ノイズは細かく分散されており、見た目は非常に良好だ。
最後に5stop露出アンダーで、ノイズは増加するが、これもノイズリダクションで効果的に削除できる。空間NRはまだ必要ないが、シャドウ領域には強い赤みを帯びたノイズがあり、ノイズ削減後に赤い部分が出る。
ただし、これまでにテストされたカメラのような水平/垂直の線は出ない。この線は、動画像では非常に煩わしく、簡単に削除することはできないので好都合だ。
図11は、DaVinci Resolveで3フレームのノイズリダクションを使用した例。
まとめ
キヤノンは革新的な新しいカメラを次々と発表し、人々を驚かせている。C500 Mark IIフルフレームカメラは優秀なテスト結果だったが、Super 35mmセンサーのC300 Mark IIIもこれに負けていない。優れたテスト結果で、Super 35mmセンサー搭載のカメラでは、筆頭格だ。ただし、もちろんARRI Alexaは別格だが。
したがって、ARRI Alexa、C500 Mark IIに続き3位の好結果となった。
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