キヤノンは、4Kで24.6ストップのダイナミックレンジを実現することができる新しい1インチ裏面照射型センサーを開発したと発表した。ちなみに、最近のカメラのダイナミックレンジは12~15ストップで、ARRI ALEXA 35は17ストップと謳っている。人間の目のダイナミックレンジは21ストップと言われている。
キヤノンは、いつも人目を引く見出しで私たちを驚かせる。例えば、2015年に400万ISOが可能な低照度センサーを発表したときもそうだった。この新しいセンサーは主にモニター用途を想定しているが、おそらくこれは将来を垣間見ることができるだろう。
キヤノンは、4K解像度30fpsで24ストップ以上のダイナミックレンジを実現する新境地を開いた1.0インチの裏面照射型CMOSセンサーを開発した。そのために、センサーを736のエリアに分割し、それぞれに最適な露出設定を決定する新しいアプローチを開発した。
従来のウルトラHDRは、複数の露出を撮影し、通常はカメラ内で1枚の画像に合成する手法に頼っていた。この手法では、動くものを扱うときにモーションアーチファクトやぼかしが発生することがある。
そこでキヤノンが開発したのが、センサー内の736の領域ごとに独立して、輝度レベルに応じた最適な露光時間を設定する方法だ。
“キヤノンの新型イメージセンサーは、複数のCPUと専用の処理回路を搭載し、1コマに割り当てられた時間内に736個の領域すべての露出条件を素早く同時に指定することが可能です。”
– Canon Inc. on January 12th, 2023
これは、LEDテレビのローカルディミングと似ていて、1つの光源ではなく、複数の独立したゾーンで画像の異なる部分を照らすというもの。テレビでは、ローカルディミングによって、暗い部分をグレーアウトさせることなく、明るいオブジェクトを同じ画像内で見えるようにすることができる。
センサーを分割することで、厳しい照明条件下でも画像のすべての部分に適切な露光を行うことができる。また、データ処理量を削減し、約60fps、画素数約1260万画素の高速撮像を可能にする。
テストでは、30fpsで148dB、60fpsで142dBのダイナミックレンジを達成することができた。数学的には、それぞれ24.58ストップ、23.58ストップに相当する。
残念ながら、このセンサーは産業用やセキュリティ用に設計されたものだ。しかし、このような超HDRがシネマカメラに搭載される日が来ないとは限らない。
この素晴らしい新センサーの詳細は、キヤノンのサイトにあるニュースリリースで読める。
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