キヤノンEOS R5のスペックを見て、筆者の最初の感想は「誰が8K RAWを必要とするのか?」だった。しかし、ラボテストを経てこの考えは変わった。
8月の初めに、EOS R5がCineDオフィスに到着し、このときはファームウェアバージョンは1.0だった。初期に報告されたオーバーヒートの問題にもかかわらず、その仕様は非常にすばらしいため、早速ラボテストを行うことにした。
ラボでは、ローリングシャッター、ダイナミックレンジ、低照度のテストを行った。案の定、テストの早い段階でオーバーヒートアラームが表示されたため、これはかなりの困難を伴うことが予想された。結果、ラボテストは15分の待機時間を挟みながら繰り返す必要があった。
この事実はかなりがっかりさせられたが、テスト結果とは別の話だ。
ダイナミックレンジのテスト方法についてはこちらを参照いただきたい。
ローリングシャッター
EOS R5センサーの高解像度にもかかわらず、非常に優れたローリングシャッター性能が確認された。
高品質の読み出しモード(8K RAW、8K H265 all-Iおよび4K DCI)のフルフレームDCIモード(17:9)時のローリングシャッターは15.5msとなった。これは、これまでにフルフレームセンサーカメラで測定した最良の結果であり、キヤノンのC500 Mark II(15.8ms)よりわずかに優れている。
フルフレームの25fpsと50fps(4K DCI)のローリングシャッターは9.6msで同じだったため、明らかにバックグラウンドでサブサンプリング行われている。
ISO400でのダイナミックレンジ
H265モードのテストでは、8K RAWの見え方が異なり、コントラストが低くなっていることに気付いた(Canon LOGを使用している)。
そこで、8K RAWモードと各H265モード(8K DCIおよび4K DCI)の両方をテストした。12ビット8K RAWでは、クリッピング輝度値は80%だが、10ビットH265は100%になる。
また、8Kファイルを直接IMATESTで使用することはできなかった。最初にDaVinci Resolve(16.2.5)でファイルを作成し、TIFFをエクスポートしてから分析を行う必要があったためだ。残念ながら、8GBのメモリを搭載したGTX980グラフィックカードは、ネイティブ解像度で「GPUエラー」となった。そのため、6Kにダウンスケールして機能させる必要があった。
当然のことながら、ネイティブ解像度で8K RAWファイルを扱う場合は、非常に優れたハードウェアが必要となる。
まず8K RAWに関して、下が波形プロットだ(図3)。以下に示すように、ノイズフロアの上の約12のストップを識別できる。一般に、8K RAWファイルは非常にノイズが多い。それにもかかわらず、13番目、さらには14番目のストップがノイズ内に確認できる。
8K RAWは非常にノイズが多いため、IMATEST(図4)は、既に10.3ストップで信号対雑音(SNR)しきい値2を示している。
ただし、16.8ストップのパッチ範囲が特定され、左側の中央のグラフ(図4)のSNR = 1(青い曲線;「低」)を超えて、少なくとも3〜4のストップがノイズ内に存在する。これらはポストでノイズリダクションを使用して「発掘」できる。したがって、SNR = 2の10.3ストップ値が低いにもかかわらず、ポストでファイルを処理できれば、はるかに広いダイナミックレンジを得ることができる。
RAWファイルはセンサーからのそのままの信号なので、信号処理(ノイズフィルタリングなど)は行われていない。
ISO400でH265 8Kモードをテストでは、ノイズフロアはほぼ遮断されているように見え、IMATESTによって計算されるのは10ストップのみとなる。
ここで何が起こっているのかを考えてみよう。ここでも、IMATESTダイナミックレンジの結果の中央のグラフを見ると、この動作ははっきりと見える(図6)。上の図4、図6ではノイズ信号がなくなっている。
4K DCIモード(高品質、フルフレーム)の場合でも、わずかに良い結果が得られるが、同様で、 SNR = 2で10.8ストップとなった。(下の図7を参照)(おそらく8Kから4Kへのスケーリングのため)。
結果から言えば、8K RAWでは、非常にノイズが多いが、ポストプロダクションで時間をかけることができるなら、SNR = 2で10.3ストップを超えるストップを得ることができる。 しかし4K DCIモードでH265を使用する場合、10.8ストップ(SNR = 2)でやや良い結果が得られるが、12番目のストップ以降はすべて使用できない。
露出不足テスト
いつものように、モデルを撮影し、顔が最大で露出しているスタジオシーンをアレンジします。 25fps 8K RAW ISO400のF4で360°(または1/25秒)のシャッター角度で60%の輝度値。
EOS R5のダイナミックレンジテスト中にすでに気付いたが、8K RAWファイルはより平坦な画となりでストップが多いため、8K RAWでのこのテストは期待できる。
次に、シャッター角度を180度、90度、45度、22.5度、11.25度に減らすことで、シーンを連続的に露出アンダーにしていき、5ストップまで露出アンダーにする。
DaVinci Resolve 16.2.5を使用し、ゼロ露出ベースラインに戻す。 RAWを使用する場合は、Resolveの「露出」スライダーを動かすだけで良いので楽だ。しかしかなり奇妙なことに、これは+3ストップまでしか機能しなかった。スライダーは+4と+5まで動くが、変化は無かった。したがって、+ 4と+5の場合は、リフティング、ガンマ、ゲインコントロール(それぞれのシーンの波形を参照)を使用して手動で画像を調整する必要があった。
また、Resolveの2K DCIタイムラインでこれらの露出不足テストを実行した。(そうしないと、ノイズ低減を使用すると、980 GTX GPUでエラーが発生した)。その結果、8K RAWファイルはすでに2Kにスケーリングされているため、DaVinci Resolveの高度なスケーリングアルゴリズムだけでノイズを大幅に改善できる。
下がゼロベースラインの画像。
3ストップ露出不足の画像をゼロに戻す(図9)。画像はまだ使用可能だが、強いノイズが既に存在している。これはノイズ低減により改善できる。図10を参照(3フレーム、しきい値30、および空間しきい値8)。
4ストップ露出不足では、強いノイズが発生する(図11)。また、画像のディテールに影響を及ぼし、ノイズの削減は役に立たない。
参考までに、図12は5ストップ露出アンダーの画像をゼロに戻したもの。色とディテールはかなりよく維持されているが、ノイズが酷い。
また、参考のため、5ストップ露出不足の画像で時間的(4フレーム、しきい値= 35)および空間的(しきい値= 10)のノイズ低減を試みた。図13を参照。画像のディテールは完全に消えている。
要約すると、露出3アンダーが使用可能な範囲と言える。
ラボテストのまとめ
ラボの結果をまとめる。高解像度の読み取りにも関わらず、EOS R5のローリングシャッター特性は15.5msで優れており、これまでに測定したフルフレームカメラで最高だった。
H265 C-LogモードでのEOS R5のダイナミックレンジは、フルフレームセンサーとしては低いものだった。8K RAWでのみ、ノイズに埋もれたストップを「発掘」することで輝かしい結果になる。
露出不足テストでは、8K RAWを使用したが、パフォーマンスは平均的なもの。露出3アンダーは可能だが、それ以上では難しい。小型のセンサーカメラでも、BMPCC6Kなどでは更に良い結果を提供する。詳細はこちら。
8K RAWはパソコンに非常に大きな負担をかける。最新のハードウェアでないと、再生中に重大な問題が発生し、カラーグレーディングもままならない。
また、ラボテスト中のオーバーヒートは大きな問題だった。測定するためにセットアップするだけで、カメラを稼働させたままにしすると、ビデオを録画することができない場合があった。
購入する場合は、自分の使い方を考えて判断すると良いだろう。
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