大きなカメラでの撮影には、大きな三脚が必要だ。しかし大型の三脚システムは往々にして高価だ。しかし手頃な価格のソリューションも存在する。 Cartoni Focusの三脚シリーズがそれだ。Alexa Miniの撮影で、このCartoni Focus 22を使ってみたのでレポートしよう。
筆者は”Sachtlerユーザー”だった。これは、多くのプロが三脚システムに期待する滑らかさを与えてくれるよく知られたブランドだ。しかし、最近、これまでにない低予算の撮影をしなければならなくなった。このため低価格で大きなカメラに対応する三脚が必要になったのだ。そこで今回のプロジェクトではCartoni Focus 22を使うことにし、このレビューを書くことにした。 Cartoniはよく知られイタリアのブランドで、以前の記事もある。
この三脚は他の三脚の1/3の価格だが、決して作りがチープなものではない。品質は確かで、十分使用に耐えるものだ。
Cartoni Focus 22のレビュー
今回の撮影に使用した主なカメラは、Arri Alexa Miniだ。レンズはP + S Technik 35-70mm 1.5Xアナモルフィックズームレンズを装着している。3週間の撮影で、流星や紅葉を撮る、屋外での撮影で使用した。
ところで今回の撮影はクリスチャンの映像制作者グループからの依頼で、スピリチュアルなドラマの撮影だが、SF映画のような内容が含まれている。そのようなことから、撮影はいつもとは全く異なる、型破りなものだった。
仕様
我々が使用したモデルはCartoni Focus 22 SDS カーボンシステムというもの。これは、100mmボールを持ち、3kg〜22 kgの耐荷重で、 Focus 22フルードヘッドが搭載されている。 Cartoni Focus 22には、SachtlerのFSBやVideoシリーズのヘッドに採用されているSachtler Touch-and-Go 16プレートが使われている。脚は人間工学に基づいた設計で軽量化を図ったクイックロックデザインが採用されているため素早くセットでき、小規模なチームでの撮影に活躍する。
Cartoni Focus 22 SDSカーボンシステムは、自動的に開くミッドスプレッダー、取り外し可能なゴム足、伸縮可能なハンドルバーを備えている。重量級三脚システムで必要なものは全て装備されている。
フィールドでの使用感
この三脚の人間工学に基づいた設計は様々な場面で私たちを助けてくれた。プロの撮影では、本当の意味でカメラマンをサポートしてくれる機材が望まれる。時間がかかるということはコストがかかるということだからだ。これは大規模なプロダクションだけでなく、我々のような小さなグループにも言えることだ。
Cartoni Focus 22は滑らかなパンとチルトを提供してくれた。 Focus 22のヘッドは、他のトップブランドの三脚と同じように、非常に滑らかなショットを約束してくれる。もしCartoniに心配があるなら、それは無用なことだろう。もちろん使用に耐えない三脚システムは数多くあるが、Cartoniの三脚システムはそのようなものには当たらない。フルードヘッド技術はかなり確かなものと思える。
機能性
Focus 22には、実に素晴らしい機能が装備されている。まず、連続したカウンターバランスだ。段階的な設定ではなく、連続的に設定することができる。しばらく使っていると、これは病みつきになる。後に段階的なカウンターバランスのフルードヘッドを使うと、チープなものに感じたほどだ。これは、正確にコントロールできるクリックレスの絞りリングと同じような感覚だ。
しかし、 Focus 22の限界も見つけてしまった。アナモフィックレンズを装着しなかったり、軽いカメラを乗せると、うまく対応できない場合があった。フルードヘッドの最も軽いドラッグ設定でも、私の好みには強すぎた。すなわち、この三脚は重量のあるカメラではうまく動作するが、軽い荷重ではうまく動作しないのだ。この点は高価な三脚に比べて劣る点だ。重量級の三脚の場合は、とにかく重い反発力が期待される。しかし、フルードヘッドのドラッグの強さは、個人の好みにより幅広く設定できるべきだ。軽い設定に慣れている場合は、購入する前にチェックする必要があるだろう。
別の機会にCartoniにこの件について尋ねると、同社の返答は、これがフルードヘッドの構造の限界とのことだった。しかし、ユーザーが軽いドラッグを望むなら、カスタマイズもできるとのことだったので付記しておこう。
Cartoni Focus 22 SDSカーボンシステムのもう一つの利点はクイックロックの脚だ。私は、段階的に脚をを延ばすのではなく、一気に伸ばしたり、折り畳んだりするのに慣れたのだが、期待したほどうまくいかなかった。撮影中に何度か、脚が途中で止まってしまったのだ。この現象は、今回使った個体特有のものだったのかもしれない。
システムは非常に軽量で、足とヘッドを合わせても7.90 kgだ。また三脚を持ち運ぶのに便利なハンドルもついている。もちろん、自発光のバブル水準器も埋め込まれている。なお、下の写真のように90度のチルトができるのも特筆できる。
まとめ
この三脚システムは他よりも手頃な価格だが、その理由は他にも幾つかある。ドラッグ設定が重いことは既に述べたが、使用していると細かい部分で欠点が見えてくる。ハンドルバーがやや硬かったり、クイックロックが完全に伸びなかったり、またはプラスチック製のスプレッダーが邪魔になるといったことだ。プラスチックを使っているところなどがやはり気になる。プロ使用に耐えるスーパースムーズなフルードヘッドながら、随所にコストダウンの跡がうかがわれるのも、安価に作るゆえだろう。
気になる三脚ブランドがいくつかあるが、もう一度使うとするならCartoniを選択するだろう。軽いカメラを使用する場合は、Focusシリーズの他のサイズを選択することもできる。
完璧な三脚が望みなら、これは最適なものではないが、安価で無段階のカウンターバランスを備えた、高性能で信頼性の高いフルードヘッドシステムを持つCartoni Focus 22は一考に値する三脚システムだろう。
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