今年も年末恒例の記事で、「カメラ・オブ・ザ・イヤー2024」の候補と受賞モデルを詳しく紹介する。
2024年も現在のテクノロジーの頂点を象徴する新しいカメラの数々が発表された。正直なところ、ビデオカメラやミラーレスカメラに関して、評価に値しないようなカメラを見つけるのは難しい。現在のところ、全体的な画質、解像度、機能(例えばオートフォーカスなど)、価格は、数年前には夢見ることしかできなかったレベルにある。今や新製品に感動するためには、センサー技術の飛躍か、とびぬけた機能が必要だろう。しかしそれでも、2024年に発表されたカメラ(カメラ・オブ・ザ・イヤーの投票結果はこちら)を見ると、これらのカメラは、その独自性やコストパフォーマンスの高さにおいて、感動を与えてくれた。
ビデオカメラ
ブラックマジックデザイン(PYXIS、 Ursa Cine LF 12K)、ソニー(BURANO)、キヤノン(EOS C400、 EOS C80)、RED(V-Raptor X)がこのカテゴリーの候補だ。どのカメラにも長所や限界はあるが、最終的に、ブラックマジックデザイン Ursa Cine LF 12K、キヤノン EOS C80、そしてキヤノン EOS C400をこの部門の年間最優秀カメラに選んだ。
ブラックマジックデザイン Ursa Cine LF 12K
この新しいカメラは、ブラックマジックデザインが映画制作用カメラ市場のハイエンドに対応しながらも、よりリーズナブルn価格で提供するというコミットメントを表している。ブラックマジックデザインの過去の製品の中には、信頼性の問題や、同じタイプのカメラ間での性能の一貫性の欠如に苦しんだものがあったことは否定できない。しかし、このカメラに関しては、全く別物だ。レンタル業者が、問題を引き起こす可能性のあるカメラに慎重なのは当然で、彼らにとって一番必要なのは、そのようなクレームを避けることだ。
さて、我々の意見では、Ursa Cine LF 12Kの導入により、ブラックマジックデザインは2つの重要な目標を達成しようとしているようだ: 1)ARRIやREDのような大規模なプロダクションの分野を支配してきた既存のプレイヤーに、今回は信頼できる撮影ツールと一種の「未来的なエコシステム」ワークフローで挑戦する。2) 中規模のプロダクションが、より手頃な価格で「ハイエンド」カメラを購入できるようにする。
もしまだのようであれば、我々がこのカメラで行ったラボテストを参照し、我々が感銘を受けた理由を見ていただきたい。
このカメラには多くのボタンと複数のスクリーンがある。これらのボタンの多くが同じ機能(アサイン可能)を持つとしても、少し圧倒される。また、このカメラは独自の専用内蔵メディアモジュールに記録することを忘れないでほしい。この巨大な8TBストレージは、12Kオープンゲートで最高80フレーム/秒の記録でも妥協することはないが、全体的なワークフローではアキレス腱になるかもしれない。モジュール自体にはパソコンへの接続端子がないため、現状では素材をコピーするには、カメラ(転送速度が制限されるためお勧めできない)かブラックマジックのメディアドックを使用する必要があり、ポータブルとは言い難い。このMedia Dockには3つのスロットがあり、現場で素材の転送ができるような1スロットのデバイスが早く登場することを期待している。
ブラックマジックデザインには、ポストプロダクションやクラウドワークフローと連携した、包括的な映像制作ツールを実現したことに対し祝福を送りたい 。
キヤノンEOS C80とEOS C400
2024年はキヤノンの復活の年となった。長い沈黙の後、いくつかの新製品が市場に登場した。しかし、最大の驚きは、キヤノンの新しい価格戦略だった。シネマカメラにプレミアム価格をつけることで知られるメーカーから、多くの人が納得できる価格で素晴らしい撮影ツールを提供するメーカーになったのだ。
ここCineDでは、キャノンのカメラのどれを受賞とするか最後まで悩んだ。EOS C400とEOS C80は、どちらも独立系映像クリエイターにとって非常に堅実な製品だ。最終的に、この2つのカメラのどちらかを選ぶことができなかったのは、キヤノンがこれらのカメラを異なるユーザー層向けにカスタマイズすることに成功した証と言える。
以下は、私(ジョニー)がEOS C80を選んだ理由であり、以下はニノがEOS C400を選んだ理由である。
EOS C80:手頃な価格の一人撮影に適したフルサイズ6K RAW記録カメラ(ジョニーの見解)
EOS C400より2,500ドル安いEOS C80は機能は少ないが、それでも妥協していると感じることなく、必要なものは全て揃っている。
このカメラは、キヤノンが得意とする暖かみのある色彩、良好なAF/低照度性能、内蔵RAW記録機能を備えている。これに6Kフルフレームセンサー(EOS C400にも搭載)を搭載し、EOS C70に欠けていた機能を追加した。
お時間があれば、レビューとミニドキュメンタリーをご覧いただきたい。
キヤノンEOS C400:汎用性の高さは競合他社を圧倒している(ニノの見解)
EOS C400は、C80と同じセンサーと同様の機能を搭載しているが、コネクターが多く、マルチカメラで他のカメラと一緒に使用する場合、より汎用性の高いカメラとなっている(ゲンロック、2つ目のSDIポート、リターンポート、レンズコントロール用12ピンポート)。その上、最大60fpsの6K撮影が可能で(C80は30pのみ)、SDカードの代わりにCFexpress Type Bカードに記録できる。
両カメラを正面から見ると、間違いなくC400の方がC80よりも小さく、おそらく撮影される人にとって威圧感はないだろう。また、重さも200グラムしか違わない。
基本的に、C400はFX6やFX9のようなソニーの製品と競合しているが、数千ドル安い価格で、キヤノンの6K RAW内部記録、トリプルベースISOカメラが手に入る。ソニーのRAW動画内蔵カメラで最も近いのはBURANOだが、これは3倍以上する。
キヤノンには、コストパフォーマンスに優れた名機を世に送り出したことに祝福を送りたい。そして、さらに使いやすい専用ファインダーの発売を期待する。
ミラーレス/ハイブリッドカメラ
この業界の 主流は、ミラーレス/ハイブリッドカメラであり続けている。これらのカメラは非常に高性能ながら非常に手頃な価格になってきている。また、これらのカメラは、この業界の変化を反映している。重くてかさばるカメラはほとんど過去のものとなり、さらに重要なのは、職業の統合が進んだことだ。好むと好まざるとにかかわらず、この業界では写真と動画両方の多機能スキルを習得することが、生き残るために不可欠になっている。このような機会を最大限に生かすには、この種のカメラを使うのが適している。このカテゴリーでは、富士フイルム(GFX100S II, X100 VI, X-T50, X-M5 )、キヤノン(EOS R1, EOS R5 Mark II )、ライカ(SL3 )、ニコン(Z6 III )、ソニー(α1 II, a9 III, ZV-E10 II )、パナソニック(LUMIX S9, LUMIX GH7 )があった。ご覧の通り、ほとんどのメーカーが異なるセンサーサイズや機能性を提供している。
この部門の次点はソニーa9 IIIとニコンZ6 IIIだ。ソニーのカメラは、センサー技術の飛躍的な進歩を象徴している。何と言っても、ミラーレスカメラで初めてグローバルシャッターを採用したのだ。我々の懸念の1つは、この種のセンサーのためにカメラのダイナミックレンジが低下することだったが、我々のラボテストではその逆が証明された。ソニーa9 IIIは、ダイナミックレンジの点で、ビデオモードではこれまでで最高のαカメラだ。
そして、ニコンは非常に伝統的で、業界の変化への対応が遅いと多くの人に思われていたが、今年初め、驚くべき動きとしてREDデジタルシネマを買収した。この買収がこの業界に与える影響の全容はまだわからないが、今のところ、ニコンは堅実なミラーレスカメラを提供し続けている。ニコンはZ9(我々のカメラ・オブ・ザ・イヤー2021)でスタートしたが、より手頃で使いやすいZ8へと進化した。今年、ニコンはZ6 IIIを発表し、再び我々の注目を集めた。このカメラはZ8と比較するとフォトグラファーには制限が多いが、動画に関しては、Z8より2,197~1,000ドルほど安い価格でありながら、素晴らしい性能を発揮する。ProResとN-RAWを内蔵し、6Kから60p(および4K/120p)まで記録可能で、様々なレベルのクリエイターをターゲットにした素晴らしい多用途コンパクトカメラだ。
それでは、この部門の受賞モデルに話を進めよう…
パナソニックLUMIX GH7(フルボディサイズ)
パナソニックが今年リリースした主要カメラは、LUMIX S9と LUMIX GH7の2機種のみだ。ここでは、LUMIX GH7に焦点をあてたい。この記事をお読みになる頃には、長期にわたるGH7のレビューが発表されていると思うが、まだ完成していないとしても、これまでの所見をまとめて紹介したい。GH7が発売されて以来、我々は数多くのプロジェクトでこのカメラを使用してきた。本当に感心したのは、パナソニックがこのカメラに優れたオートフォーカスを実装するのにいかに早く追いついたかということだ(最新のフルサイズ機LUMIX S5 IIやLUMIX S5II Xに次ぐ)。また、このカメラの手ぶれ補正機能はベストの部類に入る。
ラボテストでは 、「LUMIX GH7は、マイクロフォーサーズのセンサーサイズを考慮すると、他のカメラとは一線を画している。良いローリングシャッター値を示すだけでなく、ダイナミックレンジの結果も期待を裏切らない。例えば、最近テストされたソニーA9 IIIや キヤノンEOS R5 Cとよく似ている。前述したように、この結果は最近の民生用フルフレームカメラと肩を並べるものだ(少し低い方だが)」としている。(ラボテストはこちら)
話をカメラに戻そう。レビューの一環として、私は日本でミニドキュメンタリーの撮影にこのカメラを使用した(リンクはこちら)。このカメラにはARRIのLogC3ピクチャープロファイル(有料アップデート)で記録するオプションがあるため、パナソニックのV-Logで動作していない場合、映像がどのように見えるかをチェックしたかったのだ。結果は非常に納得のいくものだった。最終的に、V-Logにありがちな全体的に赤く見える肌の色を避けて撮影することができた(少なくとも私の好みとしては)。ARRIのLogC3で撮影する際に忘れてはならないのは、内部でProRes RAWを撮影できないという制約があることだ。
なお、パナソニックはミラーレスカメラメーカーの中でオーディオにこだわっているメーカーの1つでもある。
LUMIX GH7の価格については、少し疑問が残る。2,198ドルという価格は、より大きなセンサーを搭載したカメラに相当する。
パナソニックには、2025年を楽しみにしている。願わくば、パナソニックの老朽化したフラッグシップフルフレームカメラの後継機を見てみたい。
そして、急転直下、最後の受賞モデルへ。
富士フイルムX-M5(コンパクトボディサイズ)
このカメラは驚きだ!すべてのミラーレスカメラが同じサイズ(と性能)で作られているわけではないので、コンパクトカメラにも賞を与えることにした。見栄えの良い動画が撮れて、従来の機能が満載で、どこにでも持って行けて、比較的低価格で、意外な機能を持つカメラ。1,000ドル未満(正確には799ドル)で、富士フイルムの最新機種である X-M5は、これらの条件をすべて満たしている(レビューは近日公開予定)。初めてこのカメラを手にしたとき、その小ささが信じられなかった。信じられないほど小さなカメラサイズと言うことが分かる写真はまだ見つかっていない。さて、このAPS-Cカメラの「キラー機能」は、4:2:2、10ビット、6.2K(最大30p)のオープンゲートで内部撮影できることだ。これに同社の20種類のフィルムシミュレーションルックと、追加グリップなしでクラウド(Frame.ioなど)にクリップを送信できる機能を加えれば完璧だ。もちろん、ビューファインダーがなかったり、記録データレートに制限があるなど、いくつかの制限はあるが、800ドルを切る355gのコンパクトカメラとしては、快挙だと思う。
富士フイルムに祝意をア表したい。これからも性能の限界に挑戦し続け、より多くのカメラのオートフォーカス性能を向上させるファームウェアアップデートを出してほしい。
2024年に発売されたカメラはここまでだ。スマートフォン/アクションカテゴリーにはまだ触れていない。iPhone 16 Proは前モデルに近すぎるし、新しいDJI Osmo Pocket 4はまだ見当たらない。来年は新しく発表されたARRI 265、ブラックマジックデザイン Ursa Cine 17K 65、富士フイルム GFX ETERNA、そしてこれから発表されるであろうニューモデルが楽しみだ。