DJI FPVドローンレビュー
DJIはFPVドローンを発表した。これは、同社初のFPV(First-Person-View:一人称視点)スポーツドローンだ。今回これをレビューするが、主に映像クリエーターの視点からの印象だ。
なおDJI FPVドローンについての発表記事はこちら。この記事では、実際に飛ばしてみたレビューを報告する。
FPVドローンと“メインストリーム”ドローンの違い
DJI MavicやPhantomドローンを通常の「主流」ドローンとすると、FPVドローンの飛行はまったく異なる。FPVは一人称視点の意味で、DJIとしては初のスポーツ飛行、高速飛行を行うドローンだ。そして、これの操縦はゴーグルでのみ行うことができる。
FPVドローンは飛行が難しく、習得するのに時間がかかり、その過程で多くのクラッシュも発生する。ほとんどのFPVドローンは自作で、多くの場合非常に軽量に作られている。(特にCinewhoopドローン)。従って、重いドローンほど破壊的ではないが、高速で飛んでいるため衝突すると事故になる。DJIのFPVドローンは非常に軽量というわけではなく、重量は約800グラムだ。最大20分間飛行できる大きなバッテリーが原因の一つだ。
様々なモードを用意したエントリーレベルFPVドローン
DJI FPVドローンは、筆者のような「普通の」ドローンパイロットがFPVドローンを操縦するには最適なエントリードローンだ。筆者はFPVドローンの初心者だが、このドローンで学ぶことができる。
まず、DJI FPVドローンは通常のドローンと同じように飛行できる。これは他のFPVドローンでは不可能だ。このドローンは「通常」モードに設定すると、Mavicドローンで慣れているすべてのコントロールと動作が可能だ。またこのドローンには、自動帰着、離着陸支援、Nモードで衝突を回避するためのフロントセンサーなどの機能が搭載されている。
「S」モードはMavicドローンでもおなじみのモードに聞こえるかもしれないが、DJI FPVドローンでは、通常の飛行とマニュアルモードとのハイブリッドモードで、多少自由度がある。
そして、Mモードは完全なマニュアルモードで、熟練した場合にのみ使用できる。慣れていないと、すぐにクラッシュするだろう。 FPVコントロールは、通常のドローンコントロールとは大きく異なる。
DJIバーチャルフライトアプリ
DJIは通常のドローンからFPVドローンに挑戦しようとするユーザーのために、DJI Virtual Flightアプリ(Apple App Storeリンク)を導入した。これは基本的に、DJIゴーグルとリモートコントローラーでバーチャルに操縦するもので、実際にドローンをクラッシュさせる心配が無い。ゴーグルをiPhoneに接続するだけで(残念ながら、アプリは現在iOSのみに対応)、ゴーグルとコントローラーを起動すると、実際のコントローラーを使用して、さまざまなモードで「飛行」できる。
FPVドローンをマニュアルで飛行させるのは簡単ではない。しかしバーチャルフライトアプリで安全に飛行をマスターすることができる。
DJI FPVドローン操縦用のDJIゴーグルv2
第一に、Mavicドローンの通常のスマートフォンコントローラーでゴーグルを使用する場合とは多少異なる。これらはVRゴーグルではない。つまり、頭をどのように回しても見た目は変わらない。まるで巨大な映画のスクリーンを見ているようなものだ。Mavicドローンのように電話の着信に気を取られたり、太陽光の下で見難いといったことは無い。
ゴーグルについて改善されたことの1つは、電源ケーブルで接続された外部バッテリーを使用しているということだ。従って、家で充電することを忘れないようにする必要がある。なお、同じ電圧であれば、USB-Cコネクタ付きの他のバッテリーを使用できる。
ゴーグルを使用時にトランスミッションによるドロップアウトは無かったが、テスト時は晴天でそれほど遠くへは飛ばしていない。解像度は最大810p 120fpsで、遅延は非常に短いため、高速で飛ばしても、ほぼリアルタイムで反応する。
スピードと飛行形態
DJI FPVドローンは時速140Kmで飛ぶことができ、Mモードでは時速0から100キロメートルまでわずか2秒で達する。これは今までとは全く別の飛行体験だ。
また、動作も異なる。FPVドローンで一般的な、高速飛行やターンを行うと場合、ドローンは水平を維持しない。スポーツモードと手動モードでは、もちろん、フリップなど自由な飛行を行う。
広い視野
視野は150度と非常に広い。メニューで歪み補正を有効にしない場合、ローターも映り込む。したがって、記録する場合は歪み補正を有効にすることをお勧めするが、ゴーグルビューに表示されるものはオフのままにして、より広いビューで表示できる。
DJIリモートコントローラーと新しいDJIモーションコントローラー
リモコンは、Mavicシリーズから慣れ親しんだものだが、代わりにゴーグルを使用しているため、スマートフォンホルダーはない。リモコンを使用すると、通常モード、スポーツモード、マニュアルモードで飛行できる。マニュアルFPVモードの場合、これらのドローンで一般的なスティックの再センタリングを停止することもできる。繰り返しになるが、操縦に熟練している場合にのみ、マニュアルFPV飛行モードを使用できる。
さらに興味深いのは、新しいモーションコントローラーだ。これはDJI FPVドローンのオプションのアクセサリーだが、非常に直感的にドローンを操縦できる。ノーマルモードとスポーツモードで使用でき、ジャイロスコープで位置を感知する。左に動かすと、ドローンは左に曲がり、右に動かすと、ドローンは右に曲がる。ゴーグルでは、どこに向かっているのかを示す白い円が中央に表示される。トリガーを押すと、押す強さに応じてドローンのスピードが変わる。これは非常に直感的で、文字通り経験を必要としないユーザーに適している。筆者は妻にコントロールを渡したが、彼女はこれまでドローンを飛ばしたことが無かったが、何の問題もなくコントロールできた。
モーションコントローラーは将来のコントローラーか?
モーションコントローラーは、将来的に主流になるだろう。ゴーグルを常に使用できるとは限らないため、スマートフォンと組み合わせることを期待したい。これなら通常のリモコンのように親指で2本のスティックを操作する必要が無い。モーションコントローラーを使用すると、直感的にうまくターンを行うこともできる。ただしリモコンほど用途が広いわけではなく、もちろんマニュアルFPVモードで使用することはできないん。また、真っ直ぐ上下または横向きに飛行することはできないと思うが、問題はそれだけだ。常に進行方向を見ているので、初心者にとってはそれほど危険ではない。
映像クリエーターから見た画質
最後にDJI FPVドローンの画質が映像として使えるかについて。FPVドローンは、Mavicドローンよりも深い画像コントロールを備えているため、標準からD-Cinelikeに変更して、ポストプロダクションでグレーディング可能な「ログのような」画像を取得できる。また、H.264に加え、より効率的で高品質のH.265記録が使用できる。映像は120Mbpsで記録でき、これはH.265だが、現在は60または50pしかサポートしていない。つまり、4Kでは24p、25p、または30pモードはサポートされていない。これらは、映像制作には一般的なフレームレートだが、DJI FPVは映像制作を対象としておらず、超高速の動きをフォローするためだ。シャッタースピード、ISOなどのカメラパラメータを個別に設定できるが、絞りは固定されている。今回はドローン用のNDフィルターを持っていなかったので、自動露出モードで飛行した。テスト映像の露出シフトはお許しいただきたい。
手振れ補正
注意すべき点の1つは、垂直に上または特に下に行くとき、完全に安定しておらず、多少のジッターが見られる。実際、DJIによると、これらの種類のジンバルは高速動作に対応していないため、FPVドローンには3軸ジンバルは付いていない。1軸ジンバルのみだが、これを補うためRockSteadyというDJIの電子手ぶれ補正機構が追加されている。もちろん、これは3軸ジンバルほど優れているわけではないが、十分通用する。FPVドローンには、通常手振れ補正機能は無い。
ただし、ゴーグルの映像にRockSteadyは対応されておらず、記録する映像に適用される。飛行後に再生すると、映像が安定しているのに驚く。
映像制作に使えるか?
映画制作に使うには妥協が必要のように思えるが、このタイプのドローンの動きは、一般的なドローンでは不可能だ。従って、このような映像が必要な場合は有用だ。
しかしこのドローンで真価が発揮されるのは、マニュアルモードで使用する場合のみだ。通常モードで飛行すると、通常のドローンよりも広い画角が得られるが、3軸ジンバルがないために安定性が低下する。マニュアルFPVモードのハードルは高いが、これをマスターすると迫力ある映像が収録できるだろう。