DJI Inspire 2レビュー - Arri Alexaの画質に迫るドローン
DJIのドローンInspire 2が発表され、大きな話題になった。5.2K RAWカメラ、ProRes記録、障害物回避機能、2重のバックアップシステム、ダブルバッテリーなど、多くの機能が手の届く価格で搭載されているのだ。
1週間フィールドでテストし、その後カメラをラボでテストした。このドローンが持つ機能と、カメラの性能をお知らせしよう。搭載されているカメラのLUTとRAWからLOGのコンバーターにも触れているので、こちらも参考にして欲しい。
注意:このビデオを作成する上で、全ての法律に従っている。何人かの視聴者から懸念されたので、フライトの安全性が重要であることを指摘しておきたい。常にドローンを視界に入れておくべきである。ビデオ中で、夜間の飛行の映像は夜明けに撮影しており、人の上や建物や通りの上では飛ばしていない。高速道路はそのわずか横を飛ばしており、真上ではない。また協会の映像ではヤードの上で、人の上ではない。霧に入ると見えなくなるので、自分自身が霧の上か下にいて視野に入れている。また常にリスクを注意深く考慮している。その上で、これらの映像を作成している。
Inspire2は次世代のドローンだ
このビデオレビューは、私が使ったものの中で最も長く、製作にも時間を要した。しかし、使えば使うほど、いかに使い易く、優れたものであるかが分かってきた。Inspire1の後継機として発売されたInspire 2だが、まさに次世代機と呼ぶにふさわしい内容を持っている。Inspire 1のRAW記録機能も好印象のものだったが、Inspire 2のものは更に映画にも適するレベルの映像に仕上がっている。
なお、YouTubeとVimeoの4K映像の圧縮はかなり高圧縮されている。生のファイルを見たい読者の方は、元のファイルをこちらからダウンロードして確認して欲しい。
ビデオを見ていただければ分かりやすいので、ここで詳しく繰り返すのは避けるが、長所と短所をリストしておく。
長所
- X5Sカメラの品質
- 2K の高解像で高品質な画像
- Apple ProRes コーデック搭載
- 全体の構成 (ケース、バッテリー、セットアップ時間、など)
- 25分まで延長された飛行時間
- 安定性の増した飛行で、映像も安定
- 空撮に適した飛行スピード
- SSD ワークフロー
- 安全機構(予備バッテリーシステムとIMU)
- 広い視野角
- 十分使える低照度特性
短所
- ProRes のカラーは常に “none” で、マニュアルで変更しないと使えないルックになる
- 障害物回避機能をONにしていると急に動き、低空飛行で使いにくい
- DJI Go アプリはボタンが近接していたり、小さいボタンもあり、またポップアップも使い難い
- 映像伝送が、800mくらいでしばしば途絶える
- 水平が取れていない場合があるが、これはポストプロダクションで簡単に補正できる
- フォーカシングがまだ甘い。オートフォーカスをタップしても、正しくフォーカスされているかどうかは、撮影後でないと分からない。
DJIがドローンの操作性を改善したのは明らかだ。スマートフォンやタブレットをモニターに使うコントローラーや、自動着陸機能、バッテリーの自動保温機能、2個のバッテリーチャージ機能など、細かい点まで実によく考えられており、特に一人で操縦と撮影を行うのが楽になっている。Inspire 2はこれまでになかった手軽さと安全性を備えている。
上に挙げた短所も将来的にはアップデートされるだろう。最初のInspire 2は、何人かのテスターに出荷されたが、ソフトウエアはまだ初期段階だ。DJIにはフィードバックしており、真剣に検討してくれているようだ。
搭載カメラ - Zenmuse X5S
今回のレビューでは、更に安価なカメラであるZenmuse X4Sが手に入らなかったので、高価な方のZenmuse X5Sのみのレポートとなっている。Zenmuse X4Sについては、Part2でレビューしたい。
Zenmuse X5Sのテスト結果は、ビデオにあるように、極めて良好だったと言える。Arri Alexaの発色と近いばかりでなく、5.2Kの解像感には圧倒されるし、このフレームサイズは特に空撮に適している。とは言うものの、ダイナミックレンジはAlexaほどではないし、カラーもAlexaの方がわずかにスムースで正確というのも事実だ。
知っての通りZenmuse X5Sはマイクロフォーサーズだし、Alexaはsuper35mmだ。モデルのスキントーンのテストは、45mmのオリンパスのレンズを使用しているが、これは35mm換算で60mmに値する。Alexaにはツァイスの50mm CP2 Macroを使用した。
DJIのプロモーションビデオのように、映画全編をドローンで撮るということはないだろうが、豊富なバジェットで製作する映画にもAlexaの映像に混ぜて使うことができるだろう。一人で操作できるほど小さいドローンだが、それほどInspire 2のRAW映像のクオリティは高いと言える。
また、Apple ProResコーデックでの記録も可能だが、これはUHD 4Kに限られる。テストでは、4K RAWよりもProRes 4Kの方が良い結果となった。4K RAWではエリアシングか確認されたためだ。その代り、5.2K RAWで収録して、最終的に4Kにすれば、最高の4K映像が得られる。
ビデオの冒頭に夜景を意図的に入れてみたが、これで低照度特性が分かる。YouTubeでは高圧縮になってしまうので、ノイズが目立ってしまうが、実際は、それほどノイズは無くクリーンな映像だ。従って、Zenmuse X5Sで町の夜景を撮るのは十分可能だろう。今回の映像はISO400で撮影したが、RAWなので後で如何様にも変えられる。
更にテストを継続して行うが、Part2で報告したい。
Inspire RAW to LOG コンバージョン
分析では、Inspire 1と Inspire 2の.cdng RAWのワークフローは以下のものが最も良い結果だった。
After Effectsでの手順
- Adobe After Effects CCを開く
- フォルダをドラッグ&ドロップで.cdng RAWファイルをAfter Effectでプロジェクトに開く
- Camera RAW アプリが開く
- オプション:プリセットタブ(右から2つ目)に行き、cinema5D RAW to LOGプリセット(こちらから入手可能)の一つを選択する
- インポートされた各ショット(.cdngシーケンスのフォルダ)に対し、Camera RAWアプリが開く
- すべてのショットがAfter Effectsにインポートされたら、一番下の“Render Queue”タブにドラッグする
- “Render Queue”タブの中の“Output Module”から該当するコーデックを選択する
- “Output to”内の好みのファイルデスティネーションを選択
- “Render Queue”タブ内の“Render”をクリック
最良の品質を望むなら、Apple ProRes4444、あるいは4444XQコーデックを選択する。スペースをセーブするなら、Apple ProSes 422HQを選択する。
なお、チュートリアルビデオをまもなくアップする予定
Inspire RAW to LOGプリセット
cinema5DでCinemaRAWプリセットを作成した。これはInspire1やInspire2で記録されたcinemaDNG RAWファイルで、フラットLogガンマをArri Alexa Log Cにエミュレートするもの。After Effectsのワークフロー(Step4)で使われているが、Inspireで収録した素材のグレーディングに、Arri Alexaのサードパーティー製LUTを使用できる。
しかし、Inspire2 RAWのカラーは実に素晴らしいものだ。これはInspire1 RAWと同じだが、本当に良いショットを撮りたいなら、このプリセットを使うことをお勧めする。この製作には多くの時間と労力を割いたので、無料ではない。このパッケージにはまた、Log素材(Arri AlexaとInspire RAW to Log)用のC5D instaLUT B1010(.cubeファイル)も含まれている。
こちらから入手可能
After Effectコンバージョンは
- カラーノイズ除去
- レンズデータによる色収差除去、けられ、歪曲の除去
- オリンパス25mmレンズデータは従来より間違いがあり、このレンズで撮られた素材は完全に補正できない。DJIに改善をお願いしたい。
- 補正には長時間を要する場合がある。パソコンにもよるが、少なくとも30分の素材に対し1日くらい必要
DaVinci Resolveでのコンバートも可能だ。こちらなら、処理は早く、良好な結果が得られる。Afer Effectのワークフローは高品質な結果が得られるが、DaVince Resolveでは早く、カラーは近いものになる。
DaVinciの変換では
- 色収差除去、けられ、歪曲の除去はできない
- フラットガンマの作成のみ
- 経験では、ハイライトが多少損なわれる
- After Effectsでの処理よりも20倍ほど高速
DaVinci Resolveでの手順
- DaVinci Resolveを開く(無償ダウンロードはこちら)
- Inspire RAW のショットをブラウズする
- media poolにフォルダをドラッグする
- プロジェクト設定を素材の解像度にセットする(右下のギアマーク→timeline resolution)
- “Edit”タブからショットをタイムラインにドラッグ
- “Color”タブから各ショットを選択し変更
- “Clip”を使ってデコード カラースペース:”BlackMagic Design“
- ガンマ:“Blackmagic Design Film”
- “Highlight Recovery” boxを選択.
- “Deliver” tabにファイルをインポート
Inspire2パッケージ
もしZenmuse X5S 付きのInspire2プレミアムモデルを考えているなら、以下のことをお勧めする。
X5Sパッケージはプロフェッショナルのフライトに必要なほとんどのものを同梱している。ただ、15mmレンズを同梱していないキットもある。このレンズか他のお勧めのMFTレンズのどちらかを選択できる。
ドローンは2個のバッテリーが付属している。このバッテリーで20~25分のフライトが可能。もしさらに長いフライト時間が必要なら、追加バッテリーが必要となる。自分はあと3セットを購入し、全部で8個持っている。これで2~3時間飛ばすことができる。また、もう一つチャージャーと電源アダプターがあれば良いだろう。同梱のものは一度に2個のバッテリーしか充電できなく、充電時間は90分必要。
もしもう一人が操縦に専念するなら、もう一つのリモコンが必要。また、プロペラの予備も、破損に備えて持っておいた方が良いだろう。あまりそのようなことは無いと思うが。
なお、パッケージにはSSDが付属していないので、記録するならこれも購入する必要がある。安く上げるなら、120GBを2個購入すると、これでProRes422HQ 4K UHDで記録できる。5.2Kで撮影するなら、480GBのSSD2個が良いだろう。いずれにしても2個単位で購入しないと、バックアップに時間がかかり、次のフライトまでに時間がかかることになる。もちろん、メディア自体のバックアップとしても有用だ。SSDリーダーも忘れず購入すること。
最小限のパッケージでも$8,000と、思ったより高価だ。DJIがプロモートしている$6,000のパッケージは追加購入品が多くなり、何かREDのカメラを買った時を思い出す。しかし必要なものを考えると、$8,000は妥当な価格だろう。またこのレベルの画質を実現する他のドローンとカメラの価格を考えれば、むしろ安価ではないだろうか。
まとめ
DJI Inspire2は紛れもなく素晴らしいドローンで、競合メーカーの上を行くドローン技術の産物と言える。一人でオペレートするユーザーで、高画質と高機能な撮影を望んでいるなら、Inspire2は最適の製品だろう。もしこれを超えるものがあるとすれば、それはより大きなドローンでAlexaを搭載できるものだ。しかし、それでさえ、解像度はInspire2に引けを取る。これに対抗できるものは、もはやRED Helium 8Kくらいしかないだろう。ただし、まだカラーサイエンスが確立したという話は聞かないが。
5.2Kで撮った4K映像は実に素晴らしい。またProResの搭載は称賛されるべきもので、更にまた、フライトのインテリジェント機能は、様々な撮影スタイルを可能にする。なお、幾つか指摘した改善要求、特にProResのデフォルトカラーとフォーカシングの制限は、是非DJIは検討して欲しい。しかし、全体としては、Inspire2はInspire1から飛躍的に進化したドローンと言える。次に期待したいのは、このカメラを積んだショルダースタイルのカメラだが、当然DJIは予定しているだろう。
その時、他のカメラメーカーはどう対抗するのだろうか?実に興味深い。
Special Thanks
To musicbed.com for providing the song.
Stray Theories – “We Never Left”
www.straytheoriesmusic.com
Skintone model – Ieva Pocytė
Big thanks to Gavin Fürst for his help flying the drone, photos and navigating the city!!!