Adobe はPhotoshopをアップデートし、Depth Blurと呼ばれる新機能を実装した(現在ベータ版)。これは、AIによって写真の被写界深度を浅くする機能だ。
被写体を際立たせる要素は、レンズに大きく影響される。レンズの絞りを絞ると被写界深度は深くなり、背景も含めてフォーカスが来る。また絞りを開ければ被写界深度は浅くなり、背景がぼけて被写体が浮き出る。
レンズの場合、コーティングや使用されるガラスによって画質は大きく異なるが、おそらく最も重要なことは、Tストップで表される明るさだろう。非常に明るいレンズは通常、非常に高価だ。そしてこのようなレンズは美しいボケを生成することができる。
しかしAIはこの常識を翻そうとしている。AdobeのDepth Blurは、例えばf/5.6 で撮影して、後処理でより浅い被写界深度にすることができる。
Adobe Photoshop Depth Blur
FstoppersのAndy Day氏によるレビュー ビデオに見られるように、この新機能は完璧にはほど遠いが、それは確かに写真をAIアルゴリズムにより「より良い」ものに仕立て上げる始まりかもしれない。
パソコンやソフトウェア、あるいはその機能は時間とともに良くなっていくという事実は、今までの例を見れば簡単に理解できる。ただし現在のレベルでは、ゴールデンタイムのドラマに使用できるレベルではない。
ボケの今後
美しいボケを追加することもできるようになるだろう。しかしAdobeのDepth Blurは、本当に使えるレベルまで進化するだろうか?
適当に撮影し、ポストプロダクションで映画のようなルック アンド フィールを追加できるなら、正直ちょっと怖いものがある。筆者は画像処理には興味があるが、その画像が本物なのか、コンピューターで加工されたものなのか、それとも少し手を加えただけなのかを判断するのがますます難しくなっていると思う。
マーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』 (この映画の VFXに関する記事はこちら) では、ロバート・デ・ニーロはかなりのCGI 処理をされているが、筆者の目には、常に100%説得力があるとは限らない。しかし、時間とともに、特に Adobe Photoshop のようなプログラムがAI テクノロジーを主流にするにつれ、すぐにより改良され、より説得力のあるものになるだろう。 AIはトレーニングされて改善され、時間の経過とともに他のアプリケーションもAIの恩恵を受けるようになるだろう。ビデオも同じだ。
最後には、レンズのこのような役割は終わるのだろうか? しばらくは安全だろうと思うが、結局のところヴィンテージレンズの未来はどうなるかわからない。将来は「昔ながらの」方法で写真やビデオを撮影する必要は無いのかもしれない。
カメラとレンズは、単に映像を収録するだけのデバイスになり、AIがポストプロダクションで全ての後処理をしてくれるようになるのかもしれない。カメラに関してはすでにそのような方向に進んでいる。レンズもそれに追随するのだろうか。
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