この記事ではFeelWorldのFW279 7インチLCD搭載モニターをレビューするが、今回はSWITのCM-55c 5.5インチLCDと比較してみる。スペックでは、7 インチ対5.5インチ、2200nit対450nitだが、現実に使ってみると机上では分からない長短が見えてくる.
撮影時の外部モニターの必要性が高まっている。これは外部モニターの性能が上がり、視認性が高まったからでもあるが、カメラの高解像度化に伴い、高精細のモニタが必要とされているからだ。カメラに搭載するフィールドモニターは各社から様々なものが発売されている。価格も様々だ。もちろんコストパフォーマンスは大きな選択の要因だが、Ronin-Sのようなジンバルに搭載する場合は重量や大きさも選択の要素になってくる。 今回比較するFeelWorld FW279とSWIT CM-55cはどちらも300ドルをはるかに下回っている。SWIT CM-55cについてはこちらの記事も参照いただきたい。
FeelWorld FW279は7インチの超高輝度LCDモニター
このモニターは7インチと大きく、2200nitの明るさのため、明るい日中でも視認性に優れている。明るくて大きいのは良いのだが、ジンバルで使用するには大きすぎる。筆者が使用しているRonin-Sは、すでにそれ自体がかなり大きく重く、またモニターも目と近い位置にあるので、7インチのスクリーンは大きすぎる。
SWIT CM-55c の450nitと比較してFeelWorld FW279の2200nitは魅力的だが、実際には450nitのSWIT CM-55cでも十分実用になる。またFeelWorld FW279は確かにはるかに明るいのだが、画面が反射しすぎて直射日光が当たると視認性が落ちてしまう。 SWIT CM-55cには薄いサンシェードが付いており、こちらの方が実用的だ。超高輝度だが反射があるスクリーンより、通常の明るさのモニターにサンシェードを付ける方がはるかに見やすい。
なお、FeelWorld FW279には、サンシェードが付属していない。
映像自体はFeelWorld FW279は見栄えがよく、入力の遅延もほとんどなく、色も正確に見える。明るい環境では、2200nitの明るさは有利で、サンシェードを付ける煩わしさは無いが、前述のように反射は大きなマイナスポイントだ。
ハードウエア
どちらのモニターのシャーシもプラスティッキーだが、かなり軽量にはできている。 SWIT CM-55cをアームに取り付けるときは、プラスチック部を破損しないように注意する必要がある。なお、SWIT CM-55cには1 / 4-20のマウントポイントが2ヵ所(底面に1ヵ所、側面に1ヵ所)あるが、FeelWorld FW279には底面に1ヵ所のみとなっている。
どちらのモニターも入力はHDMIのみ用意されている。(FeelWorld にはSDI In/Outを持つ別のモデルがあるが、300ドルを超える)。 またFeelWorld FW279にはループスルーがあるのに対し、SWIT CM-55cはHDMI入力のみだ。なおFeelWorld FW279にはヘッドフォンジャックに加え、ユニットの裏側にスピーカーも搭載されている。ただカメラのオンボードモニターとして使用する場合は、スピーカーは不要だ。更に音量をゼロにする方法が分かりにくく、しばらく時間がかかった。
SWIT CM-55cはヘッドフォンジャックを装備しているが、スピーカーは搭載していない。カメラの外部モニターとして使うなら、これで十分だ。さらにSWIT CM-55cは、キヤノンLP-E6とソニーNP-Fバッテリーのどちらでも使用できるよう、双方向バッテリーコンパートメントを備えている。
SWIT CM-55cのバッテリーからカメラなど他の機器を充電することもできる。カメラに対応したDCカプラーと、カプラーをモニターに接続するためのケーブルが必要となる。ただし、接続する前にカメラの入力要件を確認する必要がある。
なおSWIT CM-55cの電源ボタンは背面にある。一方FeelWorld FW279ではユニットの上に8つのボタンがあり、そのうちの1つが電源ボタンとなっている。間違って押すと、モニターはシャットダウンする。また、バッテリーがマウントされたままバッグに入れておくと、ボタンが誤って押された場合、バッグの中で電源が入ってしまう。
FeelWorld FW279はソニーのNP-Fバッテリーか、標準のコネクターを介してDC 12Vを給電する。バッテリープレートは交換可能なようだが、これはテストしていない。このモニターの上部には前述の電源スイッチ、4つの矢印ボタン、2つのカスタム機能ボタン、そしてメニューボタンの8つのボタンがある。矢印ボタンはメニューを操作するためのものだが、使いやすいとは言えない。メニュー自体はかなり簡単なものだが、電源ボタンが隣にあり、ボタンを見ないで操作するとすぐに間違って電源を切ってしまう。
FeelWorld FW279は、色温度、明るさ、彩度、赤または緑のゲインなどをカスタマイズできる。ただ、その操作はあまりやりやすいものではない。
また2200nitで明るいのだが、最大の明るさに設定するとバッテリーの消耗が激しい。 Atomos 5200mAh / 38.5Wh NP-Fスタイルのバッテリーで、2時間弱しか持たなかった。
一方SWIT CM-55cは、FeelWorld FW279が18Wであるのに対し、わずか5.5Wしか消費しないため、1個のバッテリーでかなり長時間使用できる。通電するとどちらのユニットも暖かくなるが、FeelWorld FW279はかなり熱くなる場合がある。
SWIT CM-55cには4方向ジョイスティックとボタンがあり、これだけで全ての操作を行う。 SmallHD 500シリーズと似た考え方だ。操作性はこちらの方が優れている。ジョイスティックの隣には、もう一つの1 / 4-20マウントポイントが用意されている。付属のスイベルブラケットを使って、カメラのホットシューにマウントすることができる。
ソフトウエア
ソフトウェアに関しては、FeelWorld FW279のそれは安っぽい。前に述べたように、メニューは基本的なもので、90年代のコンピューターでDOSを操作しているような感じだ。これに比べSWIT CM-55cはもっと直感的な操作ができる。
SWIT CM-55cはSDカードを介してLUTをロードすることができ、これは大きな利点だ。 FeelWorld FW279はSDカードリーダーを搭載しておらず、LUTをサポートしていない。
SWIT CM-55cには、さまざまなカメラ用のLog-> Rec.709プロファイルがプリロードされているが、独自のLUTを選択することもできる。 SmallHD 500シリーズと同様に、さまざまなツールセットを使用してページを作成できる。たとえば、あるページに2.35:1のガイド、ピークと95%のゼブラ、別のページにはLUTだけ、更に別のページに露出チェック用の色を設定できる。ページが設定されたら、ジョイスティックでページをめくることができる。
FeelWorld FW279にもこれらのツールが用意されているが、それぞれの変更ごとにメニューに戻る必要がある。唯一、2つのFキーにピーキングやヒストグラムなど最も一般的なツールを割り当てることができる機能は特筆できる。
主な仕様
以下はそれぞれのモニターの主な仕様。
FeelWorld FW 279
- ディスプレイサイズ:7.0 “/ 17.8 cm
- 画面の解像度:1920 x 1200
- アスペクト比:16:10
- 視野角:水平:160°垂直:160°
- 最大輝度2200 cd / m 2
- コントラスト比:1200:1
- 消費電力:18W @最大輝度
- 外形寸法(幅×高さ×奥行き)180 x 120 x 25 mm
- ビデオフォーマット:DCI 4K(24 fps)/ UHD 4K(最大30 fps)/ 1080 p(最大60 fps)
SWIT CM-55c
- ディスプレイサイズ:5.5 “/ 14 cm
- 画面の解像度:1920×1080
- アスペクト比:16:9(4:3調整可能)
- 視野角:水平:178°。垂直:178°
- 明るさ:450cd / m 2
- コントラスト比:1000:1
- 消費電力:5.5W
- 外形寸法(幅×高さ×奥行き)156 x 78 x 20 mm
- ビデオフォーマット:UHD 4K(最大30 fps)/ 1080 p(最大60 fps)
これら2台のモニターは、スペック的にはそれほど差があるわけではない。必要なものを選択すればよく、超高輝度、軽量、そして比較的安価な屋外用モニターが必要な場合は、FeelWorld FW 279を、LUTが必要な場合はSWIT CM-55cが良いだろう。 なお、SmallHDの7インチモニターは素晴らしい製品だが、その価格はFeelWorld FW 279の7倍高価だ。コストパフォーマンスの面から言えば、どちらのモニターも十分素晴らしい。
FeelWorld FW 279
- ヒストグラム
- ピーキングフォーカスアシスト(フォーカスの合っている画像の一部を赤、緑、青の3色でハイライト表示)
- 偽色/ゼブラ露光
- 9グリッド&センターマーカー
- スキャンモード(アンダースキャン、オーバースキャン)/ズーム(4倍、9倍、16倍)/ピクセル間
- アナモフィックモード(1.3倍、2.0倍、2.0倍)
- セーフエリア(80%、85%、90%、93%、96%、2.35:1)
- 比率マーカー(4:3,13:9,14:9,15:9,16:9,1.85:1,2.35:1)
- マーカー色(赤、緑、青、白、黒)
- チェックフィールド(赤/緑/青/モノ)
- 画像反転(H、V、H / V)
- 画像フリーズ
SWIT CM-55c
- 2倍速4倍速ズームインとパン
- フォーカスアシストと精密調整
- 波形/ベクトル/ヒストグラム
- 20種類以上の3DLUTログアウト
- SDカードによるユーザーDIT 3DLUTインポート
- 2チャンネルHDMIオーディオメーター表示
- スーパーフォールスカラー、ゼブラストライプ、アナモルフィック
- 画像の反転
まとめ
個人的にはSWIT CM-55cをお勧めしたい。軽量で、機能も豊富、安価で、ジンバルでの使用にも最適だ。FeelWorld FW 279は大きいのでジンバルには不向きで、LUTが必要なユーザーには対応できない。筆者はX-T3で撮影するが、常にF-Log記録するため、LUT対応は不可欠だ。
もちろん大きさが必要なユーザーにはFeelWorld FW 279がお勧めだし、HDMIのループスルーはある方が便利だろう。
両方のモニターは決して高級感や高品質感があるわけではないが、これは価格相応というものだろう。高級感を含めすべてを望むならSmallHDが選択肢になる。ただ、カメラの外部モニターはカメラと相応のもので十分だ。そしてミラーレスカメラなら、これらの安価なモニターでも全く問題ない。
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