フォーカルレデューサーの市場は、この10年で爆発的に拡大した。これらのレンズアダプターは、映像クリエーターのカメラ、レンズ、そして構図に対する考え方をも変えた。しかし、すべての新しいものがそうであるように、良い面もあればそうでない面もある。フォーカルレデューサーとは何か、それは何をするものか、そしてなぜキヤノンはフォーカルレデューサーを作ることにしたのか。今回は、そんなフォーカルレデューサーの魅力をご紹介しよう。
フォーカルレデューサーは、テレコンバーターの逆バージョンだ。テレコンバーターがレンズの見かけ上の焦点距離を長くするものであるのに対し、フォーカルレデューサーはその名の通り、見かけ上の焦点距離を短くする。即ち虫眼鏡のようなもので、大きなセンサーサイズ用に設計されたレンズによって作られたイメージサークルを、小さなセンサーに対応するように縮小する。
フォーカルレデューサーの概要
すべてのレンズは、円形の画像を生成する。これをイメージサークルと呼ぶ。通常、このイメージサークルは、フレームを覆う程度の大きさしかない。しかし、フィルムのサイズが変わり、センサーが開発されると、撮像素子とイメージサークルのミスマッチが問題になった。フォーカルレデューサーやテレコンバーターは、このミスマッチを利用して、イメージサークルと撮影媒体のフレームサイズを一致させるものだ。
そしてフォーカルレデューサーは画像を広くするだけでなく、より明るくシャープにすることができる。その理由は下のCVPのビデオを見ればわかる。
フォーカルレデューサーは、古いレンズではフラップや回転するシャッターのために確保されていたスペースを利用することで、これまでお蔵入りしていたレンズに新たな命を吹き込んでいる。
キヤノンがシェアを拡大
2020年末、キヤノンは「キヤノンマウントアダプター EF-EOS R 0.71x」を発売した。36mm×24mmのセンサー(通称:フルサイズセンサー)用に作られたEFマウントレンズを、より小さなSuper35mmセンサーを搭載したキヤノンRFマウントカメラに適応させる0.71倍のフォーカルレデューサーだ。フォーカルレデューサーを製造しているメーカーは数多くあったが、大手メーカーが加わるのは初めてのことだった。フォーカルレデューサーが広く使われるようになったのは、Metabones社が市場に参入してからだ。「スピードブースター」という言葉を最初に作ったのも同社だ。この名称は、フォーカルレデューサーの代名詞となっている。
キヤノンの製品が599.99ドルで販売されているのに対し、Metabonesは同じアダプターとフォーカルレデューサーの組み合わせを479ドルで提供しており、他にも無数のレンズとマウントの組み合わせから選ぶことができる。ほとんどのフォーカルアダプターや通常のアダプターはデータのやり取りができないが、Metabonesとキヤノンのものは、カメラとレンズの間の完全なコミュニケーションを維持している。また、キヤノンのアダプターは、シネマカメラEOS C70用に特別に設計されており、オプションのスプリットロッキングカラーを使って確実に取り付けることができる。
その他のブランド
Kinefinityは同社のカメラ専用のフォーカルレデューサーを提供しているが、他のメーカーは様々な予算とユニークなカメラセンサーの組み合わせでフォーカルレデューサーを提供している。
- Metabones – フォーカルレデューサーのグ老舗で、アマチュア向けの幅広い品揃えがある。
- Kipon – 中判用のオプションが充実している。中判映画撮影に関する記事を参照。
- ABT Cine – DMC2のEF/PLフォーカルレデューサー。
- LucAdapters – ブラックマジックデザインのカメラ用のノンアダプターフォーカルレデューサー。
- Viltrox、Mitakon Zhongyi、Commlite、Vello – 予算に応じた製品を提供。
これらのメーカーは、さまざまな価格帯のフォーカルレデューサーを提供している。100ドル以下で購入できるものから、1,000ドル以上する特殊な製品もある。
適応可能なツール
フォーカルレデューサーは、技術移行の問題を解決するソリューションだった。しかし、実際に使用しているのは、ひとつのレンズを複数のカメラで使用するユーザーにとって不可欠なツールとなっている。フォーカルレデューサーには制限があるが、複雑になったレンズとカメラの関係に柔軟性をもたらしている。
ほぼ四半期ごとに新しいカメラが発売されているので、それに対応するのはユーザーにとってもレンズメーカーにとっても大変なことだ。しかし、スピードブースター、フォーカルレデューサー、マジックブースター、ターボブースターなどが続々と発売されており、それらのギャップを埋めるための市場も常に存在している。