これは、富士フイルムのミディアムフォーマットカメラGFX 100Sに関するRoss Weinberg氏によるゲスト投稿(記事はこちら)。氏はコンテンツクリエーターで、短編映画を作成している。このレビューは、ビデオ機能だけでなく、主にGFX100Sの写真機能についてレビューしている。
私は、Nat Geo Student Expeditionsで写真を教え、ナショナルジオグラフィックのLindblad Expeditionsでドキュメンタリーや短いプロモーション動画を制作している。主に一人か、アシスタントと一緒に仕事をしている。
GFX100Sをレビューするために1週間使用してみたが、普通に撮っていても素晴らしい画像が撮影できるカメラだ。
このレポートはこのカメラの良さを宣伝するものではなく、このカメラが普通の写真家が購入するのに意味があるかどうかを見たものだ。筆者は数年ごとに新しいカメラを購入するので、このカメラが欲しいかどうかというよりも、このカメラが必要かどうかを考える。さまざまな状況で、しっかりしたビデオや写真を撮影できるカメラが必要だ。そこで、このカメラを1週間使ってみた。
柔軟な撮影ができるか?
少し前まで、中判カメラは選択肢の外だった。高価すぎ、大きすぎ、壊れやすく、スタジオの外ではあまり柔軟性がなかった。しかし、数年前、東京で旅行の仕事をしたとき、友人がこのカメラを持っていた。 これには興味を持った。
中判カメラは近年急速に進化した。私は自分自身がターゲットユーザーであることに気づいた。 GFX 100Sは、このカメラが最終的にその大型センサーによる超現実的な映像とプロの写真家のニーズがリンクすると感じた。そして、このカメラをチェックすることにした。
- 小型軽量。現在のカメラバッグに入れることができる。
- IBIS。ほとんどが手持ちで撮影している。
- 確実なオートフォーカスとフォーカストラッキング
- 連写機能
- 4Kビデオ録画
- 10,000ドルを超えない価格。
これまでのところ、このような特性はすべて小さなセンサーのカメラでのみ可能だった。しかしより大きなセンサーを使いたい。このカメラは、そのような要求に応えてくれる可能性がある。
小型軽量
まず、サイズが従来のフルフレームDSLRとあまり変わらないことに気づく。
次に適切なサイズの上部ディスプレイだ。カメラがオフの場合でも、どの角度からでも設定を読み取ることができる。次のショットへの準備が即座にできる。
GFX 100Sの手振れ補正機能は素晴らしく、その効果は絶大だ。また起動も早く、すぐに撮影できる。
カメラは手になじみ、グリップは一日中持っていても疲れない。私の手は大きい方なので、うまくフィットした。カメラの重さは、数時間撮影しても問題ではなかった。キヤノン5Dとほぼ同じ重量で約900グラムだ。特に親指のグリップ感が素晴らしい。
欠点は、ファンクションボタンを何度も押す必要があること。反対に、シャッターの横にあるファンクションボタンはボディと同じ高さで、特に手袋をしている場合は操作しずらい。しかし、多分使っているうちに慣れるだろう。
このカメラはビデオ機能も搭載している。Micro HDMI(Type-D)、USB-C 3.2 Gen1、3.5mm外部マイクジャック、3.5mmヘッドフォンジャック、2.5mmリモートリリースジャック、DC入力との接続など豊富に用意されている。ビデオ機能の詳細については後述する。
なおGFX 100Sを使った7日間の間、そのサイズについて意識することは無かった。
被写界深度
ミディアムセンサーのボケを試すため、レンズを開放近くにして、最も近い焦点距離でテストした。 F2.8の非常に浅い被写界深度は注目に値するものだった。
被写体両方の目に焦点を合わせることの難しさは現実的だった。右目または左目の優先フォーカス機能を使った。
ISO2500 63mmF2.8 1/30. Image credit: Ross Weinberg Right eye is in focus left eye not so much..
しかし、すべての画像はとてもリアルに見えた。被写体の目にズームインするとき、IBISが新たに搭載された102メガピクセル BSI CMOSセンサー(GFX100と同じ)の実力が分かる。
63mm ISO 1600 F4. Image Credit: Ross Weinberg 63mm 100ISO F8 1/600. Image Credit: Ross Weinberg Outstanding clarity at 300%. Image Credit: Ross Weinberg
IBIS(ボディ内手振れ補正機能)
IBISにより、照明状況が変化しても、露出優先で撮り続けることができた。 1/5から1/15秒でもまだブレずに撮影できる。フルフレームやマイクロフォーサーズよりも鮮明だ。
At 1/5 of a second. ISO1250 F8. Image Credit: Ross Weinberg Same shot at 100%. Image Credit: Ross Weinberg
しかし手持ちでISOを3200に上げても、思ったほど鮮明さが失われないことに気づいた。画質を管理する上でのノイズに悩む可能性は少なくなるだろう。
このセンサーのダイナミックレンジも印象的だった。スペック以上に、もう1、2ストップダイナミックレンジが広く感じる。より多くの情報は常にプラスだが、真っ暗だと思っていたところの情報も得ることができる。
16bit、14bit?
平らで単調な黒い平面では、14ビットまたは16ビット記録のおかげで、色調のグラデーションブレンドはシルクのように滑らかで、不要な効果やバンディングはほとんどない。私はフォトショップで画像を加工することはしないので、14ビットと16ビットの違いはほとんど分からない。
Image credit: Ross Weinberg Detail of same photo. Image credit: Ross Weinberg
フィルムシミュレーション
最初の画像から、少し暖かくてぼんやりと感じ始めた。これは主に色と関係がある。画像処理で何も失わなかったので、とても鮮やかな画像が得られた。 通常はRAWで撮影していて、プリセットでは撮らないが、富士フイルムのカラーフィルムシミュレーションをチェックしてみた。
ETERNA Bleach Bypass. Image credit: Ross Weinberg ETERNA Cinema. Image credit: Ross Weinberg CLASSIC Neg. Image credit: Ross Weinberg NOSTALGIC Neg. Image credit: Ross Weinberg PRO Neg Std. Image credit: Ross Weinberg PRO Neg Hi. Image credit: Ross Weinberg CLASSIC Chrome. Image credit: Ross Weinberg ASTIA Soft. Image credit: Ross Weinberg PROVIA Std. Image credit: Ross Weinberg VELVIA Vivid. Image credit: Ross Weinberg
連写機能
GFX100Sは5fpsの連写が可能だ。現在の連写速度と比べるとはるかに下回っているが、これは野生動物やリアリティを記録するカメラではない。そのことがわかっていれば、このカメラで撮影をするのは快適だ。なお、1秒間に5枚連写する場合、約300MBで記録する。マイクロフォーサーズやフルフレームでは、2倍または3倍の量の画像を撮影できる。このような比較はこのカメラでは無意味だが、富士フイルムのプロモーションビデオには、オートバイやスノーボーダーなど速いアクションが使われているため、あえて言及しておく。
オートフォーカス
さて、このカメラと小さなセンサーのカメラで、最も大きな違いが出るのがオートフォーカスだ。このカメラのオートフォーカスは時々遅れ、平らな面、暗い場所、または開放近くで被写界深度が大きい場合、フォーカスポイントにロックするのに問題があった。ただし、このような大きなセンサーなので、ある程度理解はできる。またラージフォーマットセンサーではこれはある程度当たり前なのだろう。フォーカスエリアを小さくし、オートフォーカスを使うコツが必要だ。私はまた、マニュアル操作をより頻繁に使用した。それにより問題は解決したが、実際の仕事では効率が落ちる。
また、いくつかの奇妙なエラーが発生した(下記参照)。このエラーは、特にカメラを下に傾けたときに出現し、他の同社のモデルでも出るようだ。
ある時、カメラが完全にフリーズし、バッテリーを取り出さなければならなかった。このクラッシュの後、カードはカメラで読み取れなくなったが、幸運にも、カードからファイルをダウンロードすると、1つの画像を除いてすべて無事だった。
後処理と実用性
現在、これを書いている時点で、Lightroomは100Sの.RAFファイルに対応していない。私はMacを使用しているので、Notepad ++ハックを使用することはできない。富士フイルムのXRAWスタジオではカメラを接続してファイルを変換できるが、残念ながらすでにカメラは返却してしまっている。写真の半数がまだRAWで、編集や変換ができなかったが、ソフトウェアが対応するのを待つしかない。
Image credit: Ross Weinberg Jules in the sun. Image credit: Ross Weinberg
フォトグラファーはカメラで撮影している時間よりも、デスクでディスプレイを見ている時間の方が長い。少なくとも私にとってはそうだ。しかもファイルはどんどん大きくなる。今や64GBカードでは足らず、12TBの外付けドライブでもどんどん残り容量が無くなっていく。特にRAWではこの現象は目立つ。たぶん、これは富士フイルムのフィルムシミュレーションを使えば、緩和されるのかもしれない。
これらの大きなファイルを処理するために、jpgを使用してフォトエディタで読み込むことが多くなった。
ビデオ
このレビューは主に写真撮影に焦点を当てているが、ビデオ機能についても簡単に説明しておく。全体として、画質はビデオでも同じで、見事な映画のような映像を撮影できる。 (GFX100のレビューはこちら。画質は同じ)。
HDMIでAtomos NinjaVモニターレコーダーに12ビットのProRes RAW 4K / 30pビデオを記録できる。今回はこれを持っていなかったので、4096×2160 25p / 4:2:2/10ビットで撮影した。
IBISは、立ち止まっての手持ち撮影では、確実に滑らかになる。 IBISによる揺れや過度の補正が目立つことは無かったが、ジンバルなどを付けづに被写体をカメラが追跡する場合のテストもやってみたい。RAWでの撮影や更なる手振れ補正に関しては、まだまだ進化して欲しいところだが、現在、このサイズのカメラでRAW撮影できる世界に住んでいること自体素晴らしいことだ。
解像度:
- 4096×2160 (30p/ 25p/ 24p/ 23.98p)
- 3840×2160 (30p/ 25p/ 24p/ 23.98p)
- 2048×1080 (60p/ 50p/ 30p/ 25p/ 24p/ 23.98p)
- 1920×1080 (60p/ 50p/ 30p/ 25p/ 24p/ 23.98p)
動画ファイルフォーマット:
- MOV (MPEG-4 AVC / H.264, HEVC / H.265; Audio: Linear PCM / Stereo sound 24bit / 48KHz sampling)
ビデオ撮影で気になったのは、4K/30pまでしか撮影できないという事実だ。60p以上でも撮れるようになることを期待したい。
購入する価値はあるか?
GFX 100Sは、非常に柔軟性があり、しっかりとした撮影機能を備えた、優れた写真用ハイエンドカメラだ。写真がメインで動画も撮ることができるので、静止画を中心に仕事をし、ビデオの仕事もたまに入ってくるなら、このカメラは適しているだろう。
ただし私が今このカメラを購入するのを躊躇している主な理由は、実際にはカメラの問題ではなく、大きなファイル、後処理の増加、そしてAFの現実だ。また4K/30pどまりであることも一つの要因ではある。レンズも必要で、GF 80mmに2299ドル、 GF 32-64mm、予備バッテリー2個、デジタルカメラ録画キット(699ドル)も必要になる。トータルで12,000ドル程度だ。
Links: Ross Weinberg’s Website | FUJIFILM Website