富士フイルムがGFX100を発表 - ファーストインプレッション
富士フイルムがGFX 100ミラーレスデジタルカメラを正式に発表した。4Kビデオが撮影でき、オートフォーカス、IBIS(In Body Image Stabilization:ボディ内手振れ補正)、10ビットの内部ビデオ記録が可能な、100メガピクセルのラージフォーマットセンサーカメラだ。
富士フイルムは、2018年9月、ドイツのケルンで開催されたフォトキナで、2019年前半に新しいラージフォーマットセンサーセンサーカメラを投入することを発表した。同社の目的は手頃な価格で高品質の写真やビデオを撮影できるカメラを開発することだった。ただ「手頃な価格」というのは人それぞれで、他のカメラに対し3倍も高価なこのカメラは、一部の人にとっては安価に見えても、そのように感じられない人もいる。また、このカメラはビデオの撮影を中心に作られたものはないので、ビデオを撮るユーザーにとっては尚更かもしれない。しかしGFX 100は、プロのフォトグラファーのみならず、映像クリエーターのニーズも満たすためにゼロから開発されたのも事実で、ビデオユーザーにとっても十分検討に値する製品だ。
この記事における注意事項
今回は約12時間プロトタイプモデルを使ってみることができた。その結果をレポートしたい。ただし、試用したのはプロトタイプで、多くの機能はまだ搭載されていないし、調整がされていない。この点をご理解いただきたい。
- 上のビデオの画質は最終的なものではない。オートフォーカスシステムとIBISは微調整されていない。
- これは第一印象のレポートであり、レビューではない。
- バッテリーの数が限られていたため、低照度下での撮影はできなかった。
- 低照度特性とダイナミックレンジのテストは後日行いたい。
GFX 100のビデオ機能
GFX 100は、様々な新しい技術が採用されている。カメラの心臓部は、新しく開発された裏面照射型の102メガピクセル、43.8 x 32.9 CMOSイメージセンサー(35 mmフルフレームセンサーの約1.7倍)だ。その後ろには、「X-Processor 4」画像処理エンジン(X-T3と同じもの)が搭載されている。位相検出オートフォーカスシステムは、イメージセンサーの100%をカバーし、高速で正確なトラッキングを可能にしている。 5軸IBIS(ボディ内手振れ補正)はゼロから開発された(後述)。その結果、最高4096×2160の解像度で最大30フレーム/秒、オールイントラ、10ビット、4:2:0、高速SDカードへのH265内部記録できる。記録メディアスロットはデュアルSDカードに対応。さらに、4Kビデオモードでも記録時間は無制限で、更に画像はトリミングされず、センサーの全画素が使用される。 ただし、HD 120fpsのようなハイフレームレートの撮影はサポートされていない。またETERNAフィルムシミュレーションピクチャープロファイルも用意されており、制作ニーズに合わせて、F-LogやHLGとともに柔軟なルックを得ることができる。 加えてHDMI からは4:2:2出力が可能だ。
GFX 100の概要
近年の富士フイルムの方向性は、X-T3やX-T30 APS-Cセンサーサイズのカメラの先はフルフレームカメラではない、と明確に語られている。その代わり、同社はラージフォーマットセンサーカメラの開発を進め、他社との差異化を図るとしていた。GFX 100の横43.8mm×縦32.9mmセンサーサイズは、従来のフルフレームサイズ(36 x 24 mm)と比べて1.7倍の大きさ。 ARRI ALEXA LFは”LF:ラージフォーマット”と名付けられているが、そのセンサーサイズは36.70 x 25.54 mmに過ぎない。
ただし、ビデオを撮影するために100メガピクセルやラージフォーマットセンサーが本当に必要かという議論もある。このフォーマットやビデオ機能、そして価格は提示されたばかりで、その答えは今後ユーザーが実際にカメラを使用し判断することになるだろう。
富士フイルムは既にGFX 50SとGFX 50Rも発売しているが、これらの動画撮影はFHDまでで、4Kでの撮影はできなかった。GFX100は初のラージフォーマット4Kモデルだが、今後はビデオ撮影用の機能が更に充実したラージフォーマットセンサーカメラが開発され、意外に早く、さらに手頃な価格で発売されるかもしれない。
実際に使ってみて
初期のプロトタイプではあったが約12時間の撮影に十分応えてくれた。純粋な画質の観点からすると、GFX100は非常に説得力のある画像と言える。即ちクリーンで解像感があり、強い「アイデンティティ」を持っている。ラボでテストするのはまだ早いが、実感ではハイライトのロールオフは非常に優秀で、画像の明暗分の表現力は素晴らしい。上記のサンプル画像はISO 800(ネイティブ)のF-Logで撮影し、最初にREC 709で補正し、Lutify me LUTで色補正した。また画質とともに興味深いのはIBISだ。確かにまだ100%機能していないのだが、その可能性に期待できるものだ。最適に調整された製品版が楽しみな機能だ。位相検出オートフォーカスシステムについても同様で、現段階では最適化されていなかったが、高速で正確なのが実感できた。バッテリーの持ちも良く、数時間カメラを動作させることができたが、この評価については更に長時間の撮影が必要だろう。
さて、人間工学的な観点から見たデザインに関しては、筆者の個人的な好みから言うと、少し複雑だ。縦位置グリップがボディと一体になっているのは、ビデオ撮影に関してはボディサイズが大きくなるだけであまりメリットは無い。
なお、メニューが完成していなかったので、ボタンを自分の好きなようにアサインすることはできなかった。一方、手の小さな筆者でもホールド感はよく、バランスも悪くなかった。なおレンズは GF23mmF4R LM WRとGF32-64mmF4 R LM WRレンズを使った。TL1 EVF(5.76百万ドット)は非常に鮮明で明るく、タッチスクリーンの液晶画面も美しい。また、新たにLCDトップパネルも搭載されている。これは、慣れが必要だが使いやすそうだ。 LCDの機能は変更可能で、「情報」と「バーチャルダイヤルモード」を選択できる。更にサブLCDが背面LCDのすぐ下に搭載されている。
オーディオに関しては、「標準的な接続性」で、X-T3と同じオーディオメニューを備えている。
まとめ
明確な結論を出すには時期尚早だが、GFX 100は多くの新技術を搭載した注目に値するカメラだ。製品版を手にするのが待ち遠しい。
最後にcinema5D では8か月間、同社の協力のもと、GFX 100の開発を追ってきた。間もなくその2部構成のミニドキュメンタリーを公開する予定だ。ご期待いただきたい。
GFX 100は2019年6月末に約1万ドル(国内の実勢税込価格は130万円強)で発売予定。
上記のビデオは、GFX 100プリプロダクションモデルで、4K DCI、24p、H265、All Intra、400Mbpsで撮影されている。 Adobe Premiere CC(最新版)で編集し、Lutifyでグレーディングしている。
音楽はMusicVineを使用。コードC5D25で音楽ライセンスを25%割引される(1回のみ)。
富士フイルムのWebサイトはこちら。