富士フイルム X-T2レビュー – 4Kミラーレス ファーストインプレッション
富士フイルムは海外でも良く知られたフォトカメラ、レンズメーカーで、業務用ビデオでも良く知られた会社だ。その富士フィルムから、初の4Kビデオが収録できるミラーレスカメラ X-T2 が発表された。先に投稿した、富士フイルムの渡邊淳氏へのインタビューがあるが、このカメラのビデオ機能がいかに本気で取り組まれたものかが分かる。そしてX-T2を見れば、多くのユーザーの意見が取り入れられていることに気付くだろう。
2016年7月の東京。この時期の暑さと湿度は相当なものだ。この暑さの中、X-T2を持って、テスト撮影に出たが、実は内心このカメラがどのような映像を見せてくれるのかわくわくしていたので、暑さもそれほど気にならない。
今回借用したカメラはまだベータバージョンのファームだ。今回使って見て気になった点は、既に開発チームは認識しているので、少なからずリリースバージョンで、あるいはその後に改善されるだろう。
ところで、先のインタビューで感激したことを、一言お知らせしておこう。それは、富士フイルムはユーザーの意見を真摯に聞いてくれる会社だということだ。ユーザーが求める機能があれば、耳を傾け、検討し、ハードウエアが許す限り対応してくれるだろう。
お借りしたテスト機はX-T2とXF 16-55mm f/2.8の組み合わせだった。このAPS-Cミラーレスカメラは、H.264/100Mbpsの4K映像を本体内収録する。なお、カメラにもレンズにも手振れ機能が入っていないので、ドキュメンタリーを撮るには、この組み合わせは必ずしも最適ではないということを最初に言っておこう。やはり、多少の細かい手振れが出てしまう。その意味では XF 18-55mm f/2.8-4 がお勧めだ。このレンズは内蔵の手振れ機能を搭載している上、より安価で画質的にも申し分ない。(XF18-55mm f/2.8-4はズームレンズキットでカメラに同梱されている)
X-T2(ベータバージョン)で気付いた点
優位点(順不同)
- ワールドワイド仕様。24pはもちろん、25pも選択可能。HDでは60pまで対応できる。
- F-log 4:2:2/8bitをHDMI出力でき、外部レコーダーで収録できる。
- 高画質なEVF
- 高画質で縦横にチルトするLCDディスプレイ
- 独立したビデオRECボタンが無くし、フォト用のシャッターをビデオ録画に使用している。ビデオ収録時に静止画を撮らないなら、こちらの方が理に適っている。ただ、他の用途では、そうでないかもしれない。自分の場合はこの方が良いので、優位点に挙げておく。
- 長時間の撮影だったが、カメラが熱くなることなく、もちろんシャットダウンすることも無かった。最終版では、更に長時間の撮影をして試してみたい。
- ローリングシャッター現象はHD 50/60pでは良くコントロールされていたが、4K/24pでは他とあまり変わらない結果だった。ラボテストでもチェックしてみたい。
- 外部マイクを接続すれば、音声のクオリティも問題ない。
- 十分なバッテリー持続時間。合計3つのバッテリー(本体にひとつ、別売のパワーブースターグリップ VPB-XT2 に2個収納)で丸1日の撮影が問題なくできた。
- VPB-XT2で急速充電ができる。
考慮点(順不同)
- 標準レンズと組み合わせた場合、レンズと干渉するので、短いフォト用の三脚プレートしか装着できない。パワーブースターグリップ VPB-XT2 を取り付けるとこの問題は解決できる。
- XF16-55mm f/2.8とVPB-XT2を装着時、バランスが左側に寄ってしまう。XF18-55mm f/2.8-4なら改善されるかもしれない。
- アイカップラバー部がが硬く、また取り外せないので、他のものと交換できない。日中撮影する場合、光が漏れ入ってしまう。
- VPB-XT2のヘッドフォンジャックのプラスチックカバーが硬くて開けづらい。
- ISOとシャッターダイヤルの初期設定が「ロック解除:センターボタンが押されていない状態」となっている。センターボタンを押すと初めてロックされる。初期設定はロックされた状態で、センターボタンを押すとロックが解除される方が良いと思う。
- マニュアル時、フォーカス確認のための画面拡大機能が無い
- 今のところ、記録中にISO変更ができない。
- 今のところ、記録中にホワイトバランスの変更ができない。
- 4K収録中に多少エリアシング/モアレが見て取れる。フルHD/60pで更に見える。
- LCD/EVFが切り替わらない。例えば、ビューファインダを見てインタビューの収録を始めた後、カメラから顔を離すと、自動的にLCDに切り替わって欲しい。
- マイクジャックは本体、ヘッドフォンジャックは別売りのVPB-XT2グリップにある。音声収録する場合は、いやおうなしにグリップを買わなければならない。
- 今のところ、ビデオの波形表示はできない。
- 試用機ではホワイトバランスやフィルムシミュレーションモードで変化が無かった。Qメニューモードでは動作しないのは分かっているのだが、理由は不明。次回、もう一度確認する予定。
- フィルムシミュレーションモードを変更したときのハイライト処理。これはちょっと厄介だったのだが、簡単に露出オーバーになってしまう。富士フィルムの説明ではハイライトトーンとシャドートーンは、フィルムシミュレーションモードに基づいており、これは従来フォトモードのみ可能だったのだが、初めてビデオモードでも採用したとのこと。リリースバージョンを待ちたい。
- REC StopしてからSDカードへの書き込みが終わるまでの時間が、いつもより長いと感じることがあった。スピードの速いSDカードを使っていたのだが。
- 35:1など16:9以外のアスペクトに対するスクリーン上のアシストマーカーが無い
- ビデオモードでもグレーアウトされないフォト関連のメニューがある。ビデオモードでどの機能が使えるかが分かり難い場合がある。
- オートフォーカスのアルゴリズムは変わらないのに24pでのオートフォーカスが60pに比べて多少遅く、不連続なように感じられた。
- デュアルSDカードスロットはフォトモードでのみ、同時記録などいろいろな選択が可能。ビデオモードではスロットの選択のみ可能。
- チャージャーのLEDは充電中が緑点灯するが、これは充電完了と誤認する可能性がある。
まとめ
今回試用したカメラはベータバージョンなので、断定した総評は避けたい。最終版は8月末になる予定だ。そして何より期待したいのは、その持てる可能性を最大限に発揮してもらいたいこと。特にF-log機能は、4:2:0/8bitになってしまうにせよ、本体内記録できるようにして欲しいものだ。最終版をテストするのが待ち望まれる。今後、パナソニックのGH4後継機やキヤノンのEOS5DIII後継機が出てくると思われるが、このX-T2を含め、どれを買うかうれしい悩みが増えそうだ。
ビデオ収録データ: 4k/24p / “Pro Neg. Std”. モード/ NLE Adobe Premiere CC / カラーコレクション不使用。ただし、幾つかのショットで明るさ変更 / 音声本体内記録 / .
BGM: Art-list – The East Mother by Alon Ohana – Nova Beat, Audiojungle – The Love Angel, Travelling Japan
Many thanks to Machico-san and her beautiful family