今回のゲストレビューでは、ウィーンを拠点に活躍しているカメラマンFlorian Gintenreiter氏が富士フイルムX-T3をDJI Ronin-Sで使用しているので、そのレポートをシェアしよう。
DJI Ronin-Sは7月下旬に発売され、私は富士フイルムのX-T2をマウントして使ってみた。X-T2の内部コーデックは8ビット4:2:2 @ 100MBit / s で、これはプロの仕事では十分ではないが、注文したブラックマジックデザインの Pocket Cinema Camera 4kがまだ到着していなかったので、とりあえずX-T2で撮影しようとしていた。
そうこうしているうちに、富士フイルムからX-T3が発売された。これは、X-T2よりもずっと優れたフォーカストラッキング機能を備え、ビデオ機能が大きく改善されている。そこで私はX-T2からアップグレードすることにし、新しいフラッグシップカメラX-T3を注文した。なお、X – T3についての記事はこちらを参照いただきたい。
X-T3をRonin-Sに搭載する
ネット上にはX-T3のビデオや静止画の機能についてのレビューやテストが多くアップされている。そこで、この記事では、DJI Ronin-Sジンバルで使うことに焦点を当てることにした。(Ronin-Sについてのチュートリアルとレビューはこちらの記事を参照)
X-T3が到着すると、早速DJI Ronin-Sにマウントして撮影してみた。 カメラに富士フイルムのXF 16-55 f2.8ズームレンズを取り付けたが、ジンバルの強力なモーターは速やかにバランスを取り、簡単にセットアップできた。
X-T3は顔と目の検出が強化されたオートフォーカスシステムにより、ジンバルでの使用がかなり容易になっている。もちろん、フォーカスが外れる場面もあったが、全体的には大きな助けとなった。
光量のコントロール
ところで、私はバリアブルNDフィルターを使うことは殆ど無い。肌が蝋のようになってしまい、空の露出は不均衡で、奇妙な効果も出てしまうからだ。そこで、XF 16-55 f2.8レンズにND2、ND4、ND8のGobe 77mm NDフィルターを使用した。フィルターを組み合わせることができ、レンズのフードを使用でき、フィルターの上からレンズキャップを付けることができる。このNDフィルターを使用することで、シャッタースピードを約1/50に保つことができ、絞りを開けて撮影できる。
X-T3とRonin-Sで順調に撮影したが、すぐに2つのことが明らかになった。
- Ronin-Sはかなり重く、折りたたみできる三脚をグリップの延長として使用して両手で支える必要がある。
- X-T3の画面は、Ronin-Sにマウントしている状態でも確認できるが、画面が小さく屋外での視認性は良くない
外部モニターの必要性
Ronin-Sにはマウントポイントがないので、手持ちのリグでAtomos Shogun InfernoをRonin-Sに取り付けた。また富士フイルムが提供しているF-Log 用Rec.709 LUTをShogunにインストールした。これにより、正確な色とコントラストで画像を監視しながら撮影することができる。
Shogun Infernoの追加で重量は更に増加し、長い時間持っているのは辛かったが、機能的には問題なく、順調に仕事ができた。
Shogun Infernoでの外部記録で問題発生
Shogunはレコーダーでもあり、X-T3の4:2:2 10Bit HDMI出力を記録しようとしたが、問題が発生した。
Shogunで記録した映像でフレームが欠落するのだ。私はHDMIケーブルを交換してテストし、SSDも交換したが、記録された映像は2秒ごとにフレームが欠落していた。幸いにもX-T3の内蔵メディアに同時に記録していたので助かったが。
cinema5Dを通して、私は富士フイルムに問題を報告し、同社はそれを調べることになった。また、Atomosにもこの問題を知らせ、詳細を報告した。今後の成り行きに注目したい。X-T3に関しては、あまり外部記録で使われていないからかネット上で同様の問題が報告されていないため、私のX-T3のHDMI出力に何らかのハードウェアの問題がある可能性もある。
なお、X-T3はカードをFAT16ファイルシステムでフォーマットするので、ファイルサイズは4GBに制限される。これは4K 25p 400MBit / sで約1分22秒だ。長時間の連続記録では、クリップは4GBのファイルに分割されるので、ポストで繋ぎ合わせる必要がある。これは面倒な作業だが、もちろんフレーム精度で繋ぐことができる。
Shogunでの記録がうまく行かなかったので、X-T3の内部記録で撮影を続行した。カメラで内部記録した映像は非常に美しく、Atomosが記録したProRes422HQとの画質の差は、今回の撮影目的ではごく僅かだった。ただ、クロマキー用のグリーンスクリーンでの撮影では問題になるかも知れない。
Ronin-S
X-T3同様、Ronin-Sについても多くの記事が掲載されているので、ここでは詳しい説明は省く。 (Ronin-Sのレビューはこちら)。Ronin-Sは現在X-T3のコントロールをサポートしていないが、すばらしい機器であるのは間違いない。
Ronin-Sのアクセサリーに関しては、中国のSmallRigがRonin-S用のサイドハンドルを製品化している。これを使えば、Roninはもっと快適に使うことができる。グリップの上にはコールドシューと、1/4インチと3/8インチの取り付けポイントがあり各種アクセサリーをマウントできる。
Shogunは重く、また先のX-T3のHDMI出力の問題のため、小型軽量のSmallHD Focusモニターを手に入れ、ハンドグリップのコールドシュー取り付けポイントにマウントした。
SmallHDのFocusは、LUTを対応させた再生ができ、偽色、ピーキング、波形、クイックタッチインターフェース、など多数の画像解析ツールを搭載しており、更に軽量なため、Ronin-Sで使用するのに最適なモニターだ。私はモニターを逆さまにマウントしなければならなかったので、ブラケットがRonin-Sのハンドルと干渉することはなかった。
今後の課題
カメラ
X-T3の内部記録ファイルシステムはFAT32に変更して欲しい。これにより、クリップが4GBを超えてもファイルが分断されることはない。
また、Ronin-Sからカメラに電源を供給する可能性も検討して欲しいところだ。Ronin-Sにはパワータップが内蔵されているため、可能思われる。
ジンバル
DJIには少なくともスタート/ストップコントロールとワンショットAFをX-T3で対応していただきたい。私にはそれが可能かどうかわからないが、パナソニックGH5のようにマニュアルフォーカスホイールのサポートも対応できると良いのだが。それについてのDJIフォーラムには、すでにスレッドがある。是非サポートを依頼してほしいと思っている。
DJIはRonin-S用のアクセサリーをいくつか発表した。これは、バッテリーチャージャー、チーズプレート、コマンドユニット、トップブラケット、GPSユニットで、更に最も興味深いのはフォーカスノブでコントロールできるモーターだ。これによりRonin-Sがさらに便利になるだろう。
最後に、X-T3のSmallRigケージも購入することにした。これにより、HDMIケーブルクランプが使用でき、X-T3のHDMIポートを保護することができる。重量は更に重くなるが、Ronin-Sから比べれば微々たるものだ。
編集
収録は最高の品質を確保するためH.265 10Bit 4:2.0 400MBit / sのイントラコーデックを使用して4Kで収録した。私は18コアのiMacProをRadeon Vega Pro GPUと高速RAIDで使用しているが、スムーズな編集のため、FinalCutProX、あるいはDaVinci Resolveで“Optimized Media”にトランスコードしている。
まとめ
このRonin-SとX-T3のコンビネーションは、どのような撮影でも使用できると確信している。 X-T3の実に優れたオートフォーカスは、フォーカスプラーやワイヤレスフォーカスシステムがなくてもRonin-Sで使用することができ、ワンマンオペレーションの撮影に最適だ。
多くの予算が期待できない撮影には、X-T3とRonin-Sで十分対応できるだろう。ただ、大きなジンバルやSteadicamを完全に置き換えることはないと思われる。
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