富士フイルムX-T3レビュー- 10ビット、All Intra、400Mbpsの4Kミラーレス
富士フイルムが、新しいミラーレスカメラX-T3を発表した。APS-Cセンサーを採用し、同社では初の10ビットでの動画記録がカメラ内部でできる。Cinema5Dでは、早速量産モデルを入手、いきなりレビュー記事をリリースすることができた。結論から言うと、X-T3は、ビデオ性能に関してかなり積極的に踏み込んだカメラだ。詳細は以下記事を参照いただきたい。また、上のビデオはX-T3の発売前量産機で撮影したサンプルビデオ。
従来モデルの経緯
富士フイルムは、ミラーレスカメラにおいて、ビデオ機能に積極的に向き合ってきたメーカーで、従来モデルのX-T2は、4KレコーディングとF-Logピクチャプロファイルを搭載している。その後、X-H1は、カメラボディ内手ブレ補正システム、内部F-Log記録、そしてETERNAフィルムシミュレーション画像プロファイルと、クリエイティブなどうだ撮影に有用な機能を矢継ぎ早に搭載してきた。 (X-H1のレビューはこちら)
X-T3の主な新機能(順不同)
X-T3はビデオ機能の点でX-T2とX-H1を上回っている。富士フイルムは、映像制作者からのフィードバックに注意深く耳を傾けた結果、これまで同社にはなかったビデオ指向のミラーレスカメラを世に出した。新規開発されたセンサーとその背後にあるプロセッサーを含め、多くの進化が見られる。以下に新機能をピックアップしてみよう。
- H264コーデックに加え、新たにH265コーデックを搭載
- Long GOP / ALLイントラ記録を選択可
- 4K、10ビット、ALLイントラ、4:2:0、400Mbps内部記録(最大30p)
- 4K / 60p(H264モード)、最大200Mbps
- HDMI経由の外部4:2:2 10ビット記録
- 優れたオートフォーカスシステム(低照度下やスローモーションでも快適)また、 “アイディテクション /フェイスディテクション”方式は、ビデオモードでも機能する
- ゼブラ機能
- 4K / 60P 4:2:2 10ビットHDMI出力と4K / 60P 4:2:0 10ビット内部SDカード記録
- ヘッドフォンジャック装備
- 良好なローリングシャッター性能。(cinema5Dで4K / 25p記録モードで9msを測定)
- 11.2stopの広いダイナミックレンジ。
- ハイフレームレート記録。 Full HDモードで、120fps記録可能。スローモーション撮影時の結果はX-T2やX-H1よりも優れているが、残念ながら、クロップファクターは大きい。 (1.29倍対1.17倍)
- 低照度特性の改善。 ISO 8000まで良好な画質を実現。最大ISO 12,800で撮影可能。
- フルHDは、X-T2とX-H1の記録レートの2倍(200Mbps対100Mbps)をサポート。
- クロップなしに4Kモードで最大30pまで撮影。 4K / 50 / 60pを撮影する場合、クロップファクターは1.18倍。
- 改善されたノイズリダクション
- 将来のファームウェアアップデートにより、HLG HDR画像プロファイル(BT2100)提供予定
- 新しいEVFディオプターロック。
- ビデオモードでは、フォト関連のメニューがグレー表示
- フロントタリーライト(X-H1から継承)
改善要求点
一方、次の点は改善して欲しいポイント。
- ボディ内手ブレ補正機能が搭載されていない。最近ではIBIS(In Body Image Stabilization)は小型カメラで一般的。(将来のX-Hシリーズのために残してあるのかも)
- このカテゴリーの他の同社のカメラ同様、LCDモニターはチルトのみで回転できない。
- ビデオモードでの立ち上がりが遅い
- X-T2とX-H1での改善要求点が改善されていない。例えば、フォーカス確認のため画面を拡大できるが、録画を開始してもそのままになっている。特にドキュメンタリースタイルでの撮影で使い難い
- イントラ10ビットのような高レート記録では、4GBのFAT32限界にすぐに到達してしまい、ファイルが分断される
- 4K / 50-60pで撮影したときの録画時間制限が20分。ただし、4K / 24/25 / 30pでは29:59分。
実際に撮影してみて
X-T3で実際に撮影してみて感じたのは、ボディ内手ぶれ補正が無いことの不便さだ。動画撮影していると、カメラを動かしたくなくなってしまう。それ以外は良好で、良かった点を以下に書き出してみた。
- マニュアルフォーカスモードでは、画面をタップすると、瞬時に正確なフォーカスが可能
- オートフォーカスは信じられないほど高速で正確。高速で飛行するジェット機を撮影したが、95%は正確なフォーカシングが得られた。
- 素晴らしいルックのETERNAフィルムシミュレーション。ただ、ダイナミックレンジが小さくなる。 (F-Logを使用する場合、9stopを測定した)。
- 良好な音質。上記のビデオでは、ワイヤレスの干渉が大きかったため、内部録音は使用していないが、全体的に見ると、音質は印象的だ。
- 十分な数のアサインボタン。液晶画面にも4つの “アサインボタン”が表示される。上、下、左、右ボタンとして機能することもできる。
- 美しいスローモーション(フルHDで120fps)。
- ネイティブのISOは640。NDフィルタを使わない場合、ISOを160まで下げることができる(DRは低下する)
放熱については、今回の使用時間内では問題なかった。ただ、非常に長時間使った場合の検証は今回はしていない。
まとめ
富士フイルムは、ソニーEと富士フイルムXマウントのMK/MKXシリーズレンズも発売している。これは富士フイルムが、ビデオ撮影においても大いなる情熱で取り組んでいる証拠だろう。そして今回、内部10ビット記録できる初のAPS-Cセンサーサイズカメラを導入することにより、同社のミラーレスカメラはビデオ撮影の選択肢として、最前線に位置されるカメラとなった。このカメラは、映像制作者から大きな関心を得ることだろう。他のブランドのカメラユーザーも関心を示すことと思われる。特に同社のカラーサイエンスは高い評価を得ており、X-T3によりその信者も増えて行くことだろう。このカメラでは、「アナログのように見える」、すなわち、美しく、情緒のある映像を期待することができる。
X-T3は現在アマゾンで予約販売されている。価格は、ボディのみ¥181,127。
冒頭のビデオについて
Radomで行われたエアショーでの撮影条件は完璧ではなかった。雨、雲、騒音が多かったが、カメラはうまく機能した。時々カメラがフリーズし、電源を入れ直すことがあったが、原因は不明だ。フレームレートや解像度を変更する場合に生じたようだ。おそらく、発売時のファームウェアで対応されるだろう。
カメラセッテイング
F-Log画像プロファイルで撮影。シャープネスとノイズリダクションは-4、主にH265、ALL Intra 400Mbps DCI 4K / 25pを選択。 (時々H264、4K50p、1080 / 100pを使用)。グレーディングはFilmConvertを使用。 (FJ Prov 100)。いくつかのショットは編集段階で手ぶれ補正を行っている。グレーディング前の映像データはこちらからダウンロード可能。 Adobe Premiere CC最新版で編集している。
使用したレンズとフィルター
FUJINON XF 100-400mm 4.5-5.6 R LM OIS、FUJIFNON XC 15-45mm f / 3.5-5.6 OIS PZ、FUJINON XF 16-55mm f / 2.8 R LM WR、FUJINON XF 10-24mm f / 4 R OIS、FUJINON XF 8-16mm f / 2.8 R LM WR、Heliopan 82mm可変グレーNDフィルター(このフィルターは画像を少し柔らかくする傾向があるが、ビデオのざらつき感を抑えることができる)
音楽 Music Vine. Music tracks: “a new tomorrow” by Clemens Ruh, “Blood and sand” by Monobox, “Discovery” by ak, “Fires on the horizon” by This patch of sky, “Skyride” by Josh Stewart
Baltic Beesチームのご協力に感謝します。 彼らの活動について詳細は、www.balticbees.comを参照。