富士フイルムがX-T4を発表 - ハンズオンとレビュー
新しい富士フイルムX-T4がリリースされた。これは2020年に注目されるカメラの1つとなるだろう。手振れ補正とバリアングル式LCDスクリーンが、この新しいカメラに搭載された。動画が撮影できる小型で軽量なAPS-Cセンサーのカメラで、最も素晴らしいカメラのひとつになるだろう。
筆者は数週間にわたってX-T4を試してみたが、X-T3から大きな飛躍を遂げている。また撮影していて楽しいカメラだ。ドキュメンタリーを制作するといった目的にも、最高のツールの1つとして応えてくれるだろう。
X-T4の新機能(順不同)
X-T4はユーザーからのフィードバックも十分考慮している。 X-T3とX-H1の良いところを統合したと言える。それぞれに長所と制限があったが、それらが良く認識されX-T4に反映されている。もちろんX-T3の良いところは、ほぼすべてX-T4に継承されている。以下は主な特徴。
- H264 / H265エンコーディング
- 4K/60p
- 高データレートの記録(最大400 Mbps)
- すべてのイントラ(ロングGOPと並行)圧縮
- ・10bit 4:2:0カラーサンプリング
- タッチスクリーンLCD
- 優れたオーディオ
- ジョイスティック
X-T4はX-T3の26.1 メガピクセル「X-Trans」センサーと「X-Processor 4」を継承しているが、アルゴリズムは変更されているため、パフォーマンスは向上している。
更に、次のような新機能が搭載されている。
- 5軸IBIS(In Body Image Stabilization)。この新しいIBISユニットは、スプリングではなく磁力を使用しているようだ。同社によると、IBISユニットはX-H1のものよりも30%小さく、20%軽いとしている。
- 厚みが増したカメラハンドグリップ。X-T3のカメラグリップは薄く握りづらい場合があった。 X-T4は、わずかに厚いグリップとなった。数ミリの違いだが、ハンドリングの快適性の点で大きな改善だ。
- バリアングルLCDスクリーン
- 容量の増したバッテリー
- 同じ品質でバックアップビデオを記録できるデュアルSDスロット記録(プロキシビデオファイルではない)
- フルHDで最大240 fps(x1.29クロップ)
- F-Logビューアシスト機能はBT.709標準で見ることができる。(色と露出について画像を信頼できる)。記録中にF-Logとビューアシストを切り替える(またはその逆)ことはできない。これら2つのモード(F-LogおよびビューアシストBT.709)間の切り替えは、RECボタンを押す前にのみ可能で、記録されたクリップ全体で最後に選択した方が継続される。
- 動画モードと写真モードには、個別のノブ設定を用意。「動画」を選択すると、メニューは動画専用になる。これは動画ユーザーには嬉しい機能だ。ただしメニューの深い部分では、共通化されているところもある。
- マニュアルフォーカスモードの場合、S.Sボタンを押すとデジタルズームされ、フォーカシングが容易になる。さらに、この「ズームイン」モードで録画を開始すると、選択したフレーミングに自動的に戻る
- 「MICジャック設定」を追加。入力レベルをMICとLINEの間で切り替えることができるようになった
- 撮影モードが異なると、クロップファクターが異なる場合があり、これが心配な場合は、カメラを固定クロップモードに設定することができる。(x1.29)
- 新しいETERNAブリーチバイパス画像プロファイルが追加された(低彩度/高コントラスト)
- EVF / LCDブースト設定:「低光量優先」、「解像度優先」、または「フレーム優先」の3つの異なるモードが選択できるようになった。 「低光量優先」は、白いメニューを赤くし、暗い場所でも見やすくなる。
- 専用タイムコードメニュー。 (機能はX-T3と同じ)
- 「ホワイトプライオリティ」自動ホワイトバランス。白をより美しく再現する
- X-T3では、SDカードを交換する場合カメラの電源を着る必要があったが、X-T4ではその必要は無くなった。
実際の撮影
数週間X-T4をテストしてみたが、柔軟性とパフォーマンスが優れているため、先にも書いたように楽しい時間だった。
手振れ補正
X-T4で特に興味があるのは、IBISがどの程度機能するかということだ。X-T4では3つの手振れ補正モードがある。
- センサーとOIS対応レンズ
- センサーとOIS対応レンズとデジタル補正(このモードでは、x1.29クロップされる)
- 「ISブースト」モードでは、IBISのパフォーマンスは、さらに向上する。このモードは三脚を使わなくても良いほどの効果がある。
特に「ISブースト」モードは、次の理由で有用だ。
- クロップされない
- 手振れ補正効果が非常に強力
富士フイルムでは、このモードはフレームを固定している場合に使用することを推奨しているが、人を追跡する場合にも試してみた。結果は有用だった。ほとんどジンバルのような動きになるが、多少ラフな面もある。筆者はドキュメンタリー撮影でジンバルをあまり使用しない。スムーズすぎると、ドキュメンタリーらしくなくなるからだ。従って多少動きが粗い方が良い。ISブーストモードはそのような撮影に向いている。
オートフォーカス
オートフォーカスは、低照度でF-logが「オン」になっている場合でも、うまく機能する。 富士フイルムは、暗い場所ではF-logを「オフ」にすることを推奨している。筆者の経験から言うと、F-logを「オン」にして暗い環境で撮影すると、フォーカスが微妙に動き、気が散ることがあった。
低照度特性
一言で言えば、すばらしいと言える。ネイティブISOは640で、12,800まで使用できる。ノイズがまったくないということではないが、映像が使用できないということにはならない。
電源とバッテリー
IBISなどは、電力消費を加速するため、X-T4では新しいバッテリーが採用された。
新しいバッテリーは、従来の1250 mAh(8.7Wh)に対し、2200 mAh(16Wh)。動作時間は長くなっているが、消費電力は増えている。 1日撮影するならバッテリーは3個あると安心できる。
以下は電源についての追記事項。
- 2個のバッテリーを同時に充電できる新しい充電器も新たに用意された
- X-T3やX-H1と同様に、外部カメラグリップが用意されているが、他のグリップとは異なり、これは充電器が無い。
ローリングシャッター効果
ラボでのテストではなく見た限りではあるが、ローリングシャッターもうまく処理されている。
オーディオ
音質に関してはX-T3を継承しているが、運用上の障害が1つある。 3.5ヘッドフォンプラグはUSB-Cコネクタに置き換えられた。言うまでもなく、この方法は筆者が望んでいるものではないが、USB-Cから3.5mmプラグへの変換ケーブルが同梱されている。ただしこれはプロ用のものではないため、多少信頼性に不安があったが、今回のテスト中では特に問題は無かった
なお3.5mmヘッドフォンジャックではなくUSB-Cを採用した理由は、ユーザーニーズを認識していなかったためではなく、物理的な配置の問題のようだ。3.5mmミニプラグは、カメラグリップアクセサリー(別売)には装備されている。ただし、このグリップは充電器として機能しないため、個人的にはグリップを使わないだろう。
コントロール
2.5mmカメラコントロールジャックがX-T3では右手側だったが、X-T4では左手側に移動している。
懸案事項
- X-T3と同様に、筆者の問題の1つはEVFだ。中心から少し目を離すと、フォーカシングが変わったかのように感じる。視度調整ノブを調整しても、また調整しなおすことになる。
- オートフォーカスのブレについてはMFか、インタビューならAF-Sモード、必要に応じてAF-Cを使用することをお勧めする。
- RECボタン(カメラシャッターボタン)は X-T3とは異なり、RECしていると思っていたら、そうではなかったことがあった。その逆もまた然り。このボタンの感度を微調整できると良いのだが。
- フルHD 240fpsでは、撮影対象やフレーミングに応じて、画像が柔らかくなり、不要な効果が出ることがある。ハイフレームモード水平な線が苦手なようだ。一方、背景をぼかして被写体を浮き立たせる場合は、超スローモーションの美しい映像が得られる。
価格と発売時期
X-T4の価格は税込20万円強。発売は2020年4月末。
まとめ
X-T4は現在、ビデオを撮影できる最高のAPS-Cカメラと言える。そして、その機能と画質は、フルフレームミラーレスの多くと渡り合えるものだ。このカメラはさまざまな制作に有用だが、移動が多いドキュメンタリー映像制作なら、特に有用だろう。さらに、IBISを搭載したことにより、ハンドヘルド撮影も手軽に行えるようになった。 同社のMKXレンズを使用することで、更に効果的になる。
X-T3は完成度の高いカメラで特に買い替えを必要と思わなかったが、X-T4は買い替える価値があるカメラだ。ドキュメンタリーカメラマンの筆者にとって、待ち望んでいたツールと言える。小型軽量で、美しい映像を撮影でき、比較的手頃な価格も大きな魅力だ。
富士フイルムのX-T4サイトはこちら。