ハッセルブラッド(Hasselblad)H6D-100cレビュー - 中判カメラでビデオを撮る
このゲストレビューでは、ウィーンの映画製作者Christoph Tilley氏が、ハッセルブラッド H6D-100c(100MP、4K RAW対応の中判カメラ)を詳しく見ている。興味深い内容なので、是非ご一読いただきたい。
中判カメラでビデオを撮る
以前、DSLRは映画の作り方に革命をもたらした。そして最近では、ビデオを撮影できる中判スチルカメラが登場している。このような非常に大きなセンサーでビデオを撮影すると言うのは、はたしてどうなのだろうか?
ハッセルブラッドのH6D-100cは100メガピクセルフルフレーム中判フォーマットスチルカメラだ。そして驚異的な解像度を持つ。RAWイメージのファイルサイズは216,3メガバイトになる。そしてのカメラは4K RAWビデオを撮影することもできる。興味を持たざるを得ない。
それにしても、これでビデオ撮影すると、どのような結果になるのだろうか?そして、この大型センサーカメラはSuper35mmカメラとどう違うのだろうか?それを見極めるため、50mm、f / 1.4レンズを装着したRED Dragonと、典型的なインタビューシーンを撮影した。右の映像がf / 4のf-stopで100mmレンズを装着したハッセルブラッドH6D-100cだ。
両方のショットを並べてみると、まず分かるのは、H6DのレンズがREDのレンズより3stop絞っているにもかかわらず、背景がボケていることだ。また、画像の視野が広く見える。
それは微妙な違いだが、間違いなく、中判フォーマットは視野を広げることによって実に美しい映像を作り出している。
しかし、Super35mmの2倍以上のサイズのセンサーでビデオを撮影するメリットは何なのだろうか? 85mmというのは通常では望遠域だが、中判センサーでは40mmとほぼ同等であり、非常に広角になってしまう。
ハンズオン
上部のカメラの電源を入れ起動させてから、上部のボタンを押してビデオモードに切り替える。ライブビューモードに切り替えると、録画を開始することができる。シャッターボタンで録画をスタート/ストップする。
ビデオ設定でRAWまたはH.264の録画モードを選択することができる。 RAWは常に4Kで記録するが、H264を選択すると1080または720でも撮影することができる。ISOと色温度を変更することはできるが、フレームレートは常に24fpsとなり、異なるフレームレートやビットレートを選択することはできない。記録メディアは、Alexa Mini同様、CFastメモリーカードで4K RAWを撮影でき、1枚のみ挿入することができる。
後処理
カメラはRAW映像を、拡張子が.3fvという一般的ではないファイルコンテナに記録するので、ハッセルブラッドのPhocusソフトウェアで変換する必要がある。このソフトウエアでは、ホワイトバランスやISOを変更することはできないが、目的のクリップに移動し、クイックプレビューすることができる。主な用途は、クリップをCinemaDNGシーケンスに書き出すことだが、その際プリセットを選択することができる。
このプロセスには時間がかかるが、変換が完了すると、変換されたショットは小さな.mp4プロキシとともにフォルダに収納される。このプロキシはaudio.mp4と呼ばれており、オーディオ情報も含まれている。
エクスポートプロセスではネーミングプリセットを選択できるが、これはすべての単一の.dngフレームに親フォルダの名前が適用される。各フレームに同じ名前が付けられているため、Davinci Resolveのようなグレーディングソフトウェアでクリップを再適合させてリンクすることは非常に困難だ。それでも何とか映像をグレーディングすることができたが、非常に手間がかかった。なお、シャドウ部に不自然なノイズが見られた。撮影時にセンサデータがかなり圧縮されているようで、これは良くない。
まとめ
一部の人々は、中判カメラは広いシーンを撮影することができるので、小さなSuper35サイズのイメージャーよりも、より実際に見ている視野に近いと言うが、より焦点距離の長いレンズのルックにも起因している。ストレッチ感がなく、フラットな印象になる。
ハッセルブラッドH6D-100cでビデオを撮影する意義は明らかで、それは大型センサーだからということだ。またハッセルブラッドレンズの素晴らしいパフォーマンスもある。美しい色やボケと、大きなコントラストを実現してくれる。
欠点を上げれば、これはビデオカメラでは無いということだろう。これは、1秒間に24枚の画像を撮影し、映像を圧縮するスチルカメラだ。また、このサイズのCMOSセンサーのローリングシャッター現象はかなりひどいと思っていたが、やはりそのとおりだった。 H6D-100cのローリングシャッター現象は今まで見た中でも最悪の部類に入る。 中判フォーマットのルックがほんとうに必要だという場合以外、特にこのカメラを選択する理由はないだろう。ただ、そのルックは捨て難いものであるのもまた事実だ。