Kinefinityは中国のシネマカメラメーカーで、1年ほど前 MAVO LF 6K(3:2)カメラを発表して話題になった。今回はその包括的なレビューをお届けする。 ARRI ALEXA LFや Mini LFに代表されるように、「ラージフォーマット」がトレンドだ。今回は、MAVO LF 6Kの使い勝手や機能について詳しく報告する。
Kinefinity MAVOおよびMAVO LFシネマカメラは、同じ画像処理プラットフォームを持ち、最新のカラーサイエンスと最先端のCMOSイメージセンサーで高度な色処理アーキテクチャを搭載している。 従来のMAVOはSuper35mmセンサーを装備しているが、このMAVO LFは6K(3:2)ラージフォーマットセンサーセンサーを搭載している。どちらも非常に低ノイズと高いダイナミックレンジを達成している。今回はKinefinity MAVO LFを使って実戦で撮影し、テストした。
撮影環境
具体的には、演奏会から商品撮影まで、数週間にわたって、実環境での撮影でテストした。ソニー、キヤノン、ブラックマジックデザインなどのカメラとの比較も行った。
基本機能とラージフォーマットセンサー
MAVO LFを手にするとすぐわかるのが、1kg以下(本体のみ)と非常に軽量で、高解像度のシネマカメラの中では、Z Cam E2にも匹敵するほど最も軽量なシネマカメラのひとつだ。
MAVO LFの6K、あるいは4Kの画像は、デジタル的ではなく、かつ非常にシャープで、有機的で心地よい表現力を持つ。撮影監督の間では相対的な鮮明さについて常に議論が行われており、よりリアルで柔らかい有機的鮮明さを主張する監督もいるが、より正確なまたは超鮮明な画像を好む監督もいる。筆者は特に4K画像でよりシャープに見える映像を好む。
ラージフォーマットセンサーを搭載したMAVO LFは、46mmのイメージサークルの広い範囲をカバーし、鮮明な映像を映し出す。また、ラージフォーマットセンサーにより、被写界深度が浅くなるため、雰囲気のある映像を撮ることができる。36x24mmのサイズのセンサーは、Super35mmセンサーの約2.25倍の大きさを持ち、36.7 x25.54mmの ARRI ALEXA LFセンサーに近い大きさだ。
解像度、ダイナミックレンジ、アスペクト比
Kinefinityによると、ダイナミックレンジはソニーPXW-FS7を超えるとしている。実際使ってみるとブラックマジックデザインUrsa Mini Pro 4.6Kに近い14 stop以上に見える。
16:9と17:9(DCI)の標準アスペクト比に加え、6:5 Super35mm(アナモフィック記録用)、4:3、最大24 メガピクセルの3:2などメニューで選択できる。
重要な機能の1つは、MAVO LF 6K(6016 x 4016、センサーフォーマット3:2のネイティブ解像度)で最大75fps(6fpsから1フレーム単位で調整可能)、および4K/HFRで100fps(Wide、4096 x 1720px)、4K DCI で75fps(4096 x 2160px)で記録できること。これにより美しいスローモーションが得られる。
モジュール式の構成
Kinefinity MAVO LFは、モジュール構成を採用した小型軽量なシネマカメラシステムだ。立方体でゴツゴツした形状は、REDカメラやZ Cam E2を彷彿とさせるもので、コントロールノブのほか、ステアリングホイール付きのサイドグリップもある。
モジュール設計の大きな利点は、ジンバルにも使用できることだ。今回のレビューではハンドルなどのモジュールを取り外すことでカメラを大幅に小型小型化し、Zhiyun Crane 2にも搭載することができた。
操作性
パナソニックやキャノン、ARRIあるいはソニーのような大手のメーカーが作るカメラは、ある程度共通の操作性を持っており、ユーザーは基本的な操作を勉強しなくても使うことができる。
MAVO LFでも、その基本的な操作性は他のカメラを踏襲しており、特別な機能を除いては、すぐに使うことができる。
マルチカメラ同期と電源
MAVO LFをマルチカメラで使用する場合は、同期を取るため、Tally、AutoSlate、Beeper、Trigger、KineBACK-W SMPTE LTCおよび3D / Multi-cam Syncを使うことができる。また電源に関しては、BP-U30互換のバッテリー「GripBAT」45WhをSideGripに収納することができる。このバッテリーで1時間以上稼働(スタンバイおよび録画)する。
RAW記録が可能
Kinefinity MAVO LFはさまざまなコーデックを使用して記録することができ、DaVinci Resolveなどでカラーグレーディングできる。特に、独自のKineRAW 2.0(.krw)(約2:1~10:1の圧縮率)とCinemaDNG(.cdg)(圧縮率3:1、5:1または7:1)での12ビットカラー深度は特筆される。特に広く使用されているCinemaDNGは設計する上で自由度が高く、標準化されたプロセスでワークフローを簡素化することができる。
今回収録したファイルは、Apple ProRes HQ4444(12ビット)を使っている。撮影で記録したファイルはAdobe Creative Cloudで問題なく処理することができた。このほかにも、ProRes422HQ / 422 / LT / Proxy、ProRes4444、ProRes4444XQが選択できる。
デュアルISO
前モデルMAVOとの本質的な違いは、新しいフルフレームセンサーだが、ISO800とISO5120のデュアルISOも大きな要素だ。また、同時にS/Nも改善されている。今回のテストでは、800、1600、2560、および3200のISO値を使用した。ISO 5120での画質は、用途によって使えるレベルだ。
HD、2K、4Kにダウンコンバートする場合は、より高いISO値を使用することもできる。センサーのピクセル間隔がMAVOより50%大きくなったため、感度も良くなっている。
記録メディア
記録メディアは一般的なブランドのSSDを使用する。テストでは、Kinefinityによって認定されていないサムスン、サンディスク、Crucial、Transcendなど主要メーカーのSSDを問題なく使うことができた。ただし、高さ7mmまでのSSDしか使用できないので注意する必要がある。 なおSSDスロットは1つしかなく、リレー記録や同時記録はできない。
KineBACK-Wをオプションのアドオンモジュールとして使用する場合は、2系統の3G-SDIコネクター経由で外部のモニターに表示し、低解像度かつ制限されたフレームレートでレコーダに記録することもできる。現在は、フルクオリティでのバックアップや別のフォーマットでの同時記録はできない。
ポストプロダクション
ポストプロダクションでは、画質は心地よい肌の色調が得られ、簡単にグレーディングでき、影のディテールとハイライトが低ノイズで表現された。
エラーとクラッシュ
ソーシャルメディアでは、クラッシュとエラーについての質問がいくつか寄せられた。今回のテストでは数日間カメラを使用し、時には非常に埃っぽく、暑い環境だった。メニューでいろいろと回避したが、一度再現できない問題に見舞われた。
カメラ再起動したが、エラーメッセージはSanDisk SSDに記録することができないと表示された。SSDを交換すると解決し、問題のSSDには収録したデータが保存されており事なきを得たが、その後エラーは発生しなかった。
メーカーサイドとしては認定されたKineMAG + SSDの使用を推奨している。 SSDを使用しているため、サーバーへのコピーやSSDをそのまま編集する場合も十分に高速だ。更にSSDは独自仕様ではないので、安価に手に入る。ドロップフレームやその他の技術的なエラーは発生しなかった。
KineMOUNT
フランジバックは15mmとかなり短く、このため多くのレンズをアダプターを介してマウントすることができる。 マウントはKinefinity TERRA同様オリジナルレンズマウントのKineMOUNT を使用している。
このマウントは、多くのマウントよりもフランジ距離が短く、ソニーのE-Mountが18 mmよりも短い。したがって、PLマウントアダプターやワイヤレスEFアダプター、あるいはKineEnhancer付きのEFアダプターや電子ND付きのEF / PLアダプター(e-ND)、FE / Eアダプターなどが用意されている。今回のテストでは様々なメーカーのEFレンズを使用したが、特に問題なく使用できた。
操作性と要望
今回のテストでは、特にフォーカシング、合理的な露出機能、SideGrip(オプション)の操作性、そしてシャープネス調整に便利な白黒ディスプレイが印象に残った。
もちろん、幾つか改善の要望点もあるが、将来のバージョンアップに期待したいところだ。
もう一つの要求は、クリックホイールの感度と、操作性を他のカメラの一般的な方法に対応してほしい点だ。特にSideGripホイールの感度やプッシュボタン、スイッチ、およびホイールの操作性を洗練して欲しい。
またタッチスクリーン制御にすることにより、操作性が向上するだろう。
まとめ
このカメラは、小型軽量で持ち運びが楽なうえ、ジンバルやドローンでも有用だ。解像度が高く鮮明な映像が収録でき、アスペクト比が自由に選択できる。ポストプロダクションでの処理も扱いやすい。
このカメラは独立系のプロダクションや、小規模なチームでの制作、あるいはセットアップに時間の余裕があったり、絶対の信頼性までは求めない撮影現場に適している。また従来のワークフローや完全に確立されたワークフローでなくても良い場合にも適しているだろう。標準化されたワークフロー上で処理しなければならない場合は、KineRAWよりもProResのワークフローの方が簡素化される。
6Kで撮影し4Kで配信する場合で、ソニーのVENICEやREDカメラを使用するバジェットが無い場合もKinefinity MAVO LFの選択が考えられる。
初めて使用する場合は、可能な限りテスト撮影し、操作についてよく理解しておくと良いだろう。今回の撮影では十分な事前トレーニングの時間が取れなかったが、少しの練習で、高品質の映像を撮ることができた。
Links: MAVO LF – Kinefinity