Dave Cooper氏はPremiere Pro CC 2017 11.1.0で、「Media Cache」フォルダを削除したため、約25万ドル相当の映像ファイルが消えてしまったとしてAdobeに訴訟を起こしている。
Cooper氏はビデオプロジェクトを編集していた時、 “Clean Cache”機能を使用してディスクスペースを解放した。 “Media Cache”フォルダは”videos”フォルダ内に置かれており、ここにあった10万個以上のクリップが削除されてしまった。Adobeはその後これを認め、バージョン11.1.1で修正した。これに対しカリフォルニア州で集団訴訟が提起され、Dave Cooper氏はAdobeに金銭的損害賠償を求め訴えを起こしている。
これは悪夢のシナリオだった。100,000のクリップと500時間以上の仕事の結果が消えてしまったのだ。Dave Cooper 氏はPremiere Proをバージョン11.1.0にアップデートした後、編集作業を行っていた。彼はビデオファイルを、プロジェクトごとにサブフォルダに入れ、これを「videos」というフォルダに保存していた。
キャッシュとは？
基本的にはすべてのNLEはキャッシュフォルダを作成する。理由はさまざまだが、一般的には高速でファイルにアクセスするため編集中に使用する。しかしプロジェクトが完成した後はアクセスする必要はなく、保存しておくには大きすぎる。キャッシュに保存されるものはNLEにより様々だ。たとえば、DaVinci ResolveではRAWクリップのProResバージョンのように、編集用のメディアをキャッシュフォルダに保存する。グレーディングや多くのエフェクトを含む編集にも使われる。レンダリングしてできたファイルをキャッシュフォルダに収納する場合もある。いずれにしても大きなプロジェクトを編集している場合、キャッシュフォルダもかなり大きなサイズになり、管理が必要になる。
Adobeのキャッシュマネージメント
Adobe Premiere Pro CCでは、キャッシュを管理する2つの方法を導入している。 「Clean Cache」機能を使用して削除するか、90日後にPremiere Proが自動的に削除するかだ。（期間は設定可能） 今回の騒動では、この管理機能が原因だった。 Dave Cooper氏の主張によると、90日を過ぎた時点で「Media Cache」フォルダとそのサブフォルダだけでなく、キャッシュファイルとは無関係のJPG、PSD、PDFなど「videos」フォルダ内のファイルもすべて削除されてしまったのだ。これらのファイルは2010年から2017年の間に収録されたもので、Cooper氏はライセンスを取得して収入を得ていた。削除してしまった後、Cooper氏は削除されたファイルを回復しようとしたと同時に、Adobeとの折衝も行った。しかしどちらもうまくいかなかったため、法的な訴えとなった。
この事件の教訓
我々はこの事件から学ぶことがある。Dave Cooper氏が行ったファイル処理方法は、複数の段階で間違っていた。これは、我々が人間であり、たとえプロとして働いていても、間違った操作をしてしまうことがあるということだ。また、データを絶対的に保護する方法はない。そしておそらく、以下のような誤解をしている。
- 誤解1：バックアップを持たないか、単に外部ドライブにコピーする
- 誤解2：RAIDとバックアップが同じであると考えている
- 誤解3：SSDがHDDよりも安全であると考えている
- 誤解4：オフサイトバックアップを使用しない
- 誤解5：オンラインバックアップを利用しない
- 誤解6：素材映像ファイルと同じ場所にキャッシュフォルダを設置する
- 誤解7：ファイル構成を真剣に考えていない
ファイルの保護やバックアップの問題は、常に付きまとう。収録がファイルで行われるようになってから、更に大きな問題となっている。これについては、今後も記事をリリースしていきたいと思う。時間と手間がかかるのでついつい疎かにしてしまうが、慌てる前に十分な対策をとっておきたいものだ。
写真： unsplash.com, Photographers: rawpixel, Patrick Lindenberg, JC Gellidon, Zoltan Tasi, Markus Spiske
