“サンダンスからの提言”シリーズは、ここサンダンス映画祭に参加したプロデューサー、監督、カメラマン、パネリストなどの言葉を集めた記事にした。もしみなさんがユタ州で行われているこのイベントに参加できなかったなら、この記事で彼らの言葉に触れることができるだろう。
Francis Lee: God’s Own Countryの監督
提言:映画は、大切な人のことを表現するように作ること
Francis Lee氏はGod’s Own Countryを父の故郷、ヨークシャーで撮影した。Q&Aでは、彼と出演者たちは農場の仕事について尋ねられた。二人の主演男優は、羊の出産を補助したり、牛舎のフンの始末をしたり、牧場の整備など汚く大変な仕事に多くの時間を費やした。Lee氏は、「正確に農場の仕事を知る」ことは極めて重要だと述べている。このことはラブシーンにも影響している。Lee氏は俳優たちに、本当に愛情を感じるようなラブシーンを安心して演技する事ができる場を与えたかったのだ。そうすることによって、彼は同性愛者や自分もそうではないかと思っている人たちのコミュニティーに大きな理解を示している。
出演者のトレーニングや背景のディテールには細心の注意を払い、各ショットには敬意の念が感じられる。この方法はドラマの質を高める。“もっと迫真の演技を”とか“観客は気になったらそちらに気が移ってしまう”と言うような事がよく言われるが、気持ちの入っていない演技は俳優やクルーのやる気を失い、結局は観客からそっぽを向かれる結果となる。観客は知らず知らずのうちに演技に薄っぺらなものを感じ、映画自体が薄っぺらなものと捉えてしまう。しかし、ここがきちっと抑えられていれば、観客は映画に入っていけるのだ。観客目線と製作目線の両方を意識することが重要だ。
Andrew Dosunmu: Where is Kyra?の監督
提言:作品の時間を短くしたい場合は会話を短くするのではなく、ショットを短くせよ
撮影は短く、撮影スタイルには時間をかける。これは基本だが、最近ではあまり見かけなくなった。“Where is Kyra?”は18日で撮ったが、固定ショットと長いドリーショットの組み合わわせで構成されている。何ヶ所かで4時間程度の撮影を行ったが、俳優の契約時間が8時間に制限されているのでDosunmu氏は1回のショットで収まるよう固定ショットに十分時間をかけた。美しく細かい構成とデザインは、窓の中の反射、ひびの入ったドアの後ろの浴槽、さらにはキャラクターの顔の細かいところまで、全ての彼女の会話に効果的に作用している。
撮影スタイルは監督の個性がよく分かる。考えてみて欲しい。ひとつの固定ショットがあるとしよう。そのショットは何だろうか?あるいは最も言いたいことはなんだろうか?俳優のアクションを見せるために、どの程度の距離を取ればよいだろうか?一人の聴衆がDosunmu氏に訪ねた。会話は非常に自然に感じられたが、俳優はセリフに忠実に喋っているのでしょうか、と。彼は俳優を賞賛し、100%忠実だったと答えた。これは、撮影スタイルによって、俳優が最初から最後まで途切れること無く演じられた結果だ。
彼ら二人の映画監督は、サンダンス映画祭で観客から賞賛を浴びたが、彼ら二人の映画に対する考えもまた参考になったのではないだろうか。