ニコンの新しいフラッグシップミラーレスカメラ「Z 9」が発表された。このカメラは、8Kで毎秒30フレーム、4K/120pでH.265の映像を撮影することができる。ProRes 422HQ 10bitで4K UHD、最大60pでの内部記録も可能だ。
ニコンの新しいフラッグシップミラーレスカメラについて、最初に話題になったのは2021年3月のことで、同社から正式な開発確認が行われた。その間、数々の噂やリークがインターネット上で飛び交った。
今回、Z 9が正式に発表されたが、このフルフレームミラーレスカメラはかなり期待できるものだ。
Z 9のセンサーと画像処理エンジン
まず、カメラの写真性能について説明しよう。Z 9は、45.7メガピクセルの裏面照射型(BSI)積層型CMOSフルフレームセンサーを搭載しており、これは競合機種であるキヤノンのEOS R3の2倍以上の解像度だ。
ニコンによると、この新開発のセンサーは圧倒的な読み出し速度を誇り、ローリングシャッターの低減に貢献する。また、BSI方式を採用しているので、高ISO感度でもきれいな画像が得られる。
内部には、画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載している。このエンジンは、画像処理エンジン「EXPEED 6」を搭載した「Z 7II」の10倍の速度を実現している。
一言で言えば、新しいセンサーとEXPEED 7エンジンの組み合わせにより、RAWで最大20fps、JPEGで30fps、画像サイズを11メガピクセルに下げれば120fpsという驚異的な連写モードでの撮影が可能になった。さらに、1回の撮影で最大1000枚のRAW画像をバッファリングすることができる。
なお、Z 9はすべての撮影モードで電子シャッターのみを使用している。これにより、1/32.000までのシャッタースピードで撮影することができる。
オートフォーカスの性能
Z 9では、センサー全域をカバーする493点の位相差AFシステムを採用している。AFの読み出しは最大120fpsで行われ、写真や動画のすべてのモードでオートフォーカスが機能する。
人、ペット、鳥、飛行機、電車、車、バイク、自転車など9種類の被写体を認識できる「自動被写体検出」を新たに搭載した。さらに、オートエリアAFでは、被写体の認識から追尾まで、すべてZ 9が自動で行ってくれる。
また目測式AFが改良され、フレーム内の小さな被写体でも、より速く、より正確に撮影できるようになった。さらにカスタム機能として、フォーカスポイントの色をグリーンに変更してフォーカスを確認することもできる。
Z 9には従来のニコンデジタル一眼レフカメラですでに搭載されていた3Dトラッキングモードが搭載されている。このモードは、被写体検出と相まって、「レーシングカーやスポーツ選手など、速くて不規則に動く被写体」を追跡することができるとニコンは述べている。
動画撮影機能
動画撮影機能について、Z9の特徴を簡単にまとめてみた。
- 8K UHD(7680×4320)で、センサー全体を使って最大24/30pの撮影が可能。ニコンによると、最大2時間の連続録画が可能で、カメラがオーバーヒートすることはない。
- 4K UHD(7680×4320)をセンサー全体で最大120pで撮影。最大30pのオーバーサンプリングされたUHD 4K記録が可能で、シャープネスとディテールが向上する。
- H.265(HEVC)4:2:2 10bit、ProRes 422 HQ 4:2:2 10bit、H.264/MPEG-4 AVCなど、さまざまなコーデックでの内部記録が可能。
- ProRes 422HQ 4:2:2 10bitの記録モードは、フルHD/24p、25p、30pを除き、4K/60pまでの記録解像度に対応している。
- カラープロファイルは、10ビットのN-Log、HLG、Flatなど様々な選択肢がある。なお、HLGは「H.265 10-bit(MOV)」を選択した場合のみ使用可能。
- 音声は、リニアPCM24bitでの撮影が可能
- 撮影した映像は、CFexpress Type Bのデュアルメモリーカードに保存され、万が一の事態に備えて冗長性を高めている
- ボディ内手ブレ補正機能を搭載しており、NIKKOR Z VRレンズを使用した場合、最大6段分の手ブレ補正効果が得られる
このように、Z 9には動画機能が数多く搭載されている。しかし、それだけではない。
ProRes RAW 8K/60pを内部記録
来年、ニコンは、”新しい12ビットN-RAW高効率ビデオフォーマット、12ビットProRes RAW、およびその他のプロレベルのビデオ機能での内部8K/60p記録を可能にする “無料のファームウェアアップグレードをリリースすると述べている。
DJI Ronin 4Dと合わせて、Z 9はProRes RAWの内部記録が可能なカメラとなる。
カメラボディ
Z 9の筐体はマグネシウム合金製で、随所にシーリングジョイントが施されており、プロの過酷な使用にも耐える。またD6と同等の防滴・防塵性能を備える。
それに加え、Z 9では光学フィルターにデュアルコーティングを施し、センサー前にゴミを付き難くしている。レンズ交換の際には、センサーシールドがセンサーを保護する。
カメラのセンサーには手振れ補正が施されているが、カメラの電源を切った場合はVRセーフティロックが自動的にセンサーをロックして保護する。
カメラの背面には、4軸の3.2型タッチスクリーン液晶を搭載している。この内蔵モニターは、水平・垂直方向にチルトすることができ、どのような角度でも、どのような向きでも撮影することができる。また、静止画撮影時には、インターフェースが適切な方向に自動調整される。
ニコンによると、ファインダーは “3000cd/m2(nits)に調整可能な世界で最も明るいQuad-VGAパネル “とのことだ。
Z 9は、新しいEN-EL18dバッテリーを搭載している。ただし、「D4/D5/D6」で使用されている従来のEN-EL18バッテリーも使用可能だ。
バックライト付きのボタンは、暗闇の中での操作に役立つ優れた追加機能だ。
入出力端子
カメラの左側には、以下のものがある。
- フルサイズのHDMI端子を1系統搭載
- 有線LAN接続用のイーサネットポート
- 3.5mmのマイク入力とヘッドフォン端子を搭載
- テザリングやデータ転送、カメラ内バッテリーの充電に対応するUSB 3.2 Gen2 Type-Cポート
- アクセサリーやリモート接続用の10ピンポート
- フラッシュ同期用のPC Syncポート
キヤノンEOS R3と比較しても、Z 9はすべての条件を満たしていると言える。
さらに、Z 9は、カメラ内のBluetooth、WiFI(2.4/5Ghz)、カメラ内ジオタグ用のGNSS GPSなどのワイヤレス接続も搭載している。
価格と発売時期
Z 9は、「今年中」に発売予定で、価格はオープン(海外では5,499.95ドル)。直接の競合製品としては、キヤノンEOS R3が673,200円(5,999ドル)となっている。予約販売受付は、11月2日10時より開始される。
詳細については、ニコンのウェブサイトをご覧いただきたい。