パナソニックが海外でLUMIX S1Hを正式発表 - 6Kフルフレームミラーレスカメラ
LUMIX S1Hはパナソニックの新しいフラッグシップミラーレスフルフレームカメラで、数か月前にCine Gearで公開された。今回、このS1Hがドイツのハンブルクで開催されたプレスイベントで正式に発表された。S1H は6K解像度を持ち、映像クリエーターを念頭に置いて設計されている。
LUMIX S1Hは、写真機能の点でLUMIX S1と非常によく似ているが、この記事では、ビデオ機能に焦点を当てて解説する。
6K、フルフレーム4K、super35mmクロップに対応
以前の記事でLUMIX S1Hが非常に高品質、高解像度の映像を記録できるカメラだと伝えた。6Kで最大24fps(アナモルフィック撮影の場合は3:2アスペクト比)、5.9K/16:9/30pで記録できる。また内部で、4K/ C4Kで10ビット/4:2:2/400Mbps/最大29.97pで撮影できる。またHDMI出力を介して外部レコーダーで記録する場合は、最大60fpsが可能だ。以下は、利用可能な記録形式のリスト。
記録形式、フレームレート、解像度、ビットレートは印象的で非常に広い範囲の選択が可能だ。これほどの柔軟性を持つミラーレスカメラは他にない。なお頻繁に使用する設定をすばやく呼び出すことができる。
フルフレームモードでほとんどの解像度を選択できる。即ちセンサー全体を使用して画像を記録し、トリミングは行われない。 なお、super35mmモードも使用でき、この場合は4K解像度を維持し従来のフレームサイズにトリミングする。
最も印象的なのは、6K解像度で3:2センサーをフルに使用してアナモフィック撮影できる点だ。このモードは、4:2:0/200 Mbpsであるにもかかわらず、10ビットカラースペースで記録できる。 16:9フルフレームモードに変更すると、4K DCI(上記の表で「C4K」と表記されている)を4:2:2/ 10ビット/400 Mbpsで記録できる。
アナモフィックを撮影する場合は、カメラで再生時にデスクィーズできる。使用するレンズに応じて、1.30x、1.33x、1.5x、1.8x、および2.0xの圧縮解除アスペクト比を使用できる。
LUMIX S1Hのプリプロダクションバージョンでダウンロードした6Kテスト映像
以前の記事で、カメラのプリプロダクションバージョンでいくつかのショットを撮ることができた。 その時はカメラを6K解像度(アナモフィック撮影用の3:2アスペクト比に付属)に設定し、通常の球面レンズを使用している。なお、6Kで通常とは異なるアスペクト比のショットをこちらでダウンロードできる(2.9 GB)。
ボディ内手振れ補正
LUMIX S1Hにはボディ内に5軸I.Sが組み込まれている。 デュアルI.S. 2テクノロジーが採用されており、カメラ内O.I.S.とレンズ(光学式手ぶれ補正、2軸)を組み合わせ二重に手振れ補正される。 デュアルI.S. 2テクノロジーはLUMIX GH5にもすでに搭載されており、強力な手振れ補正が可能だ。なお残念ながら、この機能はGH5Sには組み込まれていない。
連続記録時間制限なしとファイル分割記録
すべての記録モードで、連続記録時間の制限は無い。したがって、十分な電源やメモリカードがある限り、ノンストップで記録できる。ファイルは分割されるが、記録は停止しない。また、「セグメントファイル記録」オプションがあり、これはテイクの途中でバッテリーが無くなった場合にデータの損失を避けるのに非常に便利だ。この機能を使用すると、ビデオを1分間のセグメントに分割して記録できる。ビデオは単一のグループとして保存される。
強制冷却システム
DSLR やミラーレスカメラで長時間撮影すると、オーバーヒートの問題が発生する場合がある。センサーが過度に熱くなると、カメラは停止する。この問題を解決するため、S1Hには強制冷却システムがセンサーの近くに設置されている。このファンは、センサーを冷却し、外気温が高い状況でも長時間連続撮影を可能にしている。ただしこれがカメラのシーリングに悪影響を与えるかどうかはまだわからない。
デュアルネイティブISO
また、このカメラは、新しく開発された35.6mm x 23.8mm の24.2メガピクセルのフルフレームCMOSセンサーを採用している。モアレを抑制するOLPF(光学ローパスフィルター)も搭載している。
また、このセンサーはデュアルネイティブISOを備えており、通常モードではネイティブISOを100と640(最大ISO:204800)を選択できる。 V-Log / V-Gamutで撮影する場合は、ネイティブISOは640と4000(最大ISO:51200)となる。HLGモードでは、ネイティブISOは400と2500(最大ISO:204800)。
V-Log、HDR / HLG、LCDディスプレイ
LUMIX S1Hは、シネライクガンマ、V-Log / V-Gamut、およびHLG(Hybrid Log Gamma)のHDRなど、さまざまな記録モードと画像プロファイルを備えている。またニーコントロールとマスターペデスタルレベルを調整することで、カラープロファイルを微調整できる。
更にV-Log / V-Gamutで撮影すると、他のVariCam製品と簡単にルックを一致させることができ、「VariCam Look」へのアクセスと、14stop以上のダイナミックレンジが可能となる。今後ラボでS1Hのダイナミックレンジをテストしてみたい。 VariCam LTや EVA1のユーザーなら、LUMIX S1Hは低価格で優れたBカムになる。GH5/ GH5Sとは対照的に、これはV-ログL ではなく、Varicamラインの「フル」Vログだ。
また、HDR(ハイダイナミックレンジ)モードで録画することもできる。この場合ハイブリッドログガンマビデオを、ITU-R BT.2100と互換性のある指定ガンマカーブで記録する。
S1Hは多くの記録フォーマットを選択できるが、同時にモニターや表示ツールが用意されている。たとえば、画面上の任意の場所に拡大/縮小して配置できる波形モニターやベクトルスコープ、ゼブラパターン、カラーバー、1kHzのテストトーン、ビデオフレームマーカー(フレームのアスペクトを表示する)、あるいはV-ログビューアシストなどだ。タリーライトは、カメラの前面と背面の両方に装備されている。カメラが記録している場合、ディスプレイやビューファインダーにも赤いライトが点灯する。
モニターについてば、背面に3.2インチのLCDディスプレイと、OLEDビューファインダーが装備されている。
LCDディスプレイは、LUMIX S1R / S1 / GH5 / GH5Sの画面よりも150%明るくなっている。さらに重要なことは、構造が新しく設計されていることだ。HDMIやUSBケーブルを取り外す必要なく、画面を傾けたり回転させたりすることができる。GH5などのユーザーはお気づきと思うが、ディスプレイを回転させる場合、ケーブルが邪魔だった。
また、OLEDディスプレイはライブビューブーストを備えており、ライブビュー時に感度を高めることができる。暗い場所でフレーミングする場合、非常に便利だ。
高解像度OLEDビューファインダーと上部のLCDディスプレイ
「Real View Finder」と呼ばれるビューファインダーは、S1 / S1Rと同じで、5760kドットの解像度と10,000:1のコントラストを持つOLEDディスプレイで、現在、最高解像度クラスのファインダーだ。ソニーは、最新のαシリーズのカメラにも同様のファインダーを使用している。遅延は、わずか0.005秒。 0.78xの倍率は、0.7xまたは0.74xに切り替えることができる。
カメラの上部には、バックライト付きの1.8インチモノクロLCDがある。消費電力は最小限なので常時オンとなっている。写真やビデオの設定、記録可能時間、バッテリーの残り時間など、さまざまな情報が表示される。また、このLCDパネルでオーディオメーターも表示されるので、モニターやビューファインダーでオーディオメーターをオフにして、表示をシンプルにすることができる。
オートフォーカス
オートフォーカスに関しては、パナソニックによるとSH1は「レンズ、センサー、エンジン」を組み合わせた技術を使用している。つまり、レンズとセンサーが最大480 fpsで通信し、エンジンがすべての処理を行う。顔や目の検出と被写体追跡を備えた連続AFも可能だ。
LUMIX S1Hには、特定の被写体(人間や動物)を検出する高度なAIテクノロジーも組み込まれている。被写体が背を向けた場合でも追跡し続ける。
パナソニックのミラーレスカメラのオートフォーカス機能は、過去数回のファームウエアアップデートで大幅に改善された。昨年10月にリリースされたGH5およびGH5Sアップデートの結果をテストし、顔認識の大幅な改善を確認した。パナソニックは、それ以降、Sシリーズに関してもビデオのオートフォーカスをさらに改善し拡張機能を追加することを通知している。S1Hのオートフォーカスについても今後テストしたい。
カードスロット、レンズ、アクセサリーなど
LUMIX S1Hの筐体は、マグネシウム合金フルダイキャストで構成されている。ダイヤルやボタンは耐候性が施されており、水や埃の侵入を防ぐ。使用温度は摂氏-10度まで凍結しない。多くの他社モデルの動作温度は摂氏0度までなので、これは大きなアドバンテージだ。
カメラの右側には、UHS-IIおよびV90互換のデュアルSDメモリカードスロットがあり、リレー、バックアップ、およびアロケーションの選択ができる。最高のビットレートでも、両方のカードに同時記録できるのは驚くべき仕様だ。また、記録時にメモリカードのドアが開くとアラームが表示される「カードロック」機能も搭載されている。このオプションはオフにすることができる。
右側には、3.5mmジャック入力、ヘッドフォンジャック、内部バッテリーの充電に使用できるUSB-Cポート、およびフルサイズのHDMIポートがある。またカメラの前面には、フラッシュシンクロターミナルがある。このポートは、付属のBNCケーブルを使用して、タイムコード入出力ポートとしても機能する。バッテリーの持続時間は約2時間で、バッテリーの充電にも同じ時間がかかる。
2つのRECボタンがあり、1つはカメラの上、もう1つは前面にあり、簡単にアクセスできる。
S1HはLマウントを採用しており、パナソニック、ライカ、あるいはシグマのLマウントレンズが使用できる。2020年末までに合計46個を超えるレンズとマウントアダプターの発売が予定されている。
パナソニックは、LUMIX S1Hに加えて、LUMIX S PRO 24-70mm / f2.8とLEICA DG SUMMILUX 25mm / f1.4 II ASPHの2本の新レンズも発表した。これらのレンズについては、別途レポートする予定。
S1Hには、HDMIケーブルロックホルダーなど、多くの付属品が同梱されている。 XLRアダプター(DMW-XLR1)、バッテリーグリップ(DMW-BGS1)、大きなアイカップ(DMW-EC6)、DCカプラーなどのアクセサリーはS1Hとネイティブに互換性がある。下の画像ですべてのアクセサリーが分かる。
S1HはBluetooth 4.2aおよびWi-Fi 5 GHzを採用しており、スマートフォンやタブレットを介して制御できる。
価格と発売時期
この記事の執筆時点で、LUMIX S1Hは4000ドルで、9月末に発売予定であることがアナウンスされた。
まとめ
パナソニックはミラーレスフルフレームで後発だったため、最初にS1を発表したときはまだ顧客はこのカメラを採用するか迷いがあった。しかし、S1Hに搭載された映像制作に対する機能へのこだわりを見る限り、その心配は払しょくされるだろう。このカメラはまだテストしていないが、これまでのところ最も「プロ用ビデオカメラ」と呼べるほどのミラーレスカメラのように思える。今まで映画製作者がこのようなカメラに期待できることはほとんどなかった。内蔵NDもしかりだ。しかし、タリーライトや調整可能なフリップディスプレイ、高解像度ビューファインダー、調整可能な波形モニターやLUT、6Kアナモルフィック撮影や4:2:2 10ビットフルフレー/400Mbps/ DCI 4Kビデオなどを搭載したS1Hはこの状況を変えるかもしれない。
カメラが手に入ったら、詳細のテストをしたい。
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