パナソニックS1+キヤノンFDレンズでボディ内10bit記録できるカメラを考える
10ビットのフルフレーム記録が一般的になってきたが、まだまだ高価だ。そこで、キヤノンのFDレンズをマウントしたパナソニックS1で、比較的安価な10ビット記録ができるカメラを考えてみた。
フルフレームで撮影することが多くなったが、8ビットで記録しているユーザーはまだまだ多いだろう。筆者は10年前にパナソニックGH1を使いだし、後にBMPCCカメラに移行した。次はフルフレームと考えているが、同時に10ビット記録も画策している。そこで、自分なりに次期カメラの構想を考えてみた。
次期カメラの構想
- 明るいレンズで浅い被写界深度のフルフレームセンサーカメラ
- 4K 4:2:2 10ビット内部コーデック
- LOG画像ピクチャープロファイルで広いダイナミックレンジ
- 強力なボディ内手振れ補正
- ヘッドフォン出力
- 見やすいファインダーやスクリーン
- 長いバッテリー持続時間
- 広角および中望遠をカバーするf4未満、理想的にはf2レンズ
- 滑らかなフォーカスリングでハードストップによるマニュアルフォーカス
- リグや外部レコーダーなどの外部機器無しで使えること
- 3500ドル以下
これは難しい要求だろうか?
カメラを選ぶ
2018年ではこの要求は難しかっただろうが、2019年ではそうではない。今年は、ニコンZ 6、パナソニックS1/S1H、シグマfp、ライカSL2などのフルフレームカメラがリリースされた。 「フルフレームルック」用のスピードブースターを装備したZCAM E2-S6などのS35カメラ(EFマウントバージョンを選択しない場合のみ)もとりあえず選択肢に残しておく。
さて、マイクロフォーサーズ(MFT)カメラを選択肢に入れなかった理由を述べておきたい。
フルフレームのf/2に相当させるには、MFTではVoigtlaender 17mm f0.95(クロップファクター2x)またはVoigtlaender 25mm f0.95といった非常に明るいf/1レンズを使用する必要がある(約500€)。別の選択肢は、f1.4のレンズと組み合わせてスピードブースター(例えば0.71x)を使用することだ。
したがって、「ルック」の解決策はあるが、依然として小さな画素(ピクセルピッチ)を持つセンサーで撮影することによるダイナミックレンジと低照度特性画の不利な面は避けられない。
したがって、やはり大きなフルフレームセンサーのほうが有利だ。上記のすべての条件を満たす唯一のカメラはパナソニックのS1だ。シグマfpにはヘッドフォンジャックとボディ内手振れ補正がなく、S1H、Leica SL、ZCAMは高価すぎる。ニコンZ 6は10ビットLOGで外部記録だ。 S1については、
「パナソニックLUMIX S1レビュー ー プロトタイプでのテスト撮影」、「パナソニックLUMIX S1 V-Logレビュー」および「パナソニックLUMIX S1ローリングシャッターテスト」の記事も参照いただきたい。
価格はV-Logアップグレードと64 GB SDカード(UHD 4:2:2 10ビット24 fpsで55分の記録が可能)を含め、約2,498ドルだ。
レンズを選ぶ
優れた品質を備えた完全なマニュアルで、明るいプライムレンズとなると、キヤノンFDレンズが候補に挙がる。
以下は、選択したレンズ。
- トキナRMC、17mm、f3.5 – 165ドル
- キヤノンFD 35mm、f2 – 165ドル
- キヤノンFD 50mm、f1.4 – 66ドル
合計で約396ドルになる。上記の17mmなど超広角が必要ない場合は、ほぼ同じ金額でキヤノンFD 24mm f2を使用することもできる。もう少し望遠域が欲しいなら、キヤノンFD 135mm f2.8が88ドルで手に入る。
上記のレンズはすべて30〜40年前のもので、適度なフレアがあり、非常に優れた解像度を持っている。 17mmはf5.6でシャープになり、35mm f2は開放でもシャープで、50mmもf2でシャープになる(夜間でのコントラストは一般的に高いため、f1.4でうまく機能する)。
これらのレンズでは、現代のレンズのような超コントラストや超解像度ではない。逆に言えば、現代のカメラのデジタル的なとげとげしさををうまく取り除くとも言える。
フレアは17mmレンズと35mmレンズでは適切に制御されている。50mmのフレアは、太陽をフレームに入れると多く発生する。またフレアは少し青みがかっている。
これらのレンズは非常に軽くてコンパクトだ。上記の3つのレンズは全部合わせても870グラムに過ぎない。
テレ側が欲しい場合、S1をAPS-Cモード(4K 4:2:2 10ビット)にすると、1.5倍テレ側にシフトする。したがって、50mm/f2レンズは75mm/ f2.8と同等になる。
キヤノンFD to Lマウントアダプター
ただしこれらのレンズをS1のLマウントに適合させるためにはマウントアダプターが必要だ。Kiponのもの(105ドル)もあるが、より安価な選択肢もある。ただしパフォーマンスは異なる。
晴れた日に撮影したい場合は、NDフィルターが必要になる。筆者は主に82mmサイズのHeliopanの可変NDフィルターを使用している。NDフィルターの309ドルに加えてステップアップリングに10ドルが必要だ(レンズには52mm、55mm、67mmから82mmのステップアップリングが必要)。
もちろん、他のブランドもある。たとえば、Polar Pro VariND 6-9などだ。
S1でメカニックアダプターを使用している場合にボディ内手振れ補正を有効にするには、カメラの起動時にレンズの正しい焦点距離を入力する。
まだ3500ドルまで余裕があるので、RodeVideomic Pro(170ドル)も追加しておく。
これで合計は3000ドルから3488ドルになる。価格の差はアダプターと可変NDフィルターだ。
サンプル映像
選択したカメラシステムを試すため、筆者はOchi Day(10月28日)に撮影してみた。Ochi Dayとは、ギリシャや世界中のギリシャのコミュニティで祝われている日で、1940年にギリシャの領土を占領しようとしたイタリアの独裁者ムッソリーニの最後通告に対するギリシャの拒否を祝ったものだ。
撮影した映像は、DaVinci ResolveでPanasonic Varicam LUTライブラリのNicest 709 33 E-E.cube LUTを使用してグレーディングした。さらにSカーブを追加して黒みを加えている。しかし、ブルーが過飽和に感じたので、ブルーを抑える必要があった。なお、この問題は最新のS1ファームウェアで修正されているようだ。
このように撮影した色にはリアリティがある。もちろん、色は主観的なものであり、好みの仕上げをすればよい。
S1の映像に対する要望は1つだけだ。ブラックマジックデザインやライカのカメラに比べ、オーガニック感に欠けているように感じられる。カメラのノイズリダクションが多すぎるように感じられるのだ。 これはオフにできない。
まとめ
この組み合わせは使いやすさにおいても不満はない。ファインダーは素晴らしく、バッテリー持続時間も十分だ。また起動時間も短いので、撮り逃がすことはない。実に快適に撮影できるカメラシステムになった。
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