cinema5DラボでパナソニックS1Hをテストしたのでレポートする。さまざまなフレームレートと解像度、およびフルフレームモードとsuper35mmモードでのテストを行った。
いよいよパナソニックS1Hをラボテストできる日が来た。好結果が期待できるカメラだ。
結果を先に言うと、ラボの数値は非常に良好だ。S1Hはデュアルゲインセンサーの2つのISO設定でほぼ同一のダイナミックレンジ結果を示した初めてのカメラだ。
また以前の記事で紹介したように、S1Hはビデオを撮影することを重きに置いて設計されている。内蔵のProRes記録ができると理想的だが、5.9K ProRes RAWデータ出力をAtomosのNinja Vレコーダーに記録できる。
この記事は、次のように構成されている。
- 6K、5.9K、および4K DCIフルフレームのISO640 V-Logダイナミックレンジ結果
- 6K、5.9K、および4K DCIフルフレームのISO4000 V-Logダイナミックレンジ結果
- 6K、5.9K、および4K DCIフルフレームおよびスーパー35のローリングシャッター結果
- すべての測定の要約表
S1Hのダイナミックレンジテスト
ダイナミックレンジのテスト方法についてこちらを参照いただきたい。
記事の冒頭で述べたように、S1Hの解像度/コーデック/フレームレート/クロップオプションの選択肢は多様で、また2つのネイティブISO(V-Logで640および4000)をサポートしている。更に、6K 3:2、5.9K 16:9、4K DCIフルフレーム、および24p、30p、60p super35mmモードを選択できる。
ISO 640 V-Log 6K 3:2モード(5952×3968)および5.9K 16:9モード(5888×3312)でのダイナミックレンジ
6K 3:2モード(5952×3968)および5.9K 16:9モード(5888×3312)では、信号対雑音比(SNR)=2でIMATESTによって測定されたダイナミックレンジは12.7stopと好結果が出た。これは、ARRI Alexa(SNR = 2で14stop)に次ぐ好結果だ。
ステップチャートの波形プロットを見ると、IMATESTの結果が確認でき、ノイズフロアの約13stopが特定できる。(上のプロットを参照) 6K 3:2および5.9K 16:9モードの場合、約200Mbit / sのH265 10bit 4:2:0(HEVC)がデフォルトとなっている。(ステップチャートでは約180Mbit / sを測定した) 。
ISO 640 V-Log 4K DCI(4096×2160)フルフレームダイナミックレンジ
次に、フルフレームモードでの4K DCI(4096×2160)のダイナミックレンジを測定する。興味深いことに、ダイナミックレンジは12.3stopと低下する。6Kで撮影され4Kにダウンスケーリングされるので、ダイナミックレンジがわずかに改善されるはずなのだが。
IMATESTのノイズ結果(上の画像の3つの中で最も低いグラフ)と下の4K DCIフルフレームモードの波形プロットを見ると、ノイズフロアがより顕著になっていることがわかる。
6Kと5.9Kの主な違いは使用されるコーデックだ。4K DCIではH264 10ビット4:2:2の設定で、ステップチャートビデオファイルは約420メガビット/秒のビットレートを示している。
では0.4stop低下した理由は何だろうか?
まず、6Kおよび5.9Kでは、H265でのビットレートが約180Mbit/sというのは、10ビット6Kでは十分ではないことが考えられる。 5.9K 16:9(19.5メガピクセル)と4K DCI(8.8メガピクセル)を比較すると、エンコードするピクセル数は約2.2倍だ。これは、420Mbit/s H264 4:2:2と比較して80Mbit/s H265 4:2:0と同じで、下側のstopのノイズを適切にエンコードするのに十分ではないだろう。なお、暗部にマクロブロックを見ることができなかった
次にISO640での6Kおよび5.9Kの映像は、4K DCIと比較してノイズが少ないことがわかる。H265での低ビットレートで画像をエンコードするのに、何らかの内部ノイズ低減が行われているのかもしれない。フルフレームの4K DCI画像は、センサーからの「RAW」映像にはるかに近い。
第三に、スペックシートには、モアレを低減するために使用されるローパスフィルターが記載されている。ローパスフィルターのために、6K画像がピクセルレベルで少し柔らかくなり、したがってノイズがある程度ぼやけている可能性があるのかもしれない。下のISO4000の結果を見ると、約0.1ストップ低下しているが、0.4ストップの違いを説明することはできない。
参考までに、1H 4K DCIとS1 UHDのダイナミックレンジの結果を比較すると、SNR = 2でS1Hが12.3stop、S1が12.2stopというほぼ等しい数値となっている。
次に、ISOを4000に上げた場合のダイナミックレンジを測定する。
ISO4000 V-Log 6K 3:2モード(5952×3968) と5.9K 16:9 モード (5888×3312) のダイナミックレンジ
ISO4000でも、ダイナミックレンジはわずか0.4stopの低下しか見られない。これもまた好結果だ。下のIMATESTの結果を参照いただきたい。 ISO640で12.7stopだが、6Kおよび5.9Kフルフレームモード時のISO4000での結果は12.3stopとなった。
下の波形を見ると、この結果が確認できる。 ISO4000では12以上のstopを識別できる。13番目のストップも、しっかり認識できる。
ISO 4000 V-Log 4K DCI (4096×2160) フルフレームのダイナミックレンジ
更なる好結果は、4K DCIモードでは、6Kおよび5.9Kとほぼ同じ結果(12.2stop)が得られたこと。さらに驚くことに、4K DCIモードではISO640とISO4000の間にほとんど違いがない。より高いISO値でも、失われるダイナミックレンジは0.1ストップだけに抑えられている。
更に、興味深い結果は、ISO4000では、6Kおよび5.9K V-Logの結果は4K DCIフルフレームの結果と非常によく似ており、0.1stopの差しかない。ノイズリダクション(上記の推測#2)はここでは存在しないようだ。 0.1stopは、ローパスフィルターが原因で発生している可能性がある。(前述、推測#3を参照)。
S1Hのローリングシャッター測定
CMOSセンサーは上から下へ読み取っていく性質を利用し、300Hzのストロボライトを使用して黒とグレーのバーのパターンを生成することによりローリングシャッター特性を計測する。ブラックとグレーストライプの各セットは、ローリングシャッターの3.3 [ms]に相当する。
もっとも悪い結果だったのは6K 3:2モードだった。これは、上から下までの3968ピクセル全てをキャプチャする必要があるためだ。23.98fpsモードでは、S1Hは29.7 msのローリングシャッターが計測された。
これは非常に高い値だ。安定したセンサーのおかげでローリングシャッターが部分的に軽減されるため、ハンドヘルドシューティングは問題ないが、パンでは遅れが目立つだろう。
5.9K 16:9 23.98fpsの場合、24.8 msのローリングシャッターが測定され、29.98fpsの場合は21 msで良くなる。フルフレームセンサーの場合、これらの値は平均的なものだ。 S1の23.98 fpsの結果は少し良くなっている。なお、S1のUHD 25fpsでは22 msが測定されている。
フルフレーム4K DCIでは、状況がわずかに改善されており、24.2 msとなった。
Super 35mmモードでは、4K DCI 23.98および59.94 fpsで13.9 msとなった。ただし、S1は25 fpsで10.4 msと優れている。
S1Hのテスト結果
すべてのモードとISOでの結果を下の表にまとめた。
全体として、非常に良い結果が得られた。特にダイナミックレンジの結果は並外れている。パナソニックは、S1Hのダイナミックレンジを14+stopだと述べているが、これは、S / N比= 1の結果(13.8stop)に近いものだ。前述のとおり、ここではARRIの論理に従い、cinema5Dの基準としてSNR = 2の結果である12.7stopを採用している。
さらに、デュアルネイティブゲインのISO640とISO4000でほぼ同等のダイナミックレンジ(4K DCI時)を示すという事実は驚異的だ。これは映像に悪影響を与えることなく、より高いISOを使用できることを表している。
ただし弱点もあり、S1と比較して、すべてのモードでローリングシャッターはより高く、フルフレームで約13%、Super35mmモードでは約33%高くなっている。
さてS1Hは4000ドルだが、2500ドルのS1(V-Logアップグレードで+200ドル)の価値はあるだろうか?確かに、Netflixのカメラとして承認されている。(詳細はこちら)。残念ながら、これは自分で確認していただくしかないだろう。S1Hで撮ったドキュメンタリー映像はこちらで観ることができる。
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