超高速度カメラメーカーのビジョンリサーチ社は、Phantom TMX5010とT3610という2つの新モデルを発表した。これらのカメラは、最高116万フレーム/秒の動画を撮影することができ、最高の感度を持つCMOS裏面照射型センサーを搭載している。
超高速度カメラは、人間の目では見ることができない事象を観察することができる。しかし、非常に高いフレームレートでの撮影では、1コマの光が当たる時間が非常に短いため、映像が暗くなってしまう。
そのため、カメラのセンサーには非常に高い感度が求められる。そこで、新Phantom TMX5010/T3610では、低照度性能を大幅に向上させる技術であるBSI(Backside Illuminated)センサーを採用した。
裏面照射型センサー
バックサイド・イルミネーションは新しい技術ではない。多くの伝統的なカメラメーカーは何年も前からこの技術を採用してきたが、今日まで超高速度カメラに搭載することは技術的に困難だった。ビジョンリサーチは、Phantom TMX5010とT3610で、このセンサーを搭載している。
一般的に、カメラの感度はISOに依存すると考えられている。しかし、それは間違いで、デジタルセンサーの感度は、量子効率(QE)によって決まる。
量子効率とは、光の粒子(光子)を物質の粒子(電子)に変換する能力の高さを示すもので、量子効率が高いほど、高感度、低照度性能、ダイナミックレンジの広さなどが向上する。
量子効率にはさまざまな要因があるが、その中でも特に重要なのが、画素の受光部の大きさだ。受光面が大きいフォトダイオードは、より多くの光子を集めることができるため、量子効率が高くなり、光に対する感度も高くなる。
従来の前面照射型センサーでは、フォトダイオードの上に金属配線があるため、光の一部が画素の受光部に届かない。一方、裏面照射型センサーでは、金属配線が画素の下にあるため、受光面が広くなり、量子効率が高くなる。
Phantom TMX5010とT3610の概要
Phantom TMX5010は、TMXシリーズのエントリーレベルのカメラで、最大解像度1280×800で、最大50,725fpsの撮影が可能。解像度を1280×64に落とすと、116万fpsという驚異的なスピードになる。
T3610は、低消費電力かつコンパクトな形状で、三脚などにカメラを設置する際の柔軟性を高めたモデル。最大解像度はTMX5010と同じだが、38,040fpsに “制限 “されている。それ以下の解像度では、最大フレームレート875,000fpsを実現している。
主な仕様
Phantom TMX5010
- 1,280×800で50,725fps
- 1,166,660fps(1,280×32時)
- 2×2のビニングモードあり
- 95ナノ秒の最小露光時間
- 512GBの内蔵RAM記録
- 10Gbイーサネット
- 17.8×17.8×29.7cm(ハンドル取り外し時)
- 9.1 kg
Phantom T3610
- 38,040fps(1,280×800時)
- 875,000 fps(1280×32時)
- 2×2のビニングモードあり
- 最小露光時間190ナノ秒
- 256GBの内蔵RAM記録
- 10Gbイーサネット(オプション)
- 12.7×12.7×21cm(ハンドル取り外し時)
- 4.3 kg
Phantom T3610で撮影したサンプル映像
ビジョンリサーチ社は、Phantom T3610で撮影したビデオを公開している。
価格と発売時期
Phantom T3610は、エンジニアリングからデジタルシネマまで、さまざまな用途に合わせて設計されたカメラで、これまでとは異なる視点で世界を見ることができる。画像処理のために解像度がかなり制限されているが、高速度撮影とのトレードオフではある。
価格については、今のところ情報が無い。確実なのは、Phantom T3610は8月に出荷を開始し、TMX5010はすでに出荷を開始しているということ。いつものように非常に高い価格が予想され、これらはほとんどレンタルでの販売と考えられる。