Philip Bloom氏がソニーFX9のレビュービデオをYouTubeでリリースした。このビデオは4か月にわたって撮影され、約2時間でFX9の詳細を語っている。最も重要なトピックの1つは、カメラのオートフォーカスだが、その他にも広範囲にわたって解説している。この記事では、その内容を簡単にまとめている。
FX9フルフレームシネマカメラは、数か月前に発売された。多くのユーザーが既に使用しており、制作を始めている。このカメラは、多岐にわたる革新が盛り込まれたプロ用カメラだ。
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Philip Bloom氏は、英国に拠点を置く映像クリエーターで、長年にわたってコミュニティに貢献してきた。彼はさまざまなカメラをテストし、過去4か月間、FX9を使用した。最初のレビューは、プリプロダクションファームウェア0.5を使用して2019年11月に撮影された短いカメラレビューだったが、今回は2時間近くの詳細なレビューだ。
レビューには豊富な情報が盛り込まれており、FX9のユーザーや今後購入購入を予定している人々に参考になるだろう。
Philip Bloom氏によるFX9レビュー
同氏は2015年にFS7のレビューをリリースしているが、今回のFX9レビューは、FS7レビューには及ばないものの、詳細にカバーしている。
同氏はFS7を長年ドキュメンタリーの撮影に使用し、その信頼性を称賛している。FS7に関して指摘した2つのことは、その低照度特性と今一つのオートフォーカス性能だった。
FX9は2019年9月に導入され、同氏は11月にFX9で2週間の撮影を行い(プレリリースファームウェア0.5を使用)、その後3か月間リリースファームウェア1.0でテストを行い、合計約8週間使用した。
ファームウェアアップデート
現在、FX9のファームウェアはバージョン1.0だが、フルフレームスローモーション、6K解像度での記録(未定)、4Kおよび2K DCIモード、5Kクロップモード、その他の機能の多くは、2020年の夏に予定されているファームウェアアップデートで提供される予定だ。
FS7から改善されている最も注目すべき点の1つは、カメラのカラーサイエンスだ。 FX9は新しいS-Cinetoneカラープロファイルを搭載している。これは、Philip Bloom氏がレビューの過程で多用しているが、VENICEの改善されたカラーサイエンスに基づいている。
オートフォーカス
映画業界の多くのカメラマンはマニュアルフォーカスを使用するが、AFが非常に有用になったため、AFで何ができて何ができないかを確認することが重要となる。Philip Bloom氏のレビューの大部分は、オートフォーカスに焦点を当てている。同氏がビデオでも述べているように、オートフォーカスは、正確で、滑らかで、信頼性が高い必要性がある。そうして初めて、それを使うことができる。
イメージセンサーが大きくなり、解像度が高くなるにつれて、フォーカシングが難しくなる。マニュアルフォーカスを正しく行うには、より大きなモニターと、より正確なフォーカスアシストツールが必要となる。マニュアルフォーカスは、短い焦点距離の場合や、非線形(フライバイワイヤ)フォーカスホイールを持つ写真レンズではさらに複雑になる。
FX9のオートフォーカスはソニー製のレンズではもちろん有用だが、シグマMC-11アダプターやMetabonesアダプターでEFレンズをマウントした場合でもある程度機能する。しかし顔追跡は、アダプターでマウントしたレンズの場合はそれほど信頼できなかった。なお、MC-11で新しいシグマレンズを搭載した場合は、非常にうまく機能しているように見え、ほとんど純正のレンズのようだ。もちろん、純正のレンズの場合は最高のオートフォーカス性能が得られる。
移行速度や感度など、AFを微調整することができる。現在のところ、FX9には、αシリーズミラーレスカメラにあるような動物認識オートフォーカスは搭載されていない。重要な注意点は、カメラの周波数がフレームレートと一致する場合にのみオートフォーカスが機能することだ。
FX9のモニターにはタッチスクリーン機能が無い。ディスプレイは実際にはタッチスクリーンで、それが有効になっていないだけという噂がある。ソニーはこれを正式に認めてはいない。Philip Bloom氏は、オートフォーカスにタッチスクリーンを使うのは非常に歓迎される機能だと述べている。
顔追跡オートフォーカス
FX9は、顔追跡オートフォーカスのさまざまなモードを提供する。顔のみのモードは被写体の顔を追跡し、フレームから外れてもカメラは背景に焦点を合わせない。顔を探し続け、それが再び現れると、また追跡し、焦点を合わせ続ける。顔優先AFは、被写体の顔に焦点を合わせるが、フレームから外れると、背景に焦点を合わせる。
多くの顔がある場合、カメラは中心的な顔を選択し、それに焦点を合わせる。次に、白い正方形に黄色の線が表示される(写真上)。ジョイスティックを使用すると別の顔を選択できる。フォーカスホールドは、AFロックされた顔がフレームから外れた場合、カメラが別のところに再フォーカスしないようにする便利な機能だ。 Philip Bloom氏は、Focus Holdをファンクションボタンにアサインすることを勧めている。
顔登録機能は、特定の人物に焦点を合わせることができる。同氏はホワイトボードにさまざまな顔を描いてテストしている。同氏はまた、異なるマスクを着用してテストした。
同氏はFX9のAF機能は、時には意にそぐわないこともあったが、多くの場合非常に良好で、ほとんどの場合信頼できたと述べている。ただし、顔が暗く背景が明るい場合や、フレーム内に多くの顔がある場合に戸惑うようだ。同氏は調査結果をソニーに送ったので、将来のファームウェアアップデートでさらに微調整できるようになるかもしれない。
ただし同氏は、将来、オートフォーカスがマニュアルフォーカスとフォーカスプーラーを置き換えるとは考えていない。彼はまた、「オートフォーカスは単にスイッチをオンにするものではなく、最大限に活用するにはスキルと練習が必要」と述べている。
低照度特性
FX9にはデュアルISOセンサーがあり、低いネイティブISOは800で、高いネイティブISOは4000となっている。800〜4000の間のISO値の場合、同氏は4000の高いベースを使用することを勧めている。 (S-Cinetoneでテスト)。
FX9の低照度特性はFS7よりもはるかに優れており、ISO 12800でも画像は美しさを保っている。
可変NDフィルター
同氏によると、電子可変NDフィルター(eND)は、以前のソニー製カメラよりも優れていると述べている。
滑らかなIRISと可変eNDを組み合わせたレンズを使用すると、「被写界深度移動」を実行できる。 IRISの開閉と同時にNDレベルを変更することにより、露出を維持しながらボケを変更できる。これは、フォーカスプルとは異なる表現で、被写体にフォーカスを維持しながら、背景を徐々にぼかすといったことができる。
レンズマウント
FX9は、Eマウントのレバーロックを使用しているため、片手でレンズを取り付けることはできない。常に両手での操作が必要だ。レンズがしっかりマウントでき、安全であるのはメリットだが、一人で撮影している場合は、いちいちカメラを下ろしてレンズを交換する必要がある。
スローモーション
センサーは3:2で、解像度は6Kだが、カメラは(まだ)6Kで記録できない。(XAVC-Iコーデックは4Kを超える解像度をサポートしていない)。6Kビデオは4Kにダウンサンプリングされて記録される。フルフレームは現在、最大30fpsでのみ使用できる。フレームレートを上げるには、S35モードに切り替える必要がある。
1080p(最大120fps)のスローモーションの場合は、スキャンモードを2K(フルフレーム)に変更する必要がある。これにより、低解像度での撮影になるので、画質が多少低下する。同氏によれば、1080p 120fpsの映像は、それでもまだかなり良好な画質と述べている。
手振れ補正
FX9にはセンサー自体の手振れ補正機能は無いが、ジャイロスコープからのデータを記録し、このデータをCatalystブラウザで補正することができる。
電源
FX9はFS7と同じBP-Uバッテリーを使用するが、消費電力はFS7より大きい。Philip Bloom氏によると、約3分の1速くなる。 XDCA-FX9拡張ユニットは、Vマウントバッテリープレートだけでなく、RAW出力などの他の追加機能も提供する。ただし、かなり高価で大きい。
多くの追加機能が必要ない場合は、FX9用のサードパーティ製の電源ソリューション(バッテリープレート)もある。これらの多くはホットスワップ機能があり、BP-Uバッテリーを同時に挿入することもできる。同氏は、Wooden Cameraのバッテリープレート(内部BP-Uバッテリーを簡単に交換できる)とCore SWXプレートを推薦している。
アクセサリー
FX9アクセサリーについては、人間工学の観点から、FX9はFS7よりもはるかに優れており、すぐに使用できると述べている。
ソニーのディスプレイロッドシステムが使いにくいと感じる場合、Philip Bloom氏は別のトッププレートを入手することを勧めている。同氏はZacuto Top Plateを使用している。これは、EVFやモニターを取り付けて調整できる。ただし、ソニーのトップハンドルを変更することは推奨していない。
その他の便利なアクセサリーは次のとおり。ただし、必須ではない。
- VCTベースプレート。Philip Bloom氏はZacutoのものを使用しており、カメラを簡単に前後にスライドさせることができる。
- グリップ用のZacutoエクステンションアーム。便利なクイックセットアップレバーがあり、回転させることもできる。 SHAPEの拡張アームも非常に優れている。
- Zacuto KameleonのようなEVF、あるいはZacuto Z-Finder(FS7のファインダーよりもはるかに優れている)。
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