RED KOMODO6Kを、オーストリアの大手レンタル会社の1つウィーンのAV Professionalから入手できたので、ラボテストを行った。
RED KOMODO 6Kは、スーパー35mmよりもわずかに大きい6Kグローバルシャッターセンサーを備えており、REDによると、ダイナミックレンジは16ストップ以上と述べている。
ウィーンのAV Professionalから入手
今回はAV ProfessionalからRED Komodo本体と50mmレンズをAV Professionalのご厚意で使うことができた。
グローバルシャッターを採用
ダイナミクレンジを犠牲にしないグローバルシャッターセンサーは、非常にすばらしいものだ。KOMODOは、現在のシネマカメラの世界で非常にユニークな製品で、小さな形状も大きな特徴だ。
いつもラボテストはローリングシャッターの測定からはじめるが、今回はローリングシャッターテストを行わない。グローバルシャッターセンサーは、すべてのラインを同時に読み取ることができるため、ローリングシャッター現象は発生しないのだ。試しにテストしてみたが、ローリングシャッターは見えなかった。
グローバルシャッターの採用は、RED KOMODOの最大の特徴だ。グローバルシャッターは、フィルムムービーカメラのように、ハンドヘルド映像で非常に自然な映像になる。
セットアップ
RED KOMODOでダイナミックレンジとラティチュードのテストを行うのだが、その前にセンサーのキャリブレーションを行った。実行時間は10分で、テスト時のファームウェアバージョンは1.3.1だ。
ダイナミックレンジのテスト方法については、こちらを参照いただきたい。
センサーのベースISOやネイティブISOについて、REDのコメントはない。 REDCODE RAW(R3D)を使用する場合は、ポストプロダクションでISOを変更できるが、ProRes422ではできない。REDCODE RAWで容易にわかることは、波形モニターの表示は、カメラのISO設定が変更されても、画像のクリッピングには影響しないということだ。例えば。 XYLA21ステップチャートでクリップされた最初のパッチは、設定されたISOに関係なくクリップされたままで、2番目のパッチも同じようにクリップされる。
したがって、以下のテストではISO800を使用することにした。
ISO800 ProRes 422 HQでのダイナミックレンジ
ProRes 422 HQでは、6Kで撮影された画像は4K DCI(4096×2160)にダウンサンプリングされる。 Xyla21ステップチャートを撮影すると、興味深い現象が明らかになる。これは、RGB波形プロット時の表示だ。
上記のチャートで分かる通り、左側のクリップされた最初のパッチと次のパッチはRGB情報を表示していない(ただし、シャッター/レンズの絞りを調整することで、クリップはされない)。これらはグレーで表示されており、即ちカラーチャンネルがクリップされていることを示している。さらに3番目のパッチのみ黄色と青の色を示している。これは、赤と緑のカラーチャネルはクリップされていることを示している。クリップされておらず、完全なRGB情報を持つ最初のパッチは、「1」の番号がふられたた4番目のパッチからになっている。
内蔵されているハイライトリカバリー: ProResファイルのこの現象は、搭載されている「ハイライトリカバリー」アルゴリズムを示していると思われる
これは次のように機能するようだ。ピクセルの輝度値は、個々のR、G、およびBの値を、Y = 0.299R + 0.587G + 0.114Bの式で算出される。通常、赤のチャネルが最初にクリップされ、次に緑のチャネル、最後に青のチャネルがクリップされる(上記のRGB波形に見られるように、青は赤のチャネルより1ストップ下にある)。
上記の輝度式を使用すると、1つまたは2つのカラーチャネルがクリップされてしまっても、青のみ、あるいは青と緑のチャネルのクリップされていない情報を使用して再現することができる。左から3番目と4番目のパッチの間のわずかに大きなギャップによって、この推定が正しいことが分かる。
左から2番目と3番目のパッチには色情報がないので、フルカラー情報を含む左から4番目のパッチが最初のストップとしてカウントできる。
したがって、RGB波形プロットから、ノイズフロアより上の12のストップをカウントする。
IMATESTでは上記の考慮事項とは関係なく、、ProRes 422HQのSNR = 1で信号対雑音比= 2、13.5で、ダイナミックレンジは12.2ストップと算出される。
以前にテストしたカメラのすべての波形を調べたが、これまでのところ、このようなハイライトリカバリーを備えたカメラはなかった。 下は、ProRes 422HQのBMPCC6Kの例。
左から2番目のストップでは赤のチャンネルがクリップされているため、BMPCC6Kのラボテストでは、左から3番目のパッチをカウントできる最初のストップとしており、BMPCC6Kも同じ12ストップのダイナミックレンジを示している。 ちなみにBMPCC6KでBRAWを使用して撮影すると、ポストプロダクション(DaVinci Resolve)でハイライトリカバリーを実行することができる。
ISO800 REDCODE RAW HQでのダイナミックレンジ
6K(6144×3240)R3D HQで撮影したファイルでもRGB波形と非常によく似た現象(ハイライトリカバリー)が見られる。
R3D HQファイルはProResファイルよりもはるかにノイズが多いが、ノイズフロアの上には約12ストップが表示されている。
IMATESTは、SNR = 2で12.5ストップ、SNR = 1でダイナミックレンジの13.6ストップを表示している。
R3D HQ RAWファイルは、ProRes 422HQファイルよりも少し良好な結果を示している。
これらのダイナミックレンジの結果はProRes 422HQとR3DHQの両方で、グローバルシャッターカメラとして良好なものだ。
ラティチュードテスト
Latitudeは、露出オーバーまたは露出アンダーで撮影し基本露出レベルに戻した場合、色とディテールをどの程度保持できるかを示す数値だ。
スタジオで、顔の輝度値が60%になるように被写体を照らす。これにより、ISO800、360°シャッターでf4(または180°でf2.8)の基本露出が得られる。
従来はシャッター角度を小さくしてシーンを露出アンダーにしたが、複数の読者からのリクエストがあり、今回のテストでは露出オーバーも行うことにした。
下は基本状態で、顔が60%の輝度値(グレーディング前)になるように露出している。その後軽くグレーディングを行っている。
この値から、顔の部分がクリッピングを起こすまで、絞りを1つずつ開いていく。また、絞りを絞ったり、シャッター角度を360°から180°、90°、45°、22.5°、11.25°に順次上げて、露出アンダー方向もテストする。
ラティチュードテストは、ISO800で、4K DCI ProRes 422HQとREDCODE RAW 6K HQ(R3D)の両方で行い、違いがあるかどうかを確認した。
次に、DaVinci Resolve(バージョン17パブリックベータ6)で、波形プロットを可能な限り一致させることにより、画像を基本露出値に戻す。
露出オーバーでのテスト
上記のダイナミックレンジ測定でのRGB波形にすでに示されているように、60%の輝度値の上に1ストップ(「1」とラベル付けしたもの)あり、クリップすることなくすべてのRGBカラーチャネル情報が含まれている。上の次のストップではすでに赤がクリップしている。以下に示すように、カメラ内蔵のハイライトリカバリーではリカバリーできていない。
まったく同じ現象がR3Dファイルにも見られる(画像は表示していない)。 なお、ワンストップの露出オーバーでは、ProResとR3Dのどちらも問題ない。
露出アンダーでのテスト
5ストップの露出アンダーでベース露出に戻すが、REDCODE RAWの場合、DaVinci ResolveのRAWタブの露出スライダーを調整することで簡単に戻せる。ProRes422 HQでは、リフト、ガンマ、ゲインのコントロールを使用する。
ProRes 422 HQとREDCODE RAW 6Kはほぼ同じ結果となった。
どちらのファイルにもノイズが見えるが、これは非常に細かい粒子のノイズで、ポストプロダクションでノイズリダクションを施すと簡単に除去できる。
6ストップ露出アンダーでは、限界に達する。以下のProRes422 HQファイルとR3D HQファイルでの結果をご覧いただきたい。
ProRes 422 HQとR3D HQどちらもポストプロダクションでノイズリダクションを使用すべきレベルになっている。 どちらも良好にクリーンアップされるが、画像に縦縞が表示される。また、シャツの部分を見ると、どちらも効果的に取り除くことができないクロマノイズの大きな斑点が見える。(下の画像)
R3D HQ RAWファイルはさらに多くのノイズがあり、もはやディテールを犠牲にすることなくノイズを除去することは非常に困難だ(DaVinci Resolveの temporalとspatialノイズリダクションを使用)。
この時点で復元できる限界点だろう。
参考に、R3D HQの7ストップ露出アンダーでベース露出に戻し、ノイズリダクションなしの状態の画像を下に置く。画像は緑がかり、縦縞が目立つ。
ティチュードテストのまとめ
まとめると、RED KOMODO 6Kでは約7ストップのラティチュードが使用できる(上に1ストップ、下に6ストップ)。これはBMPCC6Kが、ほぼ4ストップの露出オーバーと4ストップの露出アンダーに対応できることと比べると多少悪い結果となった。また、これら2台のカメラではストップの配分が非常に異なっていることがわかる。
Resolveでの6K REDCODE RAW R3DHQファイルの操作
ところで、筆者は現在、新しく構築したパソコン(Ryzen 3900x、32GB RAM、1TB SSD)で新しいNVIDIA RTX3090をテストしている。このカードはNVIDIAから借りているものだが、RTX3090を使ってResolveを操作するのは素晴らしく快適だ。
簡単なベンチマークを書いておくと、ノイズリダクションなしで、3840×2160のタイムライン上で、6K R3D HQ RAWファイルの場合、20%のGPU負荷(5.1 GBのメモリ使用量)で実にスムーズに再生できる。ノイズリダクション処理(temporal:3 frames faster / small、threshold 40, spatial:faster / medium、threshold 18)を追加すると、再生はターゲットの25fpsから23fpsに低下する。またGPU負荷が75%に増加し、メモリ使用量が6GBに増加する。
今後、他のカメラのテスト機会があれば、このテーマについてもレポートしたい。
まとめ
ダイナミックレンジの結果を見ると、RED KOMODO 6KはBMPCC6Kよりも優れており、SNR = 2で12.5ストップとなった。(BMPCC6K:SNR = 2で11.8ストップ)。
RED KOMODO 6Kのラティチュードテストでは、約7ストップのラティチュードが示されている。これは、たとえばフルフレームのソニーα7S IIIと同様に非常に良い結果だ(ラボテストはこちら)。なお、最近テストした他の2台のS35センサーカメラ、BMPCC 6KとキヤノンC300 MK IIIは、ほぼ8ストップのラティチュードだ。また、ほぼ8ストップのラティチュードを示したフルフレームカメラは、パナソニックS5(ラボテストはこちら)とキヤノンC500 MK II(ラボテストはこちら)がある。
全体として、RED KOMODO 6Kはグローバルシャッターセンサーを搭載した独自の技術を持つ優れたカメラだ。