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RED vs ARRI - デジタルシネマに対する考え方の違いとは?

RED vs ARRI - デジタルシネマに対する考え方の違いとは?

人生には大きな選択をしなければならない場合がある。スターウォーズかスタートレックか?コークかペプシか?マイルス・デイビスかジョン・コルトレーンか?このゲストポストでは、Stewart Addison氏がREDかARRIか?について、それぞれの考え方の違いを詳しく解説している。

REDかARRIか?の議論は、映画制作者が行う議論でのゴドウィンの法則の一種で、議論は同じことの繰り返しになり、どちらも疲れてしまう。しかし、私にとって興味深いのは、どちらのカメラが優れているのではなく、それぞれのメーカーが何を優先させ、映画制作者に何を訴えたいのか、だ。 ARRIはデジタル的にフィルムの伝統を伝えたいのだろうか?あるいはREDはデジタルツールで映画制作を変えてしまいたいのだろうか? これからの映画制作について考えるため、REDとARRIについての議論に戻ろう。

解像度とダイナミックレンジ

デジタル技術が進歩するにつれ、解像度とダイナミックレンジが注目されるようになった。フィルムは高いダイナミックレンジを持ち、例えばコダックビジョン3は13~14.5stop程度だ。 ARRIは、Alexaが14stopを誇り、ダイナミックレンジに重点を置いていると考えられる。 ARRIの世界では、ダイナミックレンジこそが映画の映像として最重要項目で、解像度はその次なのだ。

ARRIの主力カメラは、6Kが撮影できるレンタル専用のARRI 65を除き、ALEV IIIセンサーを何年間も使用しており、実際には3.2Kをアップスケーリングする4K程度の解像度だ。解像度は重要だが、それほど高解像度である必要は無い、という考え方だ。 一方、6Kは既に古いとでも言わんばかりのREDは、更なる高解像度を追い求めている。

REDは2013年にEpic Dragonで6Kを実現した。 2年後、彼らは最終的にDragon Vista Vision 8KとHelium Super35 8Kで8Kセンサーを発表した。 ユーザーもREDの頻繁な更新に追いつくのが大変だ。6Kや8Kどころか、まだ4Kにも追い付いていない視聴者がほとんどなのに、なぜREDは高解像度を追い求めるのだろうか?

CGIのように高解像度の恩恵を受ける種類の映像もあるが、一般的な映画において、主な利点はポストプロダクションの柔軟性にある。 8Kから4Kへのトリミングとデジタルズームはかなり重宝だ。高解像で撮っておくと、ポストプロダクションや将来の再編集にも対応できるのだ。高解像度で撮ることによるクリエイティブの自由度は、これまでにないものなのだ。

6Kや8Kセンサーを使用しているディレクターやDPは、David FincherやJeff Cronenwethのように、ポストスロのプロセスを今までにない方法で行っている。私は『Gone Girl』の制作手法を見たときのことをはっきり覚えている。私が最初にRED EPIC Dragonを使用して6Kで撮影したとき、ポストプロダクションでフレームをリフレーミングやリポジションを行ったが、これは映画制作での全く新しい方法だった。

ARRIでは、事情が異なる。あなたはポストプロでプロジェクトを変えるのは抵抗があるだろうか?もちろん、3.2Kからアップサンプリングされた4Kでは限界があり、4Kが普及するまでしか将来への対応は難しい。しかし、Alexaの映像は、フィルムの映像を彷彿とさせる。画像が美しければ、将来への対応など必要ないのだ。 Alexaのハイライトロールオフはすばらしく、暗部においてもREDに対してその違いを見せつけている。Alexaで撮影するということは、作品をより伝統的に撮るということだ。なぜなら、Alexaはフィルム的なルックをデジタルで撮ることを念頭に設計されているからだ。

REDのモジュール構成とARRIの信頼性

当初からREDは映画制作者に、カメラを目新しい、面白い方法で使用することを提唱してきた。デジタル技術がチャンスを生み、ユーザーがそれを享受するべきとREDは考えたのだ。 しかし、ARRIはデジタル化の可能性は認めつつも、それは従来の使い慣れた制作手法の中でのこととしたのである。

しかし、そう、ARRIにはAlexa Miniがあり、これは同社の一連のカメラからは少し異なった位置にあるものだ。 REDカメラの特徴はモジュール化であり、必要に応じて拡張できるという新しいコンセプトだ。

このモジュラーコンセプトは、DPにモーション、スペース、重量、予算などを考える上で、選択肢の幅が広がる。BRAIN(REDカメラの本体)が、将来の様々な撮影スタイルに対応できるなら、カメラの構築が実に高い自由度でできる。これにより、映画制作者は撮影に最適なカメラチューニングを行うことができるのだ。

ARRIでの撮影はそうではない。 Alexa XTで言う自由度は、REDがメニューインターフェースを介してのみ行うことができる操作方法に対し、実際のボタンを押すという行為を意味する。ARRIが大切にしていることは、フィルムカメラと全く異なった操作方法ではなく、カメラが体の一部のようにストレスなく操作できることなのだ。

REDのモジュール機構と、REDカメラが信頼性の面であまり評判が良くないことを一緒にしたくないが、ARRIの評価とは対照的なので触れておく必要があるだろう。ARRIで撮影するためによりコストをかけるなら、それは信頼性への投資でもある。しかし、REDの新しい設計概念が信頼できる製品を安定して提供することを妨げていると考えるのは早計だろう。

REDARRIの映像

撮れる映像が良いなら、ソリューションやモジュール性の違いは大きな問題ではない。 ARRIは最高の映像が撮れると、ビジネス面で高い評価を得ている。その理由は多くあるが、REDではそのような評価はあまり高くない。 ARRIの評価は、あらゆる世代のDPがその価値を知っているが、REDはそうではないため、強調されるきらいがある。

フィルムで撮影している場合、自分がどのような映像を撮りたいのか分かっているなら、レンズ、カメラ、フィルムの適切な組み合わせを選択することで、望みの映像を撮ることができる。 Alexaではマスタープライムを使い、美しい映像で見るものを感動させることができる。予算さえあれば、最適のルックで、信じられないほどの映像を撮ることができるのだ。

一方、REDの評価は、「脱フィルム」という意味の「デジタル」化だ。これは事実かも知れないが、2つの理由から少し誤解されている。まず、デジタル映像は、自分のやり方で美しくすることができる。例えば、Pablo Larrainの『Neruda』を見て欲しい。それはREDで撮影され、とてもフィルムらしくは見えないが、結果は成功している。デジタルの先鋭感が、物語の芸術性を高めているのだ。

Pablo Larrain’s “Neruda”

第二に、実は、REDはよりフィルムライクなルックを得ることができる。ただ、REDの他のカメラ同様、そのためにはRedUserフォーラムのベストプラクティスを習得する必要がある。 REDの新しいIPP2カラーサイエンスは、ALEV IIIセンサーで実現でき、ハイライトロールオフを提供する素晴らしいツールだ。ヴィンテージレンズとBlack Pro Mistフィルターを使用すると、適度な柔らかさを得ることができる。ARRIよりもはるかに安価で、REDは映画のルックをエミュレートできるのだ。

将来性

これを考えるのは、簡単なことではない。なぜなら、より高い解像度で撮影することは、技術的には将来の高解像度環境にも対応できるが、一方、35mmフィルムの映像は現在でも通用するのもまた事実だからだ。将来への対応と言うことが、時間を超えて気持ちの良い映像を保ち続けることを意味するなら、解像度ではなく、映画的なルックがそうであっても良いわけだ。

たとえば、JJ Abrams、Quentin Tarantino、Christopher Nolanといった有名な監督による映画撮影では、Kodakフィルム処理を復活させた。スターウォーズはニッチな映画ではないが、フィルム的なルックが視聴者に受け入れられているなら、変える必要は無いだろう。さらに、情熱的な支持者のためにフィルムが復活している。満足のいく映像の基準が残っているなら、デジタルはあえてその意義を強調する必要があるだろうか?

おそらく、そうではないだろう。10年前の“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.2”(Vista Vision 8Kで撮影)の8K Netflixストリームは、理論的には現代の映画と同じレベルの精細度がある。それは実に素晴らしく、“スター・ウォーズ/フォースの覚醒”(これは古典的なSFへの美しく近代的な回帰だ)を再度見るまでもなく、私がその近代性を全面的に受け入れた宇宙冒険フランチャイズと言える。これがその一つの結論ではないだろうか。

今は映画制作者にとってエキサイティングな時代だ。デジタル技術が進歩するにつれ、私たちがデジタルカメラから本当に望んでいるものについてさらに疑問を抱くだろう。将来の世代は更なるデジタル化を選択するする可能性はあるが、デジタルシネマが映画の精神を壊してしまうということは無いだろう。デジタルで映画制作をしたいという純粋な欲求は、常に以前の手法と対比される。 REDとARRIの議論は、解決にたどり着いただろうか?一方が他方より優れていると断言できるだろうか?私にはわからないが、選択できる時代に生きていることに感謝したい。

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