シャープが8K MFTカメラのプロトタイプを展示
今年初めに、シャープは驚くべきハンドヘルドマイクロフォーサーズ(MFT)8Kカメラを発表したが、当時それについて情報は限られていた。今回NAB2019直前に、シャープの戒能氏にインタビューしたのでお知らせしよう。
なお、このカメラは現在開発の初期段階にあり、ここでお見せするサンプル映像は最終的なものではない。今のところ、このカメラは、内蔵SDカードにmp4でラップされたH264、Long GOP、8Bit 4:2:0、200Mbpsで8K / 30pを記録する。
今回初めて新しいSharp 8Kカメラについて詳細を語っていただく機会を得た。上記のインタビューで、シャープの戒能氏は新しいカメラの開発の状況について非常に明確に答えていただいた。現在シャープの開発陣は一生懸命商品化に向け取り組んでいるが、カメラが正式に製品化されるまでにはまだやるべきことがたくさんある。今回借用できたユニットは外部の人間に最初に手渡されたもので、開発初期の段階ではあるが、まずは撮ってみた。我々はその使用感をシャープにフィードバックする予定だ。使ってみた感想を以下にレポートする。
Sharp 8K MFTカメラの概要(今後変更の可能性もある)
シャープは独自の33メガピクセルマイクロフォーサーズセンサーを採用し、これを軸にカメラを開発した。想像できるように、8Kでの撮影ではフォーカシングが重要になる。そこでシャープは、このセンサーサイズは使いやすさとセンサー性能の理想的なバランスを提供すると考えた。センサーが小さいと、一般的にはダイナミックレンジ、低照度特性、および画像ノイズ特性が低下する可能性がある。しかし、利便性という意味では大きなアドバンテージがある。 なお、シャープはオリンパスとパナソニックに続き、マイクロフォーサーズシステム標準グループに正式に加わった。
以下の映像は、この8Kカメラで撮ったラスベガスの風景だ。(このビデオはYouTubeによって大幅に圧縮されているため、本来の画質ではない。本来の画質を見るには、こちらから8K映像ファイルをダウンロードしてチェックしていただきたい。
筆者が撮影したカメラは8K / 30p 200Mbpsで固定されていたが、製品ではフルHD、2K、4K/60p、8K / 30pが選択でき、全てがH264とH265、Long GOP、8ビット、4: 2:0、200Mbpsでmp4コンテナにラップされて記録される。これはHDR規格の一部であるため、将来のHDR記録は10Bitになる可能性がある。また既存のミニ2.1 HDMIコネクタはフルサイズのものに変更される予定で、これをシャープの8Kテレビに接続してシームレスに8K映像を再生できる。この出力ファイルがどのように見えるかは、まだシャープで議論されている。 なお、カメラには5.5インチフルHDタッチスクリーンが搭載されている。このスクリーンは明るいが、現在のところ調整はできず、またメニューもまだ十分にできていないし、カメラの電源管理も実装されていない。電源はキヤノンのLP – E6バッテリーを使用している。またカメラボディ内手振れ補正は搭載されていない。しかし、製品では高速連続オートフォーカスが搭載されることが期待される。なお、今回撮影したプロトタイプには、シングルタップのオートフォーカスのみ搭載されていた。
接続性とボタンレイアウト
カメラには2.1 HDMIコネクタの他、プロ仕様のオーディオ接続用にUSBタイプ3インタフェース、ヘッドフォンジャック、3.5オーディオ入力、および単一のミニXLRコネクタが搭載されている。ボタンのレイアウトはシンプルで、オン/オフ、REC、3つのファンクションボタン(ISO、シャッタースピード、ホワイトバランス)、AELとDISPLAYボタンが用意されている。またライトやマイクなどのアクセサリー取り付け用のコールドシューも用意されている。現在のプロトタイプはざっとこのような感じだが、今後機能が順次搭載されていくだろう。中でも、ピーキングとゼブラはぜひ搭載してほしい機能だ。
ターゲットカスタマーは誰?
このカメラを見てブラックマジックデザインのBMPCC4Kを連想された読者もおられるかもしれないが、シャープが実際にどのようなユーザーをターゲットにしているのかは興味があるところだ。戒能氏は、現時点では映像制作コミュニティをターゲットにしていないことを明らかにしており、シャープの8K戦略の一環と位置付けられているようだ。そのうえで、日本でオリンピックが開催される2020年に向けて、8Kのプロダクションは徐々に、しかし確実に普及していくと予想されている。 なお、このカメラから恩恵を受けるもう1つの撮影手法は、ドローンでの撮影だろう。
製品には付けて欲しい機能
このカメラにはREC709およびBT.2020ピクチャープロファイルが装備されている。 Log Gammaのピクチャープロファイルは現在検討中で、市場の要求を見て考慮するとのこと。
もう一つ希望される機能は圧縮されたRAW記録だ。ProRes RAWのような軽いRAWが搭載されれば、一気にプロからも注目されるカメラになるだろう。
価格と発売時期
シャープはこの8Kカメラを3000ドルから5000ドルの間の価格付けを考えているとのこと。ターゲットマーケットにもよるが、これは明らかに高価すぎるだろう。 ユーザーにとっては8Kだけが選択肢ではない。というか、マーケットはまだ4Kに移行したところだ。あえて助言するとすれば、まずユーザーを知り、他社の動向を見、このカメラで何ができるかを考え、適正な価格付けをするべきと言いたい。 同社は2019年内のリリースを目標にしているが、発売時期に関してはまだ明確な情報は無い。しかし、製品化にはまだ時間がかかるだろう。
下はシャープ8Kカメラの映像からのキャプチャ画像(HDに縮小)
画質
このカメラはまだプロトタイプなので、画質の評価はあまり意味がないだろう。冒頭のビデオのほとんどのクリップはISO 200から450の間で撮影されたもので、ホワイトバランスはオートに固定されていた。このカメラのISOはISO10,000まで使用できるが、まだその画質とノイズの落としどころは探求中だ。いずれにせよ低照度特性については、あまり期待できないだろう。なおインタビューのビデオでのサンプル映像は、インタビュー映像に合わせるためHDに縮小している。