Sigma20mm F/1.4 Art Lens レビュー – Moonlight Night
Sigma 20mm F/1.4 Art Lens は現在手に入る最も広角のフルフレームレンズのひとつだ。そしてこのクラスでは手頃な価格でもある。今回はこの新しいレンズをソニーのα7SⅡに装着して、暗闇に近い夜の風景を撮ってみた。
Sigma 20mm F/1.4 Art Lens が先月発表されたとき、これはかなり面白そうなレンズだと思った。何故かというと、私にとって20mmというのはワイドではよく使う焦点距離で、かつ4Kビデオを高画質で撮れるからである。
F/1.4という明るさとこのパフォーマンスをもってしては、$899という価格はそれほど高くないし、プロフェッショナルレンズとも張り合える実力を持っている。
そこでα7SⅡの紹介も兼ねて、かなり暗い条件での撮影をしてみたいと思った。最近のレポートに記したように、このソニーのミラーレスカメラは、先代のα7Sよりも幾分明るくなっている。
そこでレンズが到着するのも待ち遠しく、かなり暗い状態での夜景を撮りに出かけた。結果は冒頭のビデオで見られる通り。このカメラとレンズのコンビをテストするには、かなり暗い条件が必要なので、郊外まで車を走らせ、森のはずれにある城で行うことにした。光源は月明りのみだ。もはや肉眼では見えないので、カメラが“ナイトビジョン”になっている。空は、ビデオでも分かるが、既に青くはならなかった。
編集室で見て、Sigma 20mm F/1.4 Art Lensは思った通り良く撮れていたことに満足した。ISO25,600と、最大は51,200で撮影したのだが、先回のテストの通り、このあたりがHDにしたときのノイズ限界と思われる。露出は開けめで撮っている。低照度下での撮影では、ノイズが目立ってくるので、あまり暗く撮らないことが肝要だ。
今回は全ての撮影をS-log2で行い、今回のテスト用に自分で作った低照度用のLUTを使った。低コントラストのルックにしたかったのだが、かなり成功していると思う。自分としては、低照度撮影はバランスの良いグレーディングのためには、やはりS-log2が良いと思う。
α7SⅡで低照度撮影をして気が付いたのだが、極端な低照度ではある種の“トリック”があるのではないかということ。草の上を歩いているシーンでは、ISO51,200で撮影しているが、多少ゴーストが見える。下のショットでは1フレームの中に複数のフレームがあるのが分かる。
これは一種の“内部ノイズリダクション”の結果(私にはそのように見えたが)で、早く動くシーンやパターンで目立ってくる。あるいは気温が低かったのも多少影響しているのかもしれない。(-1℃) 他のショットでは問題なかった。
レンズについて
このSigma 20mm F/1.4 Art Lens のレビューでは、Metabones のアダプターを介してEFマウントバージョンをα7SⅡに装着している。これで4K動画も写真も撮影した。リファレンスになるレンズを使ってないので、定量的なテストでないのだが、幾つかの重要なことをお知らせできるだろう。
このカメラとレンズとアダプターの組み合わせは写真撮影には適切でないが、4Kビデオの画質を見せるため、テストチャートの撮影には写真を使用している。
上の写真は二つの異なったF値でテストチャートを撮影し、比較したものである。F1.4のショットではF8.0のそれに比べて、強い周辺光量落ち(口径食)が見て取れる。光量周辺落ちは表現手法としてよく使われるが、思った以上に暗くなってしまう場合もある。絞りを開けて撮る時、周辺光量落ちで半ストップ程度暗くなることを認識しておく必要がある。
また歪曲収差(ディストーション)も発生しているが、これは20mmレンズでは小さいほうだ。これら二つの現象(周辺光量落ちと歪曲収差)はポストプロダクションで補正することができるが、シャープネスと色収差は補正できない。従って、私の場合は、これらはレンズの特性で最も重要なファクターなのだ。
上の写真はテストチャートの左上の部分を切り出したものである。Sigma 20mm F/1.4 Art LensでF1.4で撮影している。左の写真の方がソフトな感じだ。しかし同時に、他のレンズではあまり見られない感じでもある。この程度のシャープネスの方が4K映像には向いていると思う。もし、すごくシャープな映像を望むなら、F5.6 くらいが良いだろう。
色収差についてはほとんど認められない。私が今まで使ってきた他のレンズと比較しても、かなり優れていると言える。冒頭のビデオでも、色収差はどのショットにも表れていないことが分かるだろう。
製造品質
もっとも、ひとつ知っておかなければならないことがある。このレンズは軽くないことだ。960グラムという質量は、シネマレンズに比べれば軽いが、ミラーレスカメラで、良くビデオ撮影に使われる他のレンズと比べると、2~3倍の重さだ。それでも製造品質は大変良い。頑丈でパーツもしっかりしたものが使われている。
フォーカスはマニュアルで、(ソニーの多くのフォトレンズと違い)アナログのフォーカスリングで合わせる。残念ながら絞りの数値が刻印してないので、フォーカスアシストツールなどと使う場合は面倒だ。更にフォーカスリングの可動範囲が狭いので、このような浅い被写界深度のレンズでは、素早くマニュアルでフォーカスを合わせるのが結構大変だ。やはり、明らかに写真撮影用に作られたレンズなのだ。これはミラーレスやDSLRでビデオ撮影するカメラマンには慣れている欠点だが、撮影環境によってはやはり好ましくない点である。
まとめ
このレンズは写真撮影用に設計されており、操作性においては必ずしも動画撮影に向いているとは言えないが、やはり私にとってはお気に入りのレンズのひとつだ。今回テストしてみて、その高画質が実証されたが、低照度下での撮影が多いユーザーには、新たな可能性が広がるだろう。更に、プロのハイエンドプロダクションではあまり見られないシーンだが、広角で、かつ浅い被写界深度のシーンの撮影にも道を開けることになるだろう。
もっとも、このレンズのハイライトはその価格かもしれない。$899のコストパフォーマンスは計り知れないものだし、α7SⅡのユーザーにとっては、実においしいレンズだと言える。
このレビューがお役に立てれば幸いである。素材のダウンロードはVimeoからできるので、ご自分の環境でも試してほしい。皆さんのご意見、ご感想をお待ちしています。