シグマfpレビュー
シグマ fpフルフレームカメラの稼働モデルを手に入れることができたので、テスト撮影でショートドキュメンタリーを作成した。出荷は10月25日を予定しており、現在はファームウェア最終調整に入っている。従ってファームウエアはまだ最終のものではない。
約3か月前に発表されて以来、数回にわたりシグマの最初のミラーレスカメラfpをレポートしてきた。そもそも、高品質のレンズを作ることで有名なシグマのカメラということで、QuattroやFoveonセンサーを知るマニアには見過ごせないことだろう。多くのメーカーが参入し競合している中で、シグマがどのように個性を出せるのか、興味深いものがある。その魅力を探るため、数日間fpを使ってショートドキュメンタリーを作ってみた。そこで見えてきたものを報告したい。
fpの哲学とは?
シグマのCEOである山木氏がカメラを初めて発表したとき、彼は「携帯性」、「スケーラビリティ」、「シームレス」(動画と静止画の間で撮影モードを簡単に変更できること)に言及していた。今回使ってみて、これらすべてのポイントが完全に実現されていることが分かった。小さなカメラでありながら、選択した記録モードに応じて最適な動画を撮影できる。幅広いオリジナルアクセサリーを自前で提供しているのも新鮮だ。fpにはコールドシューアタッチメントとHDMIプロテクターが付属している。カメラ本体はもちろん、これらのアクセサリーの品質も非常に高いものだ。カメラとビューファインダーはシームレスに接続されており、非常に堅牢にできている。VFでカメラを支えることもできる。さらに、外部SSDも適切に固定できる。
メニュー構成
一般的に、ミラーレスカメラのメニュー構成は、動画ユーザーには使いにくいものが多い。この点で、fpのメニュー構造はQuattroに倣っており、初めてのユーザーの場合苦労すると言わざるを得ない。メニュー構造自体は単純にする努力が払われているが、実際には多くの機能がサブメニューに深く埋め込まれている。慣れるまで多少時間がかかるだろう。例えばゼブラをオン/オフする場合が良い例だ。「QS」ボタンでショートカットをアサインすることができ必要に応じてカスタマイズできるが、それほど多くのボタンがあるわけではないので、ショートカットを割り当てるのも限りがある。 後部のホイールには4つのボタンがあるが、うち2つしか割り当てることができない。これは少し残念だ。ホイールはあまりにも敏感すぎて、今回はシャッタースピードを制御するために割り当てたが、間違ったシャッタースピード値になってしまった。
画質
fpは、記録するビット深度に関係なく、CinemaDNG RAW形式で撮影すると良好な画質で撮影できる。現在、MOV ALL-I(4:2:0、8ビット、最大420 Mbps)、MOV GOP(4:2:0、8ビット、最大120 Mbps)、CinemaDNG(RAW最大2500 Mbps)の3つの異なる形式で撮影できる。各記録形式では、異なる解像度とフレームレートを選択できる。 CinemaDNGを選択すると、内部SDカードに8ビットで記録でき、外部記録では8、10、12ビットで記録できる。近い将来、より効率的なRAW記録形式がサポートされ、外部レコーダーなしに高ビットで記録できることを期待したい。今回は外部SSDのサムスンT5 1TB SSDを使用して、ほぼ問題なく記録できた。画質は非常に良好だ。「ほぼ」と書いたのは、モワレがたまに見えたことによる。これは、カメラがセンサーの前にOLPF(光学ローパスフィルター)を持っていないためと思われる。さらに、コントラストの不足も時々気になった。このため、コントラストの低い画像で暗部のディテールを、ノイズを乗せないようにしながら得るため、RAW画像を「現像」する時に、Resolve 16のガンマ設定を2.6に変更した。 MOV形式で撮影する場合は ALL-Iでの撮影も可能で、420 Mbpsでは良いベンチマーク(Albite 4:2:0、8ビット)を得られたが、カメラから出てくる画像は著しく劣っている。カメラを動かしたとき、モアレが顕著に現れる。8ビットのCinemaDNG RAW記録の是非についてネット上で議論があるが、その理由の1つは、データ消費を抑えてより高いビデオ記録レートを可能にすることだ。MOV形式の画質に不満がある場合、CinemaDNG 8bitでの撮影が適切なソリューションになるかもしれない。もちろんこれは本来の解決策ではないが、とりあえずの方法として可能性があるだろう
優位点と弱点
優位点(順不同)
- RAWビデオ記録機能を備えたフルフレームセンサーカメラの価格が実に税込198,000 円ということ。非常にアグレッシブな価格付けだ。
- RAWビデオ記録機能を備えたフルフレームセンサーカメラなのに小型軽量。
- 高い堅牢性と優れたデザイン。突然の土砂降りでカメラが完全に濡れたが、全く問題なかった。
- CinemaDNG RAW記録を、内部(SDカード)および外部SSDで記録可能。
- 優れた低照度特性。ベースISOは100だが、高いISO値での映像も十分使用できる。 (上ビデオの4:38分に、ISO 25,600で撮影した映像がある。多少ザラザラしているが使用可能だ)。
- バッテリーの持続時間は測定していないが、特に短いと感じたことはない。
- カメラが熱くなることもなかった。屋内、屋外、インタビュー、および一般的な撮影条件では、まったく問題なかった。
- 必要に応じて異なるレベルでオーディオを録音する機能が追加されていた。
弱点(順不同)
欠落している機能と、搭載されてはいるが改善を要する機能がある。不足している機能は、フリップスクリーン、ボディ内手振れ補正、オーディオ出力ジャックが挙げられる。これらはハードウエアのため、既に変更することはできない。以下は、搭載されているが、改善が求められるもの。
- 画像のちらつきは、すべての記録形式とフレームレートで顕著に見える。現在、この現象に対処する唯一の方法は、de-Flickerフィルターを適用することだ。 (上のビデオではDe-Flickerしている箇所が多くある)。
- コントラストベースのフォーカシングシステムを使用しており、残念ながら動いているオブジェクトを追跡するのに苦労する。
- 電子手振れ補正があり、何も無いよりは良いが、MOV形式で撮影している場合にのみ有効。CinemaDNGでの撮影時に関する技術的課題があるようだ。
- MOVの画質に関する問題は前述の通り。ファームウェアの更新で改善されることを期待したい。
- いくつかのピクチャープロファイルが用意されているが、フラットなLOGは用意されていない。
- メニュー構造の改善も期待したい。また、カメラボタンに機能を割り当てる柔軟性も必要。
- オートフォーカスモードでシャッターボタンを半押しすると、LCD画面が一瞬暗くなる現象がある。これは細かいことだが報告しておきたい。
- アナモフィックで撮影では、現在、デスクイーズ再生はできない。
- 4K / 60pは放送規格になりつつあり、少なくともMOVモードでは欲しいところだ。
- CinemaDNG 12ビットでは、単一のフレームレート(23.97 fps)のみサポートされている。欧州では25fpsを使う場合もあるので、この設定は欲しい。
- CinemaDNGでの撮影では、カメラでのプレビュー(または不要なファイルの削除)は現在できない。 同社によると、ビデオのプレビューの可能性は、ファームウエアの更新で追加される予定。
- CinemaDNG RAWで撮影する場合、メタデータがあると、Davinci Resolveにインポートすると、記録された色をミュートして、フラットな画像プロファイルで直接作業を開始できるのだが。
- 外部バッテリーからの充電は、カメラの電源がオフの場合にのみ可能。
- 充電器がパッケージに含まれていない。カメラが充電器になるが、充電中はカメラが使用できない。
- LCDタッチスクリーンでのオートフォーカスは可能だが、ビューファインダーをLCDスクリーンに付けてしまうと、この機能はもちろん使用できない。背面のホイールキーでフォーカスポイントを指定できるようにすべき。
- 記録中にフォーカシングのため映像を拡大できない。スタンバイモードでのみ可能。
- オリジナルのVFは優れた作り付けの製品だが、視度の調整が少し制限されている(+1から-2)。メガネやコンタクトレンズを着用している場合に不便だ。
- オーディオ出力が無い。音をモニターすることができない。
- MOV形式のダイナミックレンジは8stopしかない。
- 現在の最大記録時間は最大2時間
ラボテスト - ローリングシャッターとダイナミックレンジ
Fpのラボテストも行った。ダイナミックレンジのテスト方法についてはこちらを参照いただきたい。fpには、フルサイズセンサーやRAW記録など、その多くの注目すべき仕様からテスト結果を期待したが、cinema5Dのラボでfpのダイナミックレンジをテストすると、答えよりも多くの疑問が残る結果となった。
ラボの結果を見ると、不可解なところが散見されるが、その理由は次のことが考えられる。
- cinemaDNGシーケンスの色とガンマの設定に関するシグマ側の公式ドキュメントが無い。そして最も重要なことは、フラットまたはログピクチャープロファイルが搭載されていないことだ。
- 不思議なことに、ノイズフロアは、コード値の分布方法によって部分的にカットされている。 MOV ALL-I H264 4:2:0 8ビットファイルの場合、IMATESTは信号対雑音比2のしきい値基準のノイズ値を計算できなかった。
- CinemaDNGの映像が大幅にちらついていたため、個々のフレーム間で結果が完全に一致しなかった。
ローリングシャッター特性
ローリングシャッター特性の測定には、300Hzのストロボを使用し黒とグレーのバーを撮影する。バーの各ペアは3.3 msのローリングシャッターに相当する。
Fpのローリングシャッター特性は非常に良好だ。フルフレーム3840×2160 23.98、25、および29.98 fps設定で、20.8 msのローリングシャッター値となった。ちなみにソニーのα7シリーズは約25 ms、パナソニックのS1は22 msだ。
フルフレーム1920×1080、23.98、25、および59.94 fpsの設定でローリングシャッターは半分の10.4 msになる。これは非常に良い値だが、残念ながらセンサーの読み出し中に行をスキップする。
cinemaDNG 3840×2160 12ビット ISO 100(ネイティブISO)でのダイナミックレンジ
このモードは、外部記録でのみ可能だ。 PremierePro(最新バージョン)はCinemaDNGファイルを認識しないため、DaVinci Resolveで行った。Camera Rawタブで色空間とガンマ設定を行う。
fpで使用したピクチャープロファイルはNTR(ニュートラル)。 「フラット」や「ログ」といったプロファイルは用意されていない。これは明らかにこのカメラの可能性を制限するもので、将来のファームウエアアップデートを期待したい。
「sRGB」および「2.6」ガンマカーブ設定でのXyla 21ステップチャートの波形については、Fig.1およびFig.2を参照いただきたい。
「sRGB」の場合、ノイズフロアはほとんど存在しない。下側のstopはすべて埋もれている。 「2.6」ガンマカーブ設定では、ノイズフロアのようなものが表示されているが、下のstopはほとんど存在しない。
ガンマ2.6設定の場合、IMATESTのダイナミックレンジの読み取り値は、信号対雑音比2で約11.3stopとなる。(Fig.3)これはFig.2の波形からも明らかだ。画像がちらつくのはネオンの光を撮影したときのようなものだが、このちらつきの原因は不明だ。
ノイズフロアをカットオフしてしまうと、ハイライトを保つのを難しくすると同時に、暗部の情報も失われてしまう。
cinemaDNG 3840×2160、12ビットISO 4000のダイナミックレンジ
下のガンマ2.6設定の波形プロットを見ると(Fig.4)、かなりのノイズフロアがある。また、ダイナミックレンジは約9stopまで低下する。 IMATESTは、SNR = 2で9.25stopとなった。
H264 8ビット4:2:0 MOV All-I 3840×2160 ISO 100のダイナミックレンジ
MOV H264では驚くことに、約28 Mbit / sと非常に低いビットレートでエンコードされる。
このモードではノイズフロアが完全にカットオフされている。(Fig.5) ゼロ値ラインの前に8つのstopしか表示されない。そのため、IMATESTは下位stopのノイズを計測できなかった。
ラボテストのまとめ
ラボテストの結果は、良いところと悪いところが混在している。 3840×2160の読み出しのローリングシャッター結果は20.8 msと良好だが、ダイナミックレンジの結果は、CinemaDNG形式のRAW記録機能を備えているにもかかわらず、改善の余地がある。このカメラはまだ本来持てる可能性に達していないと思われる。例えば将来のファームウエアの更新でLOGピクチャプロファイルが実装されれば、改善が期待される。
まとめ
fpは、競合がひしめくミラーレスカメラの市場にシグマが参入する最初のカメラだ。その独自性は、そのコンパクトさ、機動性、センサーのサイズ、およびRAWファイル形式で映像を記録できる機能にある。特にフルサイズながらこのコンパクトさは大いにアピールするだろう。 またレンズメーカーである同社が、コンパクトな手振れ補正機能を持つLマウントレンズをfpに合わせて開発することを期待したい。
このカメラのユーザーを特定するのは難しい。非圧縮RAWは、時間をかけた制作には適しているが、日常の撮影には適していない。そのためにはMOV形式での記録の改善が望まれる。
ダイナミックレンジの測定結果は一つの参考ではあるが、重要なのはカメラから出てくる実際の映像だ。これについては各自で判断するしかない。なお、同社とのミーティングで、将来のファームウエアアップデートについても強化していくと聞いている。
最後に、半日撮影に付き合っていただき、貴重な時間を提供してくださった渡辺麻衣さんに感謝したい。
上記のビデオは、全てfpカメラで撮影している。 (fpのファームウエアは最終版ではない)。画像モード:NTR、23.97 fps。記録形式:ほとんどがCinemaDNG 12ビット。 (踊りの部分はCinemaDNG 8bitで記録) Davinci Resolve 16の最新ベータ版で編集。(残念ながら、Adobe PremiereはRAW形式ファイルを完全にサポートしていない。)使用レンズ:シグマ24mmおよび45mm Lマウントとシグマ24-70 EFマウント。 Lutify.meでカラーリング。 95%のショットに三脚を使用。残りは手持ちで撮影し、一部はポストプロで手振れ補正している。
Cinema5D読者はMusicVine.com提供の音楽–コードC5D25で従量課金ライセンスを25%割引(一人1回のみ)。
関連商品
フジヤエービックのショップサイト
SIGMA fp ※2019年10月25日発売予定
SIGMA fp&45mm F2.8 DG DN kit ※2019年10月25日発売予定