SLR MagicマイクロプライムXマウントシネレンズレビュー
SLR Magic マイクロプライム Xマウントレンズについては以前記事をリリースしたが、現在既に発売されている。SLRマジックのマイクロプライムシネレンズのXマウントバージョンについては読者の皆さんから非常に多くのレビュー記事のリクエストをいただいているので、今回レビューをすることにした。なお、Eマウントとマイクロフォーサーズ(MFT)マウントも発売済みだ。詳しくは、以下の表をご覧いただきたい。
3月中旬、我々はニューヨークにいた。この滞在中にSLRマジックのマイクロプライムシネレンズのXマウントバージョンのレビューを行うことにした。当初の計画は富士フイルムX-T30のみでレビューを行うつもりだったのだが、空港で4時間もの待ち時間があったので、急遽持ってきたX-T3にもマウントしてレビューすることにした。オフィスには、SLR Magic マイクロプライムの全セット(12mm、15mm、18mm、25mm、35mm、50mm、75mm)があるが、今回は12mm T2.8、35mm T1.3、75mm T1.5 の3本のレンズだけ持ってきた。
レビューの前にX-T30について簡単に触れておこう。
X-T30の概要
X-T30はX-T3の下位機種にあたるが、小型ながら多機能なカメラで、ユーザーの期待に応えてくれる。価格もこのカメラの魅力の一つだ。以下はX-T30の主な機能。
- APS-Cセンサーサイズ
- 4K/29.97Pまで記録可能
- DCI記録(4096×2160)
- F-log
- エテルナフィルムシミュレーション
- 最大200 Mbps
- 改善されたフォーカシング機能(使ったレンズはすべてマニュアルレンズ)
- タッチパネル
- フルHDで120fps記録
- HDMI経由で4:2:2/ 10-bitを出力
- ジョイスティックでの操作性
- 魅力的な価格
弱点
- 4Kで最大10分の録画時間
- H.265記録は不可
- カメラ本体はとても小さいので、IBIS(ボディ内手振れ補正)は非搭載
- オーディオモニター用にUSB C – 3.5ヘッドホンジャックアダプターが必要。また、3.5 mmマイクを接続するには2.5 – 3.5ジャックアダプターが必要。
X-T20がミニX-T2だったように、X-T30はミニX-T3のポジションにいるカメラだが、前者よりはるかに上位機種に近いものだ。
X-T3に関して
このカメラは、我々が2018年のベストカメラに選んだカメラだ。
LR MagicマイクロプライムXマウントシネマレンズの概要
SLR Magicは完成度が高いわりに、手頃な値段のレンズのメーカーとして高評価を得ている。今回テストしたマイクロプライムXマウントレンズもその一つと言える。
我々がテストした3本のレンズはどれも堅牢で扱いやすいものだ。フォーカスリングと絞りリングはどちらも滑らかに回転する。すべてのレンズのマーキング(口径と焦点距離)ははっきり刻印されていて読みやすい(ただしイルミネートされているわけではない)。レンズ上のマーキングははっきりしているため、レンズセットから任意のレンズを識別するのは難しいことではない。
上の表からわかるように、焦点距離が違ってもできるだけ重さを同じにしているが、すべてのレンズが同じ重さではない。また長さも12、15、18mmレンズは少し短い。使用方法によっては、かなり使いやすいといえる。例えばジンバルで撮影する場合、レンズを交換してもバランスを再調整する頻度が少なくなる。レンズの重量に関しては、X-H1、X-T3、X-T30のどれと組み合わせてもバランスが良く、扱いやすいと感じた。レンズは全て同じ82mmのフィルター径なので、NDフィルターなどを使用する場合は、ひとつのサイズのみ用意すればよい。アナモフィック撮影の場合は、SLR MagicのAnamorphot 65(アナモフィックレンズアダプター、記事はこちら)と完全に互換性がある。
光学特性
チャート画像は、絞り開放時と段階的読み取りの画質の違いを示している。結果がそれほど明確でない場合は、左側の数字を見ていただきたい。
これらのレンズはEマウントバージョンの同レンズの特性に似ている。即ち、これらのレンズは実際にはフルフレームセンサーカメラ用に作られているからだ。XマウントバージョンはAPS-Cセンサーカメラでうまく機能していることが今回のレビューで確認できた。ガラスの中心部のみが使用されるため、レンズ端の歪の影響が少なく、画像の縁が甘くならないためだ。一般に、これらマイクロプライムレンズの光学的性能を高めるには、開放状態で使用しないほうがよい。 T / 4.0は一種のスイートスポットで、画像全体の画質が向上する。このことは、今回テストした35mmと75mmに当てはまる。残念ながら、12mm T2.8については同じではない。広角撮影での画質を期待したが、それは非常に甘い映像になってしまっていた。f / 5.6、あるいはそれ以上絞る必要がある。またレンズの樽状歪みがかなり目立つことにも注意していただきたい。このレンズの最短合焦距離は12.5 cmなので、撮影する対象によっては使いやすいだろう。ちなみに75mmレンズの最短合焦距離は79cm、35mmは37cmだ。
要約すると、レンズの限界や、シャープなセンターと周辺の甘さのバランスが問題にならないのであれば、お勧めできるレンズだ。なお12mmは非常に広角なので、82mm Variable NDフィルターをレンズに取り付けるとケラレが発生した。STC In Body Clip Filterはこのような場合に有用だ。
SLR Magicもそのことには気付いているようで、12mmと15mmの2本は100ドル安価だ。
ブリージング、色収差、フォーカスリング回転角度について
すべてのSLR MagicマイクロプライムXマウントシネレンズは150度のフォーカスリング回転角度を持っている。これにより、片手で簡単に操作できる。色収差に関しては、75 mm T1.5が3本のレンズでは最も顕著に現れた。
フォーカシングに関しては、すべてのレンズは内部焦点機構を採用しているが、下の画像からわかるように、テストした12、35、75 mmはすべて、ブリージングが発生した。
レンズフレア、ボケ、画質について
テストしたレンズは、T4 / T5.6の時と比べ、開放時は異なる表情を見せる。比較的柔らかい映像で、強いレンズフレア、さらには色収差が組み合わさり、独特の(ヴィンテージ的な?)ルックになる。前出のように、絞りを絞ることで、よりバランスの取れたきれいでクリアな画像(モダンなルック?)が得られる。色収差に関しては、筆者が見たところ、テストされた3本のレンズすべてにその現象がみられるが、75mmが最も顕著だった。ボケに関しては、エッジに沿ってかなりシャープで、中央ではなめらかだ。背景に多くの光源がある場合は、滑らかに溶け込むが、これは好みによるところが大きいだろう。
まとめ
SLR MagicのマイクロプライムXマウントシネレンズは、取り扱いが非常に容易で、製造品質も良い。画質の点では、光学的な完成度や絶対的なシャープネスが必要なら、このレンズは適していない。しかしユニークなルックと強いレンズの個性を求めるなら、このレンズは使ってみる価値があるだろう。価格の面では、手頃感が大きいが、開放で撮ると、画質の悪化をもたらすことを覚えておく必要がある。 T4.0で撮影することが多いなら、このレンズはお勧めだ。個人的に残念に思ったのは12mm T2.8だ。広角撮影の場合、このレンズは面白い結果をもたらすが、筆者はもう少し実戦で使ってみたい。富士フイルムのカメラは人気があるが、Xマウントレンズはまだ限られており、手頃な値段の別のブランドのシネレンズに逃げることができない。マイクロプライムXマウントシネレンズは価格対製造品質、そして光学性能のバランスのとれたレンズではある。
冒頭のビデオに関して
X-T30とX-T3(H264、200 Mbps、F-Log)で撮影。使用レンズ:SLR Magicマイクロプライム(12mmT2.8、35mmT1.3、75mmT1.5)。 Adobe Premiere最新版で編集、FilmConvertで色補正。
上のビデオで使用されている音楽はMusic Vineのものを使用。コードC5D25を使用するとライセンス料が25%割引される(1回のみ)。