ソニーα6300は価格の割には見るべきビデオ画質を持った、新しいミラーレスコンパクトカメラだ。Johnnieは以前にもレビューしており、Ninoは低照度テストのビデオをアップしたのでこちらも参照していただきたい。今までにもテストラボでこのカメラの強みと弱みを見てきたが、ここではソニーα7SⅡとの比較を行ってみよう。
正直なところ、$1,000未満のこのカメラに関しては、あまり期待していなかったが、この価格で4K内部記録ができ、低照度撮影の実力があるのはたいしたものだ。我々も含めて評価したものは皆、ソニーα6300は素晴らしく、α7SⅡにも迫ることを実感するだろう。
ソニーα6300 vs α7SⅡ
もちろん、どのカメラにも欠点はある。それゆえα6300を選択するなら、どのようなトレードオフがあるのかをじっくり見てみることにしよう。ここでは、α6300とα7SⅡを項目ごとに比較してみる。
ダイナミックレンジ
評価するときによく見過ごされ、かつ計量化するのが難しいのがダイナミックレンジだ。ここではα6300とα7SⅡのダイナミックレンジの比較から始めて見よう。ダイナミックレンジが広ければ より低照度から高輝度なシーンを撮影できる。なお、テストにはDSC labs XYLA-21テストチャートを使用した。(計測に関してはこちらも参照)
計測の結果、上の写真の通り、α7SⅡの約12Stopに対し、α6300は約11Stopだった。11Stopというのは、なかなか良い成績である。我々の計測結果では、最近の多くのシネマカメラでは10~13Stopと言うのが一般的だ。
また、これら2つのカメラでは、ノイズ特性が著しく異なることも分かった。
α6300はISO800で撮影したが、α7SⅡが大変クリーンだったのに対し、多少ベースノイズが認められた。逆に言えば、α7SⅡが極めて低ノイズであるということだ。ただ、α6300のベースISOでのノイズは、グレーディング時、暗部に多少余裕がないということだけで、それほど大きな問題ではないだろう。
もう一点、α7SⅡと異なり、α6300ではS-log2とS-log3でダイナミックレンジは変わらない。しかし、α6300は8ビットのコーデックを使用しているので、S-log3は避けて、S-log2を使用することをお勧めする。
低照度部のノイズ
それにしても驚くのは、α7SⅡは我々がテストしたカメラの中で最も優れた低照度特性を持っているが、α6300はこれに極めて近い性能を持っていたことだ。下の画はテストチャートから暗部を等倍で切り出したものである。どちらのカメラも高ISOでもディテールが損なわれていないことが分かる。α6300は多少ざらつきがあり、少しノイズリダクションの影響が出ているが、従来のレベルから言うと極めて小さいものである。価格を考えると、ほとんど取るに足りないものと言えるだろう。
α6300はかなり強力なノイズリダクションを持っているようだ。α7SⅡがフルサイズセンサーを持つのに対し、α6300はSuper35mmセンサーでサイズはずっと小さく、従って、ノイズはもっと出ても良さそうなものだが、低照度特性がこれほど良いのは、恐らくこのノイズリダクションが相当優秀なのだろう。
動画で見てみると、その残留ノイズはDaVinci Resolveのようなソフトウエアで見られるものに似ている。このアルゴリズムは隣り合うフレームのノイズの差異を検出しているのだが、α6300でそれが行われているのかは分からない。ただ、暗部での不自然にゆっくり動くノイズは少し気になる。全体としては、低照度下の性能は実に優秀だ。それはα7SⅡに肉薄している。ただ、ISO25600になると、明らかにα7SⅡのほうがディテールが出ている。
なお、α6300にMetabones Speed Boosterを装着するとフルサイズセンサー用のレンズが使えるので、この場合、低照度特性が更に改善される。これについてはSony a6300 lowlight test.を参照されたい。
画質
チャートで見てみよう。複数のラインが上に行くほど間隔が狭くなっている。これにより、エリアシング特性が分かる。別の言い方をすれば、縦の目盛りでディテールが失われるポイントが分かる。注目すべきは、α6300はα7SⅡと極めて近い数値を示していることだ。ソニーのFS7は予想通り、エリアシングに対しても飛び抜けて優秀な数値を示している。
もう一つ言えることは、α6300のコーデックはα7SⅡのそれより優れているということ。(上の写真の25のあたりを参照)
α7SⅡでは、この近辺では解像度が落ちている。実際の映像でも、圧縮過程で多少解像感が落ちる。しかしα6300ではこの問題が見られないのだ。この点に関してはα6300が優っていると言える。
ただ、α6300では “ディテール”設定を最小値にしても、カメラで多少イメージエンハンスしており、全てのショットでわずかにエッジにマゼンタが乗る。
ローリングシャッター現象
前にレビューしたが、残念ながらα6300のローリングシャッター効果(ジェロ―エフェクト)はかなり出る。実際、画面上から下までの読み出し時間は約34msecで、今まで計測したカメラの中では最も遅い数値だ。サムソンの30msのNX1よりも悪い結果となってしまっている。ちなみにα7SⅡは約25msec、FS7は14msecだ。
HD映像とスローモーション
これがα6300のもう一つの泣き所だ。フルHDでの撮影ができるが、エリアシングが酷く、眠い映像になってしまう。α7SⅡは、α7Sからあまり変わっていない。
なお、α6300はフルHDで120fpsまでの高速撮影が可能。このモードではイメージセンサーの80%が使用される。残念ながら画質は通常モードと変わらない。どちらのモードでも低照度性能はあまり良くない。
まとめ
総じて言えば、α6300はやはり驚くべきカメラだ。これほど低価格なカメラがα7SⅡに肉薄するとは想像できなかった。
α6300とα7SⅡを比べると、α7SⅡのほうがダイナミックレンジと低照度でわずかに優っている。しかし、ディテールの明瞭さやシャープさではα6300が僅かだが優っている。
ただ、ローリングシャッター効果とHD画質だけはどのような用途にせよ、放送レベルの使用には適さない。
結局のところ、もしHDモードで撮ったり、動きのある映像を撮るなら、このカメラは選択しない方が良いだろう。
一方、小型、低価格のカメラで、しかもα7SⅡと近いレベルの4K映像を撮ろうと思うなら、α6300は良い買い物だろう。Metabones Speed Boosterと組み合わせれば、イチオシの最強低価格4Kカメラだ。
【追記】今回はNTSC30pモードではテストしていないが、他のテスト結果では30pモードではイメージがクロップされ、更にノイズが増え、低照度パフォーマンスは悪化するとしている。ローリングシャッターに関しては多少良いようだ。もし30pで使用するなら、購入前にテストすることをお勧めする